19 洞窟
ジークと再会を果たし、喜びに包まれるレシルであったがジークから伝えられたのはリアの死だった。村で別れたきりになっていた友人の死に、悲しみを感じつつも冷ややかさを持つレシル。
レシルとジークは、どのように成長していくのだろうか?
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レシルとジークは、朝から顔を合わせていた。
レシルは朝の修行に行こうと、ジークは依頼を探しにホールに来ていた。
「おはよう、ジーク朝から早いんだな。」
「おう、おはよう。バリバリ稼がなきゃだからな。それより、これからどこい行くんだ?」
「俺は、これから朝の修行と素材集めだよ。ギルドの給金だけだと厳しいものがあるからな。」
ギルドの職員たちは苦笑いを浮かべ、二人はそれぞれのことをやりだす。
レシルの足取りは、いつも以上に軽い。友人のジークが街に来たからだ。
「あら、シル坊じゃないか。なんだかうれしそうだね。なんかいいことでもあったのかい?そんな嬉しそうな姿を見てると私まで気分がいいよ。気を付けて行くんだよ。」
露店のおばさんが声をかけ、笑いながら送り出す。
そんな嬉しさに溢れていたレシル故だったのなのかもしれない。レシルにとって今日は、不運の日となりその幕開けであった。
今日レシルが向かったのは、今まで行っていたところよりも強い魔物が出るところであった。過酷な環境に住まう生き物はより強くなる。世の常であるこの理に、レシルは冷静さと知恵をもって対処してきた。逃げることもいとわず、安全と確実性をもって狩りをしてきた。しかし今日は、わずかに隙が生まれていた。
レシルが今いるところは、そんな土地の岩山の洞窟。松明を持ち中を突き進む。ここには、鉱石をはじめ甲虫が多く生息しておりその素材はそこそこに高く売れ数が取れる物であった。しかし、いくら集めようとも、それらを運ぶ運搬費の方が加算でしまうためこの洞窟は訪れる者が少なかった。
レシルの場合、いくらでも入る収納があるが故大量の稼ぎを手にできるとここを訪れたのだ。
「かなり暗いな、それに先が長そうだ。道に迷わないようにしないと。タヒコも、離れないように気をつけるんだぞ。」
洞窟は、三メートルほどの穴が続いており入口から五メートルも進めば大小無数の横穴が広がってた。
無数の横穴には近づかないように進み、奥を覗けば無数のアリのような魔物がいた。
右に左に足元に天昇に・・・。大きさは、三十センチと言ったところか。しかし、これだけの数がいるとに気持ちが悪い。しかし、逆に言えばこれだけの素材がいると言うことだ。レシルは、足元にいたアリに剣を突き立て体を割いた。アリは、体液を流しながら関節に沿って割かれ二つの死体となった。
それを皮切りにアリたちは、一斉にレシルに襲い掛かる。剣を一心不乱に振り回し、前からくるアリたちを切っていくが背中に突如痛みが走る。アリが一匹噛みついたのだ。すかさず、タヒコが剥がしとり倒す。
前の敵をレシルが、後ろをタヒコが相手をする形で敵を対していく。
レシルの足元に次々と死体が溜まっていき、辺りに体液と虫のニオイが充満する。ここまで倒しても数は一向に減らず、少しずつ入口に向かって下がっていくことにする。タヒコの魔力も無限ではない。ましてや、一度に倒せる敵などそう多くない、レシル自身魔法を使う余裕はなく徐々に下がり横穴が無くなる所まで戻ってきた。
「よし、ここまでくれば。タヒコ、俺がここで敵を倒すからタヒコは収納に死体のままでいいからドンドン入れて行ってくれ。」
後ろの安全が確保されたと判断し、タヒコに素材回収もとい死体回収を命じる。
タヒコは言われた通り、自分とレシルの収納に次々に死体をしまっていく。レシル自身、今だ飛び掛かってくる虫たちを蹴散らしている。
収納の中に百以上しまっても虫たちの数は一向に減っていないむしろ増えているくらいに感じる。
レシルがそろそろいいかと、タヒコに声をかけ撤退しようと虫たちを一気に吹き飛ばしタヒコと共に洞窟を出る。その時洞窟の中から虫のものと思われるもとても大きな威嚇音が聞こえてきた。
「ギャシャー!!!!!!!!」
レシルは、洞窟の奥からやばいものが来ることを感覚的に感じ取り、洞窟を出た後すぐ体をわきへ投げ出す。すると、洞窟の迎えにあった気が煙を立てて、根本が溶け出しそのまま倒れてしまった。
そんな状況を目の当たりにし、驚愕していると洞窟の中からムカデのような魔物が出てきた。ただのムカデではない、幅は二メートルを超え長さは未知数だ。頭だけを洞窟から出し、溶解液を放つムカデは標的を探している。
レシルはすぐ、姿を隠そうと音を立てないように茂みに向かう。バレないように姿を隠せたと思い一息
つけば、木を溶かしたのと同じものが茂みに向かって飛んできた。
とっさに飛びのきかわすも、飛散した溶解液によって顔がわずかに焼ける。痛みに耐え、さらに距離を取るもアリとの戦闘で遠くに逃げる体力は残っていない。
「なんだ、あのムカデ。アリたちの親玉?それにしても、何だあいつ。アリの親玉なら女王アリが出て来いよ。」
そう文句を言いつつ、レシルは先ほどよりも距離を取った木の陰で様子をうかがっていたがムカデもまた、レシルの隠れている木の方を睨んでいた。
