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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

殺し屋モラトリアム

作者: 月の三月兎

 俺は殺し屋だ。それ以外の何でもない。

ボスが殺せと言えば、ただその標的を殺す。


 難しいことを考えることは無い。ボスに殺せと言われる。だから殺す。

考えることは単純。アシがつかないよう、単純に、密かに確実に殺す。

標的を殺すためならば、邪魔者は殺してもいい。俺は殺されない。それだけだ。


 ある晩、俺はボスに呼び出された。

「女房を殺せっ! あの売女をだっ!!」

 ボスは怒りに震えていた。スコッチをガバガバとあおり、こめかみをピクピクとさせながら、顔を真っ赤にして俺に命令した。

「わかりました」

 俺は、いつも通りボスの命令に従った。そして、指示を仰いだ。


 今回は簡単だった。ボスのお屋敷にいる奥様を殺す。当然シロウトだ。

元はどこぞの華やかな女だったらしいが、そんなことはどうでもいい。俺にとってはまるで関心の無いことだ。ただ、俺は殺す。相手は殺される。それだけだ。

ボスの奥様だろうと知ったことじゃあない。奥様なんて、俺が知っているだけで4人目だ。俺が殺すのは1人目になるが。

 ボスは俺に命令した後、「アイツは俺のいないところで男と会っていやがった! その野郎は目玉をえぐり出し、耳を引きちぎって……」と、ひどくいきり立って言っていたが、それはどうでもいい。そいつは俺が殺す相手どころか、とうに殺されているのだから。

 手筈はボスが整えてくれている。任務遂行は22時。寝室にいいるのは奥様だけ。鍵は開いている。俺は、ただ奥様に銃弾をくれてやればいい――しごく簡単だ。野良猫の喉を撫でるよりも。


 俺は寝室のドアをノックもせずに開けた。見れば一瞬でわかる。ベッドには奥様。

周りを見る。誰もいない。奥様が叫び声を十分にあげる前に、腹に銃弾を2発。静かになり、仰向けに倒れる。近づき、さらに2発を頭部に。完璧に殺した。任務完了だ。さあ、ボスに報告を――

 廊下から溢れる灯りを遮るものがあった。

「ああ、ボス。お望み通りに始末しましたよ」

 そこにいたボスに俺は言った。来てくださるとは、話が早くて助かる。

ただおかしなのは、ボスが握っていた拳銃、そして、周りにいる護衛の拳銃までもがこちらを向いていることだ。

「お前は今までよくやってくれたよ。だがな、もうここで用済みだ。たとえ俺が、酔った勢いで言ったとはいえ、俺の女房を平然と殺す奴だ。お前みたいな奴を――」

 ボスはその後、まくし立てるように色々と言っていたが、俺はボスの言っていることがよくわからなかった。殺せと言ったのはボスじゃないか。

 そうこうしていると、ボスは言った。

「最後の命令だ。お前は俺に殺されろ」

 それは違いますよ、ボス。俺の仕事は殺すことだ。殺されることじゃあない。

その命令は聞けませんよ。


 俺は、ボスと護衛を撃ち殺した。

しかし、ボスも俺に「自殺しろ」とでも言っていればよかったのに。

そうすれば、俺は迷わず自分を撃ち殺したんだが。

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― 新着の感想 ―
[一言] 作者名を入力せずに無記名にすると、ユーザー名が使用されて作品からユーザーページに飛べる様になりますよ。 (*´ー`*) 他の作品を読みたくてもユーザーページに飛べないと、「小説情報」のとこ…
[一言] 読みやすく、綺麗にまとめ上げる構成力は好感が持てるのに…評価ptが無いのはおかしいですよね(´・ω・`)? レビュー書けば評価はされるのだし、ユーザ名と作者名を一緒にしたりして、も少し読者…
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