12 森
レシルは、村長から本を貰ってから二年のうちに多くの魔法を習得した。
タヒコも、この二年のうちに魔法をはじめあらゆる面で成長していた。
そんな成長著しいレシルは、ジークの父ガースのはからいの元森に行きジークと約束した冒険者への一歩を踏み出した・・・。
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レシルが森へ行き、ジークと共に帰ってきた次の日、レシルはいつものように修行へ出かける。しかし、その顔はいつもよりも少し悲しげであった。
いつものように、修行を始めるがどうも集中できない。魔法も、維持することがやっとの状態のまま続けていると、ジークがやってきた。顔を見ると、レシルと同じ様に少し悲しげな顔をしていたがジークは、レシルの隣に座り顔を向けずに語りだした。
集中できていなかったレシルは、修行をやめジークの話を聞いていく。
ジークの話をまとめると、レシルと約束していた冒険者について、そして、ガースがなにも考えず辛い体験を自分より年下の子にやらせたことについての謝罪だった。
レシルは、なぜジークが謝るのか疑問に思い聞くと、謝ることはあくまでも口実であり、レシルのアフターケアを含めて話をするためだった。
確かに辛い体験ではあったが冒険者になるのなら避けては通ることのできないことのため、レシルは慣れるか、これを受け入れるしかなかった。レシル自身、そのことは考えていたし受け入れる覚悟はしていた。
そのため、ジークが話をする意味などなかったが気にかけてくれたことに感謝するように、ジークとの約束を再び誓い合った・・・。
その後二人は、ガースの元へ行き機会があれば森に魔物退治へ行くようになった。
命を奪うことに顔色を悪くしていた二人であったが、戦い、命を奪い、自分たちの糧にする。
何度となく繰り返し気持ちにも整理が着く頃には、森で十分動き、戦えるようになっていた。
ここまで成長した二人に、自分は必要ないと感じたガースはこれからは二人で森に入る許可を出す。
まだ年齢的にも若く、もしもの場合が起こりうるかもしれないので深くまでいかないことを約束させた。
晴れて二人は、森に自由に入れるようになったが、あくまでも時間があるとき二人一緒であり、二人とも毎日のように入れるほど暇ではなかった。
「ジーク、森にはいつ行くんだ?」
「今は無理だな、草を全部刈り取らないと父さんに怒られるし、それまでだなー・・・。」
草木が青々と茂る夏のような今頃は、伸びすぎてしまった草を刈るために大忙しである。
森に入れない日々が続き、心のもやもやが大きくなっていく。
レシルは、その感情に我慢できずジークを置いて一人で森に入ることにした。
レシルは、ジークと違い時間が比較的あった。村長は自分の畑を所持していなかったため、共用の畑の世話を主にレシルにやらせていたが、それ以外の時間はレシル自身でやっている採取や修行くらいで時間に余裕があった。
早朝、レシルは自分の任されている仕事を終わらせると、人目につかないように森に入っていった。
レシルは、剣を使って見つけた魔物を倒していく。タヒコも、レシルの動きに合わせ魔法で援護をしたり戦闘以外では採取に一役買っていた。
そうやって、森の中を歩き回っていると大きなクマと出くわしてしまった。
魔物ではなかったが、自分よりも何倍も大きくその後ろに子供を隠しているクマは、とても興奮していた。
ガースに教えられた通り、慌てず騒がず目をそらさないように静かに下がろうとする。
しかし、ゆっくり慎重に下がっていく途中、転がる枝に足を取られ一瞬、クマから注意がそれた。
「グォーーー!!!!」
クマは勢いよく走りだし、そのままレシルに体当たりをすると突き飛んだレシルを前足で抑え込む。
レシルは、胸に前足を載せられ身動きが取れない。剣も衝撃で吹き飛び、クマはそのままレシルに噛みつこうと顔を近づけてきたが、噛みつかれることはなかった。
タヒコが魔法で風を起こし、クマの顔にちりを混ぜでぶつけたことによりクマは嫌がり足をどける。
飛ばされ、押さえつけられた痛みを我慢しつつ距離を取るとタヒコが、傍まで近寄ってきた。
胸に広がる血を心配そう見つめ鳴き声をだす。傷口をレシルが触ると、聖樹から貰った種がクマに押されて体の中にめり込んでいた。
痛みに耐えながら近くの木に背中を預け、クマを見ると子供を連れて去って行く姿が見えた。姿が見えなくなると、収納魔法から薬草を取り出し治療する。
傷薬を塗り、痛み止めを使った後早くこの場を離れようとレシルは拾った枝をつきながら森を出ていった。
村の家が見え始め、もう少しで着こうとしたとき草を切り分けながらジークの姿が現れた。
「レシル!」
