2話 彼女の目線の先には。
あれから、数日経ったが「あの男」は現れない。
あの日から顔を赤く染めたユカさんの顔が私の頭から離れない。
そのせいなのか、いつもの目覚ましに気持ちよさを感じない。
悩みは人から楽しみを奪うのだろう。
そんな私とは反対に彼女は、いつもの通り太陽の様な眩しい笑顔で、掃除や接客をこなす。
憂鬱な朝から始まる私の1日は、その後に見せてくれる「彼女の笑顔」で幸せな1日に変化する。
しかし、いつか彼女と離ればなれになると考えると不安で仕方ない。
『いらっしゃいませ…あっ、また来て下さったんですね』
『あ~、はい。』
「あの男」がやって来た。
男は前と同じ様に、私の前にやって来て笑みを浮かべる。
『やっぱり、この子がお目当てなんですね。どうでしょう、飼われますか?』
『いや~、お金が…』
私はあなたとは、住みたくない!ここに居たい。
『そうですか。それなら頑張ってアルバイトしなきゃですね!』
『はい!是非とも飼いたいので頑張ります!』
優しく温かい時間が2人の間に流れていることぐらい、嫉妬に狂った私でもわかる。
『大学に行くって前に言ってましたが近くなんですか?』
『はい、すぐそこの大学です。でもこの前は遅刻する所でしたけど』
彼女の眩しい笑顔の横で、男もまた眩しい笑顔を私に見せつけている。
『すいません。この後に予定があるので帰りますね!』
『は、はい。いつでもまた来て下さい』
男は彼女に別れを告げると、店を後にした。
『予定って何だろう…』
そう口にした彼女の目線の先には、男が通ったドアが映っていた。
来店回数が2回なのに、なぜあんなにも親しげに話せるのか。もしかしてあの男も…
明日の目覚ましも、気持ちよくなさそうだ。
読んで頂きありがとうございます。
大変、読み苦しい文章になっているかと思いますが読んで頂いている方々が少しでも楽しめる様に頑張っていきたいと思っています。
無事に完結するまで、見守って頂ければと思います。今後もよろしくお願いします。