18 再会
レシルが、冒険者ギルドマルス支部へ来てから二年の月日が経った頃。レシルは、一つの再会を体験することになった。
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レシルがギルドに来てから二年の月日が経つ頃には、レシルもギルドの職員もとい準職員として多くの冒険者たちに知られ、友好的な関係を築いていた。
「あら、レシル君、今日も外に出かけるの?」
「はい、冒険者にはまだなれませんができることはいくらでもありますし、お金もたまりますしね。」
「そうね、じゃあ、持って帰ってくる素材を楽しみにしてるわね。」
そう言って、ラナはレシルを送り出した。いつもと変わらぬ光景であり、会話だ。
ギルドを出て街を歩けば、道を歩く冒険者から声をかけられたり顔見知りの商人に挨拶したり、レシルはこの二年で、ギルドの人にも街の人にも十分に知られていた。
二年も暮らし、門を毎日のように出入りしていれば門番とももう顔なじみである。木札を軽く見せれば、素道理できてしまう。
門を抜け、道をひたすら走りだす。草原と林を抜けた山すそを目指して・・・・。
レシルが出掛け、昼時となる頃ギルドではピークを迎えていた。冒険者たちが帰ってくる時が重なれば忙しくなる。ましてや、昼時などは昼食をとるために訪れる冒険者もおりそこそこに混んでいる。
そんな時、冒険者登録を申請する青年が訪れた。
「すません、冒険者登録をお願いしたいんですけど・・・。」
「あー、はい、かしこまりました。では、とりあえずこちらの紙に必要事項を順に書いていってください。」
青年は、スラスラと書き進めていった。名前、歳、出身地など・・・。
書き終えた紙を先ほどの受付嬢に渡すと、その女性は、別のカウンターの受付嬢に紙をお渡し話し込んだあと声がかかる。
「えっと、ジークさん。こちらの窓口にお願いします。」
戻ってきた、受付嬢はここから先は別の者が行いますと説明し、ジークを呼んでいた受付嬢のもとに行くように促した。お礼を言い、呼ばれた窓口にいけばジークの書いた紙のほかにいろいろ用意されていた。
「ジークさんで、よろしいでしょうか?私の名前は、ラナ。冒険者ギルドマルス支部の初心者専門受付嬢です。これからよろしくお願いします。」
「はい、お願いします。」
「では、ざっと冒険者についての説明と登録をやらせていただきますね。」
そう言うと、ラナは紙を広げジークの髪の毛と血をもらい乗せる。そして、鈴を鳴らし人を呼ぶとそれを下げさせた。専門家によってプレートを作るらしくもっていかせた後は、説明の連続だった。
ギルドにある施設について、依頼について、報告書の書き方、パーティーの組み方などを一から十まで話終えたころ、見計らったようにプレートが届けられた。
プレートには下から、黒、青、緑、橙、赤、金と言うようになっている。
もちろん、渡されたのは黒色のプレートであった。
「ありがとうございます。よっしゃ。」
「では、ジークさん。新たな冒険者として頑張ってくださいね。」
この日、ジークは長年の夢を叶え冒険者となった。
そして、そんなジークがレシルと会うのは、その日の夕方のギルドであった。
レシルは、日が沈む前に街へと帰ってきた。
門を素通りして、街に入りギルドに向かって駆け抜けていく。
「おい、あのガキはなんで素通りなんだよ!こっちは、順番を待ってたのによ。」
「あー、あいつはいいんだよ。ギルド職員だからな。ちゃんと、手続きは終わってるし。」
「はあ?あのガキが、ギルド職員なのか?」
「そうですよ。準職員の十歳のガキだがなかなかできる子だぞ。」
門で起きた小さな小競り合いは、門番の説明ですぐに幕を閉じた。
レシルは、ギルドに向かって走っていく。朝と同じ様に挨拶をしながら進み、ギルドの中に入っていく。
「「「おかえりなさい」」」
受付嬢三人の声が重なり響く。
実のところ、レシルのことを溺愛するものが増えているのだ。特に、その日の受付担当のお姉さま方に。
なにせ、ギルドでの仕事を一生懸命頑張る顔の整った小さな子供など、気にかけてあげたいと思ってしまうし、自主性も強く努力家ともなればお姉さま方はかわいくて仕方ないのだ。
「コラ! 二人とも、そのくらいにしてレシル君を離して仕事に戻りなさい。」
「えー、そういうルルさんだって抱き着きたそうにしてるじゃないですか!」
今、言い合っているのは上位冒険者専属受付嬢のルルと中堅冒険者専属受付嬢のルーフェであった。
ルルは、この冒険者ギルドで十年以上務めるベテランでこのギルドの受付嬢の中で最も年長者だ。ルーフェは、六年ほどの務めとなるが効率よく仕事をこなす女性であった。
ラナとルーフェがレシルを抱きしめ、それをルルがいさめようと声をかけ、無理やりレシルをはがしとる。
「まったく、レシル君も疲れたでしょう?」
「「あー!ルルさん独り占めとかずるい!」」
胸元に引き寄せ抱きしめるルルから、レシルを奪おうと取られた二人は取り返しに奮闘。
三人にもみくちゃにされるレシルであった。
「レシル?お、お前レシルじゃないか!」
そう言って現れたのは、村で仲の良かったジークであった。
レシルもその声に気づくと、振り返り三人の手をほどいた後ジークに走り飛ぶ。
「ジークじゃないか!久しぶり。」
レシルが、ジークに飛びつきそれをジークが受け止める。
二人が笑い、話が爆発的に盛り上がる。
「ジークは前よりかなり背が伸びたな。それに、無事に冒険者登録もできたみたいだしよかったな。」
「おう、ありがとな。お前は、昔と全然変わんないな。ちゃんと食ってんのか?背とか全然伸びてねえじゃねえか。元気なのはうれしいがちょっと心配だぞ。」
「こう見えても、毎日修行もしてるししっかり食べてるぞ。」
自身のことを相手に伝えるように、二人は笑いあいながら話し合う。
ホールのど真ん中で、レシルはジークに抱っこされる形で・・・。
周りの冒険者たちは、同年の友達も作らず訪れる冒険者たちとばかり仲良くなり、他の時間を仕事と修行に当て続けてきたレシルにこれほど仲の良い人物がいたことに喜ぶ者が多く涙を流す者までいた。
傍から見れば、兄に再会を果たした弟。はたまた、久しぶりに会えた友人と言ったところだろうか?
