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白竜の身の上話

白い翼が宙を舞う。青い空を白い雲が飾り、その中を白い矢が走る。

太陽が照らし、大地に巨大な影を作る。

赤い二つの目が獲物を見つけ、矢は地に落ちてゆく。


哀れな獲物は私に気づく間も無く、生きたまま八つ裂きにされた。やがて命の灯火は消え去り、ただの肉塊となった。


私はその美味そうな肉を頬張り、喉へ流し込む。胃が満たされ、欲が満たされて行く。


私はドラゴン。


白きドラゴンだ。






澄んだ水辺で己の姿を見る。白い鱗に覆われた美しい四肢に、純白の蝙蝠の様な翼。残酷そうな牙の間に見える、燃えるような舌。そして、深淵を見透かすような真紅の瞳。


全てが私を司り、何を失くしても私ではない。

水辺で水を飲んでいると、鹿が恐る恐る水を飲みに来た。

私がその二つの瞳を鹿へ向けると、鹿は一目散に逃げ出して行く。


生憎私は満腹である。食べるつもりなど微塵もない。

今頃、命拾いをしたものだと思っているのだろう。


私は食物連鎖の頂点である。他の生物の生死は私の気分によって変わるのだと、幼い頃に気づいてしまった。


いつからだろうか。


他の生物を見ても「食物か、そうではないのか」としか見れなくなった。小動物を食うほど落ちぶれてはいない。だが、彼らは私を見ると一目散に逃げて行くのである。


私の心を理解しようとする者はいない。

それが悲しいと感じたことはない。

ただ、私と彼らは違うというだけだ。


空と大地は分かり合えない。お互いに平行線をたどるだけで、交わり会うことなどないのだ。


私は水で喉を潤し、寝床へ帰ろうとする。

私の気が休まるのはそこしかない。







私はドラゴンだ。



気高く。



美しく。



残酷な。



白いドラゴンだ。





















私は寝床へ帰り、寝返りを打つ。洞窟の中、石の上に寝転がり寝転がり打った。


私だけだ。


他の動物は同じ種族の仲間を持っていた。


私だけだ。


私だけ一匹でいる。他の動物と違い、番を持たず、子を持たず、親も持たない。


私が覚えているのは、この冷たい石の床だけだ。母の温もりなどではない。

毎日、食べては寝るだけの生活に嫌気が差した訳ではない。目的もなく、喜びもなく生きることに疑問を抱いているだけだ。


私は頂点であり、孤独でもあったのだ。



ガシャンーーー



なんの音だろうか?


私の巣に踏み込むような動物など存在しない。誰もがここを避けて過ごしていた。


私は上体を起こし、洞窟の入り口に向けて歩き出した。


やがて洞窟の外が見えるような位置に立った時、その小さな生き物を見つけた。



「あっ……」



これは確か、なんと言う生き物だっただろうか?

そう、私は覚えているはずだ。


そうだ、思い出した。



ニンゲン……という動物ではないだろうか?



「あ……あわわわ……」



ニンゲンは石の床に座り込み、私を見上げている。

なんと小さいのだろうか、なんと非力なのだろうか。


茶色い毛を頭に長く生やしている、メスだろう。綺麗な布地を体に巻きつけている。


聞いたことがある。

ニンゲンは体毛が薄く、綺麗な衣を着ていると。



「あわ……ど、どど、ど」



彼女が何を言っているかは分かる。ドラゴンには他の動物の全ての言語が分かるのだ。



「ドラゴンだ……」



そう。私はドラゴンだ。見れば分かるだろう。

少女は、立ち上がろうとして、また転けた。



「あっあいた!?」



その仕草がとても可愛らしく、私は見つめていた。少女は幸い怪我もなく立ち上がり、私の前から逃げて行った。

この近くに村でもできたのだろうか?


私はまた、寝床へ戻り眠りに落ちた。

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