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RED - DISK01  作者: awa
CHAPTER 11 * AVENGING AND RETURNING
73/91

* Innuendo

 昼休憩時間。

 私たちは二.五階の渡り廊下に集まった。アゼルの左隣に、彼と同じように柵にもたれたブル、その左隣にニコラ、リーズ、そして私、マスティと、円を描くように座った。みんな手にクッキー袋を持ってる。

 「あの顔、写真に撮りたかった」声を弾ませリーズが言う。「あの時のエデの顔、マジ最高だった」

 ニコラも笑っている。「呆気にとられてたもんね。最後のあれは、さすがに笑うの、我慢できんかった」

 「オレなんか授業中に思い出してヤバかったっつの」と、ブル。

 「うまいこと持っていったよな」マスティがアゼルに言う。「どっちの手柄だろ」

 「さあ。けどよくわかった。ベラは相当嫌われてる」

 「たぶんあれよ。仕返しのつもりだったんだと思う。先月からカーリナがD組の男とつきあってんだけど、今日そいつが本命チョコ渡す前に、私らがあげちゃったんだよね。しかもそのアホ男がそれを真っ先に見せたから、それでムカついたんじゃないかと」

 リーズが顔をしかめる。「うっそ、くだんねー。義理だってわかってんのに?」

 「わかっててもムカつくんじゃないの? バカだから。あいつら昔から陰で私のこと、男好きとか言ってるからね。いちいち嫌味言ってくるのはもう慣れてる」

 「お前んとこは人種が豊富だな」ブルが言う。「っていうか、お前に対してだけ?」

 「そうなんじゃない」私はクッキーの袋を開けはじめた。「なんかゲルトたちいわく、何人かとなにかしてても、私がいちばん目立つらしいから。ぜんぶ私に集中するみたいね」

 彼らも袋を開けはじめた。マスティが苦笑う。

 「お前、暴力的なことをされてないだけで、ある意味イジメ受けてないか、それ」

 チョコチップは安全。プレーンを出した。「まあ、そうかもしれないけど」一口食べる。おいしい。アタリだ。「気にしてないから知らない。敵視されやすいのよ。でもどうでもいい」

 「あからさまにいじめたら返り討ちに合うんだろうな」ブルがリーズへと視線をうつす。「お、きたか?」

 プレーンクッキー片手に、リーズはおかしな顔をしている。「──塩だあ──」

 みんな笑って、私も思わず笑った。

 「ごめん、だいじょうぶ? 無理しなくていい」

 「うー」涙目であやまる。「ごめん、無理。まじで無理。なんかすごい塩」

 なんかすごい塩? 「わかった。それは捨てていいから、これあげるから」食べかけのプレーンを差し出した。

 彼女は涙目で塩クッキーを袋に戻し、アタリのプレーンを受け取って食べた。「──うまい」

 「──こっちもきた」今度はマスティが言った。ココア味のクッキーを手に持っている。「めちゃくちゃ苦いし、なにこれ。コーヒーどころじゃねえ」

 「いや、ココアに見せなきゃいけないから、かなりの量のコーヒーを──」

 「お前マジで最悪! 苦いし!」

 苦いのはあたりまえ。

 「普通にうまいぞ」ブルが言った。「お前ら二人、今度なんか奢れよ」

 アゼルにもニコラにもハズレはなかった。

 私もココアクッキーを出して一口食べた。「普通にココア」

 「お前マジで──」マスティは顔をしかめたまま、クッキーを袋に戻した。「コーヒー恐怖症になりそう」

 「だから、ごめんて。まともなのじゃコレがいちばん味が濃いから、どうにかなるかも」食べかけのココアクッキーを渡した。

 アゼルが笑う。「お前鈍いから、コーヒー味すらココアと思い込んでたりして」

 「そんなバカな。味音痴なつもりはないわよ」

 マスティは恐るおそるココアクッキーを食べる。「──ああ、ココアだ。うまい」

 ブルは身体を起こした。

 「ゲルトたちが言ってたのって、こういうことか。なにさせられるかわかんないっていう」

 「んー。ま、そういうことかな。遠足のおやつに、マンゴー味のチョコレートを紛れ込ませて渡したり──」

 スカートのポケットの中で携帯電話のバイブレーションが震えた。

 「ごめん、電話っぽい」取り出して画面を見る。アニタからだ。応じる。「はいはい」

 「復讐って、どうすればいい?」アニタは突然言った。

 「は?」

 「先輩と別れた」

 「は? 別れた? なんで? 今?」

 「今さっき」

 「ちょっと待って」立ち上がり、リーズにクッキーを渡した。「食べて」方向を変えて校舎に戻る。「なんかされたの?」

 「先輩にじゃない。先輩はケンカしたの」アニタは低い声で説明した。「みんな──男友達にクッキー配ったこと、なんかすごい言われて。あたしひとりで、男にだけ配ったと思われてて。友達と一緒に、女にも配ったし、義理だって言ったんだけど、それすらイヤだとか言われて。他の男に媚売ったり、カマトトぶってるってホントかとかも言われて、さすがにムカついて、もう別れるっつった」

 私は階段をおりていく。「どういうこと? 誰かがそう言ったってこと?」

 「三時限目の休憩時間、エデとサビナとカーリナが先輩のところに来たんだって。んで、クッキーのこととか、いろいろ言ったらしい」

 ──ああ。あいつらか。

 私は一年フロアにおり立った。「で、あんたは今どこにいんの?」

 「今──まえに、あんたが二年殴ったところ」

 第三校舎四階への階段。「泣いてんの?」

 「泣きそうだけど、今はすごいムカついてる。殴ればいい? 殴ってもいい?」

 アニタがここまで怒るのはめずらしい。「あんたはなにもしなくていい。たぶん半分以上が私への当てつけだから。しかも見当違いの当てつけ」早足で廊下に出ている生徒たちのあいだを通り抜ける。何人かはクッキー袋を手に、しかめっつらでなにか言いたげだったけど、私はそれを手で遮った。「殴ったって、あんたが悪者になるだけよ。そんなくだらないことしなくていい」

 「じゃあどうすればいいの!?」彼女は声を荒げた。「なんかしないと気が済まない!」

 「わかってる。落ち着け。返すのは私。あんたは見てればいい」

 「──なに、すんの?」

 「ああいう奴らを相手にする時は、無駄に高いプライドを崩してやればいいのよ。しかも人前で」

 「──うん」

 「とりあえずおりてきなよ」私は戸口からC組の教室内を見渡した。いない。「C組にはいない。今からD組に行くから、そっちからベランダ前のフロア確認して」

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