お互いに動かず膠着状態が続くが、その状況は長くは続かなかった。ムカデに向かって、狼の群れが現れたのだ。ムカデも、そちらに注意を向け様子をうかがう。狼たちは、全部で五頭。それぞれ、囲う形で広がっていく。そして、一匹の狼が飛び掛かると次々にムカデに飛び掛かり乱戦となった。
しかし、ムカデは狼など何とも思っていないように対処していった。
初めの一匹は溶解液で骨まで溶かされ、他の狼は洞窟から出ている体を大きく振り回し払いのけると叩きつけたり、噛みついたりして一匹ずつ倒していった。狼たちがいなくなれば、ムカデは洞窟の中に戻っていった。
レシルはただ、その様子を息を殺し隠れ見つめていた。日が傾きだし、光に赤色が混じり始める。ムカデと狼との戦いからそれなりに時間が経っており、レシルは街に向かい休憩を多くはさみながら帰っていた。
背中にあった傷は、薬と回復魔法を使って少しずつ直していった。回復魔法と言っても、レシルの使うのは初期のもので多くの回復は見込めない物であった。だからこそ、多く回復魔法をかけ治していく。
「やっとここまで治った。案外深く噛まれたな。幸い、血が止まっててよかった。」
そんなことを言いながら、もう何度目の休憩か分からなくなりながらも治していく。
やっとの思いで街近くの草原に戻ってくれば、辺りは夕方で、街近くと言えど街はこの草原の反対側だ。まだそれなりに距離がある。
「急いで帰らないと。」
街に向かって最短ルートで歩き出す。幸いここで出てくる魔物は、強い者はいない。レシルにとっては簡単に倒せる相手ばかりだ。だが、今回に限ってはそうではなかった。
出会う魔物は、どれもいつもと変わらぬ弱い魔物ばかり。しかし、遭遇率がおかしかった。魔物を倒し少し進めば次のものが、下手をすれば戦闘中に他の魔物と遭遇するなど次々に魔物と戦闘することになった。時には、逃げてやり過ごそうとしたが逃げた先で別の魔物と遭遇することが続いたため、片っ端から倒していくこととなった。タヒコも、この程度の魔物であれば十分一人で戦えるだけの実力があってので二人で倒していく。
レシルは、今日一日で多くの魔物を倒し多くの死体を手に入れた。しかし、さすがにへとへとだった。
門にたどり着くや、レシルは倒れこみ門番によってギルドに運ばれることとなった。
ギルドでは、いつまでたっても帰ってこないレシルを心配して受付嬢たちが騒いでいた。ジークも、受付嬢たちの話を聞いてギルドでレシルの帰りを待っていると、門番に担がれて入ってきたレシルを見て驚いた。
「レシル!どうしたんだ。なにがあった!?」
レシルを門番から受け取り様子を確認する。受付嬢たちも、レシルの顔を見にカウンターから出てきてジークからレシルを奪い取ろうとする。
ジークは、レシルがもみくちゃにされないようにかばいつつ受付嬢たちを抑える。
「すいませんでした。ギルドの職員をわざわざ、連れてきていただいて。なにがあったのか、詳しく、詳しく教えていただけませんか?」
ルルは、冷静に門番からセシルを助けた話を聞いていた。一通り、話を聞き終わればルルは、どうしてこうなったのか頭の中で想像していた。そして、いつまでたっても状況に変化のないレシルを囲う三人に檄を飛ばした。
「あんたたち、いつまでそうしてるの!!!さっさと、レシル君を医務室まで連れて行きなさい!あと、治療専門の職員に連絡してすぐに来てもらって。わかったら、さっさと行動!!!!!」
ルルの的確な指示に、ジークもラナもルーフェも駆け足で行動していく。
門番を帰し、報告書をルルは書き始める。夕日も沈み、行き交う人が減ったギルドでルルは受付嬢の仕事を一人でこなし報告書を書き、上に報告するのであった。
レシルは次の朝、しっかりと目を覚ました。傍らには、ラナとルーフェが吐息を立てながら寝り、壁際の椅子には、ルルが座っていた。
「おはよう、レシル君。体はもう大丈夫?」
「はい、大丈夫です。すいません、皆さんにとっても迷惑かけちゃったみたいで。」
「それは、大丈夫よ。迷惑なんて思ってないから。でも、お世話になった人にはちゃんとお礼を言ってね。あとで教えるから。それで、何があったか教えてほしいんだけど。」
「ちょっと油断してただけですよ。たくさん素材を集めようと、虫がたくさんいる洞窟を冒険者の方に教えてもらって行ったんです。それで、帰ってくるほど体力が残ってなくて力尽きただけです。」
「そう、何ともないならいいんだけれど。でもその洞窟もう行っちゃだめよ。迷惑はしてなくても、みんな心配してたんだから。」
「はい、すいません。これから気をつけます・・・・。」
「じゃあ、この話は一旦おしまいね。ふふ、しょげたレシル君もかわいいわ。」
そう言って、レシルにルルは抱き着き、めでる。そして、ルルはレシルを堪能した後部屋を出ていった。
会話が終わりレシルは再びベットに身を任せ、もうひと眠りしようと瞼を閉じるのであった。
「集めた素材を解体しないとな。もうひと眠りしたら、がんばろ・・・・。」
朝日が昇り始めた病室で再び、レシルは夢の中に帰っていくのだった・・・。
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