8話 告白準備。
『私、この想いを伝えたいです』
その勇気を振り絞った答えは暗くなった外を照らすように店内に響いた。
『よし、よく言った。それでこそ私の妹になる女』
まさか告白をする日が今日になるとは。
あの男がこの店を訪れてから3ヶ月の月日が経っていた為、もうそろそろ「その時」が来ても良いとは思っていたが…
『マキさん1つ良いですか?』
『えぇ、いいわよ』
『何で急に今日、告白を提案したんですか?』
確かにそれは私も気になった。
別に今日でなくとも、きっとユカさんはいずれあの男に想いを伝えるだろう。なぜ今日なのか。
『急にじゃないわよ。最初にここへ来た時からユカちゃんがケイスケに気があることぐらい気づいていたわよ』
『…もしかして、提案をするために今日、お店に来てくれたんですか?』
『提案と誤解を解くためよ』
あの男の姉であるマキさんは、そういって私を見た。
『ごめんね。この間は酷いことを言って。でもあなたが飼われてしまうとユカちゃんが寂しがるから』
全てを考えた上での行動だったことを知って、驚いたことを表現するために私はかごの壁に頭を叩き付けて音をたてた。
そんな私の返事は19時を知らせる時計の鐘によって揉み消された。
『さぁ!そろそろ心の準備ができた?』
『えっ///いや、ちょっと待って下さい』
『大丈夫よ!ケイスケを呼ぶわよ』
マキさんは右手で携帯電話の操作を始めた。
『ちょ、ちょっと待って!…本当に待って下さい///』
顔を赤くしおどおどするユカさん。
『何を言えば良いのか…それに私見たいな子がタイプとは限らないし』
『タイプなんてあってないものなのよ。あと考える必要はないわよ。あなたの想いを伝えたらいいのよ。わからなくてもいいのよ。想いを伝えればそれで良い』
マキさんの優しい眼差しがユカさんを包み込む。
今、私は理解した。
ユカさんの「なぜ今日、告白を提案したのか?」という問いに対して、マキさんは今日ここへ来た目的を答えて誤魔化した。
マキさんは照れくさいのだろう。
「早く二人の幸せな姿を見たい」というのが本音だろう。
良い姉をあの男は持った。
『マキさん…』
不安そうにユカさんが名前を口にする。
『ユカちゃん、そうしている間にケイスケがこのお店に大急ぎで来るわよ』
『大急ぎで!?』
夜の暗闇の中を駆け抜ける様に走る人の姿が窓の遠くで見えると、その姿はあっという間に店の前までやって来た。
そして、勢いよく店のドアが開いた…
【登場人物】
私 →他国からやって来た。硬い体を持っている。
ユカさん→22歳の店員、着痩せするタイプ。
あの男 →ケイスケ、22歳大学生
同行者の女性→マキ、ケイスケの姉。25歳。