感動している冒険者たちとは別の感情を抱いた者たちも中にはいたようであったが・・・・・。
「レシル君のあの喜びよう・・・。かなり信頼している間柄の様ね。どういう御関係かしら?」
「様子から察するに、兄弟もしくは、友人関係でしょうか?」
「たぶん、後者が濃そうね。顔のパーツとか全然違うし。でも、・・・・。」
「「でも?」」
「そういう風に、見ることもできない事はない気がするのだけれど?」
受付嬢たちの二人の考察は、良からぬ方向に舵を向けつつあった。
「ちょっと待ってルルさん。そんなレシル君に限ってそんなことあるわけないじゃないですか。」
「もちろん、本当にあるとは思ってないわよ。でも、もしそうあるとして想像してみて、それはそれでありだと思わない?」
「え、だって、レシル君の中にそんな入るわけ・・・・。あぁん!!!!!」
「ルーフェは、かなり先まで妄想してしまったみたいね。」
「そんな、レシル君に限って、私の可愛いレシル君が・・・。」
ラナだけは、自分にとって純真無垢の美しくひた向きなレシルを崩したくないと想像することを拒もうとする。しかし、人の欲とその探究心はとどまることは知ることはなくそこに、悪魔がささやき促そうものならどんな抵抗も意味をなさず。ラナもよからぬ方向にその思考を働かせることとなった。
「ありね。」
「「うん!」」
彼女たちの、レシルへの愛は変わらない。むしろこじらす形でより強いものになったのであった。
そんなことを受付嬢たちが話しているうちに、レシルとジークの話は一段落付きギルドの食堂を訪れていた。
レシルはともかく、ジークは初めてだったためレシルが色々と教える形で夕食を買いテーブルに着く。
「村の皆は元気だったか?なんか変わったこととか、あ、そうだ。リアやヤナは元気にしてる?」
「ヤナは、元気だぞ。畑の仕事も頑張ってるし、村の仕事も任されたりしてる。他の皆も、変わらず元気だ。」
「へーそうなんだ、良かった。みんな元気で。で、リアは?」
「リアは・・・・。 一年くらい前に、死んだよ・・・・。」
賑やかなギルドの食堂、つい先ほどまで笑いながら話をしていた二人であったが、ジークは押し黙り硬い表情を、レシルは固まりジークの言葉を信じていない様子だった。
「嘘だろ?だってリアは、俺と同い年だぞ。まだ子供じゃないか。なんで、あんな元気だったリアが。」
「不治の病にかかったんだ。できるだけ、進行を遅らせたり手を尽くしたらしいけど・・・・。」
「そうか、みんな頑張っても無理だったんだな。 ごめんな、暗くなるようなこと話させて。飯にしようぜ。」
「お前は悲しくないのか?」
「悲しいよ、悲しいさ。でも、リアはもういないんだろ。みんな頑張って病気を治そうとしたんだろ?なら仕方ないじゃないか。俺は、村を出てリアの死に目にさえ会えなかったし、最後に話した言葉が何だったのか、どんなだったか記憶なんてほとんど覚えてない。俺に、泣く資格はないし、泣いても意味もない。逆にリアを困らせるよ。」
「資格がないなんて、そんなことない。リアとお前は友達だった。仲のいい友達だった。そんな間柄の相手のことで泣く権利がないなんてあるわけがない。」
「ジーク。俺さ、リアが死んだって聞いて初めはすごく悲しかったけど、もうそんなに感じないんだ。ここに来て二年くらい経つけど、仲良くなった人と別れる事なんてざらにあるんだよ。冒険者に限って言えば、死での別れなんてしょっちゅうある。だからなのかな、もう心の中ではリアとの別れは終わったみたいだ。」
「お前・・・。変わったな。村にいた時なんかよりも、全然・・・。」
「ああ、この二年で成長したさ。体は、成長していないけどな・・・。」
2人は、リアの話をここまでにして残りの食事を食べ切った。そして二人は、しんみりとした雰囲気を纏いながら自分たちに寝床へと向かう。
「俺は、ギルドで寝泊まりしてるしここで働いてる、いつでもいるわけじゃないが・・・。そういう事で何かあればすぐに話せよ。」
ジークは、手を振りながら自分の泊まる宿に帰るためギルドを出ていく。
レシルも、自室に戻るためギルドの奥に向かって歩いていく。
一人、部屋に戻った後いつものようにタヒコと共に眠りにつく。
しかし、眠ったレシルはリアのことを夢の中で思い出し涙を流す一夜となった。
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