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まだ、花蘇芳は枯れていない その3
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二人とも、酷く凍えていた。体は芯まで、心は核まで、冷えきっていた。暖かいところでジッとしていれば体温は上がる。だけれども、心までは温まらない。
だから、奏は青春の部屋に着くと、すぐに彼女を抱き寄せた。その長い髪に指を通し、口を付ける。
二人にとって長い夜が、始まろうとしていた。
それは初めて心を通わせたような、そんな世界がそこにはあった。
だれにも止められない、二人だけの甘い空気が流れていた。
「優しくなんてできないわ」
そう、彼女が漏らしたのだった。