ジークが声を上げ駆け寄ろうとすると、力尽きレシルは倒れてしまった。
タヒコは、倒れたレシルにしがみつき泣き叫ぶ。
ジークはレシルを起こすと大声で名前を呼ぶ。その声に近くにいた者も気づき集まってくるが、タヒコをお構いなしにレシルを抱きかかえると集まる者など気にせず村長のもとに駆け抜けていった・・・・。
翌日、レシルは全身の痛みに目を覚ました。なぜ、自分の部屋にいるのか考えればジークに会い倒れたことを思い出し納得した。
枕もとで丸くなり寝ているタヒコを、優しく撫でながら助けてくれたことに感謝しているとドアがノックされ、村長が入ってきた。
「起きたんだね、よかった。あんたが血だらけで運ばれてきたときは、本当に心配・・・。」
「レシル、目を覚ましたんだな、良かった。」
村長の言葉を遮って入ってきたジークは、目覚めたレシルを見てホッとしたのかその場に座り込んでしまった。村長は、少し間を開けた後ジークを立ち上がらせレシルに持ってきたお茶を差し出した。
痛む体を起こし、お茶を受け取ろうとする。
「で、レシル。なんで、血まみれで森から出てきたんだい?」
その言葉に伸びる手がとまり、額に汗をにじませる。
ジークも思い出したように二人からの追及が始まってしまった・・・。
話を一通り二人にするとジークには大声で怒鳴り怒られ、村長からは覇気のこもったビンタに説教をもらい、関係のないタヒコとジークもビビらせながら幕を閉じた。
レシルの話は、村にすぐ広まり呆れる声が多くあった。ただ、様子を見に来る者たちは怒りの言葉や呆れた声を漏らす者もいたが一様に、レシルの姿を見て安心していた。
レシルが復活するまでには三日かかった。
切り傷や打ち身もきれいに治ったが、胸には種が入ったままだ。完全に傷は塞がっているので外からは見えないが残っているらしい。村長曰く、種には気づいていたが、傷口を広げてしまうため下手に取り出せず比較的小さな種なのでそのままにしたとのこと。
レシル自身は、聖樹から貰った肩身のようなものだったので真の意味で肌に離さず持つことができると思い、村長には気にしてないと笑い飛ばした。
しかし、笑ってばかりもいられなかった。
村に話が広がるということは、ガースの耳にも入るわけで・・・。意気揚々とジークの家に行くとガースにこっぴどく怒られ、森に一人で入ることを禁止、いや、近づくことさえ禁止され村の人たちにもこの話は伝えられてしまい、レシルは村全体から一人で森に近づくことを禁止されたのでした。
レシルは、それから森には近づくことはありませんでした。しかし、レシルは今までよりも遠くへ行くことが多くなりました。
近くにある森へ行くことが禁止されただけで、監視するもおらずいつも野原に行っていたレシルは野原をさらに越え、林を抜けたその先の岩山に行くようになっていた。
この場所は、村の人達にバレないよう魔法の練習をするためにいいところがないか探していたところたまたま見つけた場所であった。しかもここは、ゴブリンやトカゲの魔物などがたまにいるので戦闘の訓練にもなっていた。
森に行けなくなってからは、岩山がレシルの遊び場であり修行場となった。
魔法の反復練習をして、より繊細なコントロールを身に付けていく。なぜ、今までも修行はやってきたのにさらに繊細なコントロールが必要かと言うと、怪我をして以来魔法の特に風属性の魔法を使おうとすると思っているよりも強く発動してしまい、思い通りに使えていなかったためである。
そのため、レシルは魔法の修行を岩山で行なっているのだ。
この世界には、風・火・水・木・金と言う五つの属性があると考えられており、魔法を使う者には得意とする属性が存在する。
本来、魔法とはこの世界に住む人ならば生活魔法と言われる簡易な魔法を誰しも多少使えるが、それ以上の魔法は使うことができない。魔法の適性を持っていなかったり、魔力量が必要量なかったりと理由はいくつかあるが、いくら適性を持っていても持たない属性の魔法を使用することは難しくなる。
レシルの場合は、適性は風であったが風属性の制御がうまくできなくなっていた。生活魔法は少し強く発動する程度だったが強めに発動させれば、ホースから吹き出すように水を作ったり、宙に浮く鬼火のように火を作ったりと属性魔法と遜色なく使えてしまった。
風に関しては、弱く発動させたつもりが木々を大きく揺らしてしまうほどになっており、制御できるように急いでいた。
しかしレシルは、気づいてはいなかった。本来、適性以外の属性を使えるようになるなどありえないことに・・・。
読んでいただいてありがとうございます。
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