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~かごの中の恋~  作者: 七福 船
3/10

3話 失恋。

あれから「あの男」は一週間に一度ぐらいのペースで店にやって来るようになった。


来る度に男は私に対して笑みを浮かべ、ユカさんを一人占めしては私の機嫌を悪くさせた。


『あなたが羨ましい。私も私目当てで来てほしいなぁー///』


顔を赤く染めて、口癖の様にユカさんは私への嫉妬を口にしていた。


そんな男を羨ましく思う反面、彼女の幸せそうな表情を見ていると自然と癒された。


あの男への嫉妬に慣れ始めたある晴れたお昼時に、あの男が店にやって来た。


『いらっしゃいま……せ…』


『こんにちは!』


元気な声でユカさんに返事を返すと、男は同行者であろう隣にいる女性と私の前へやって来た。


『こいつだよ!前から言ってたやつ!』


『話には聞いていたけど…あまり可愛くはないわね』


男が興奮しているのに対して、すごく冷めた様子の女性。


『もういいから、行きましょう。昼ご飯を食べるついでに来ただけなんだから』


『え~、まだ来て5分も経ってないよ』


親しげに話す2人をユカさんは何も言わずに、後ろから見つめている。


『あのさ、もうそろそろお金が貯まりそうなんだけど…』


『ダメよ。飼うなんて』


『まだ飼うとは言ってないよ!』


なぜ、男は一緒に来た女性に許可を取ろうとしているのか。


ユカさんは2人の会話からくる動揺を紛らわす様にほうきを片手に、店内の掃除を始めた。


『ケイスケ、もし飼うって言うのなら家から出ていきな!』


男と一緒に来た女性は強い口調で、男の名前を口にして強烈な一言を放った。


しかし、家から出ていけとは?今までの会話の流れや親しげな様子を見れば…彼女なのでは?


ガタン…


ユカさんが手からほうきを落とした音が店内に響いた。


きっと、ユカさんも私と同じことを考えたのだろう。


確かに、私はあの男に彼女を奪われたくない。


しかし、彼女が傷つく姿も見たくないと思っているのも本音。


顔を赤く染めた彼女の顔が頭に浮かぶと、何だか切ない気持ちになる。


本当の意味で好きな人の「幸せ」を願うことは難しいのだろう。


『一緒に住めなくなるのは困る。でもなぁ~』


『ほら、もう行くわよ!』


女性は男の手を掴むと、そのままドアのほうへ男を引きずりながら向かった。


『あ、ありがとうございました』


『ままま、また来ますね!』


男は体勢を崩しながら、お決まりの別れのセリフを口にして2人は去って行った。


『告白もしてないのに、失恋ってやつかな』


いつもの眩しい笑顔が消えて、寂しそうな顔をした彼女。


『お似合いの2人だったもんね』


そう言うと彼女に笑顔が戻った。


またきっと、あの男はこの店に来るだろう。


その時、彼女に対して私は何ができるだろう。


次にあの男が店に来るのが怖い…

【登場人物】

私 →?

ユカさん →店員

あの男 →ケイスケ。大学生

同行者の女性→ケイスケの彼女?



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