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RED - DISK01  作者: awa
CHAPTER 11 * AVENGING AND RETURNING
71/91

* Development

 土曜日。

 朝早くからアニタと二人、祖母に教えてもらいながら、前日の放課後に買った材料を使ってカップケーキを作った。

 生地はチョコレートとプレーンの二種類にして、デコレーションを楽しんだ。とはいえ、私はすべてチョコレート生地。そこに生クリームやチョコレート生クリーム、イチゴにシュガーパウダーなんかを乗せた。アニタのおかげで、完全に自分の好みを優先しているのを祖母に知られた。

 その後、私は祖母の車でアニタをニュー・キャッスルの自宅まで送り、家に戻ってから、ランチ用にカツサンドとたまごサンドを作った。

 たまり場のリビングにはマスティとブルがいた。

 「朝っぱらからビール?」

 私の質問にブルが答える。「朝飯代わり。しかも眠い」

 マスティも彼と同じくらい、とても眠そうだ。「昨日三人でゲームしてて、朝までコース。寝たの四時過ぎ」

 荷物をソファの傍らの床に、大小ふたつのケーキボックスをソファに置き、その隣に腰をおろした。

 「今日デートだって言ってなかったっけ」

 ビール片手に、ブルは大きなあくびをしていた。「だから無理やり起きたんだよ。十二時に待ち合わせだけど、もう面倒。家帰んなきゃいけないし、寝たい」

 今は朝の十時半。「起きなきゃいけないのわかってんのに、なんでそういうことするんだか」立ち上がり、サンドウィッチの入ったケーキボックスをテーブルに置いた。「アゼル起こしてくる」

 「飯!」ブルは声を上げ、すぐに箱を開けにかかった。「起きねえとすぐなくなるって言っとけ」

 「はーい」

 アゼルはやはり壁のほうを向いて眠っていた。そっとではなく、飛び込む勢いでベッドに寝転ぶと、彼は顔をしかめて目を開けた。

 「──なに」

 「サンドウィッチ争奪戦がはじまってる。しかも今日はカツサンドとたまごサンドの二種類のみ。朝食と昼食のつもりでそれなりに量はあるけど、ブルとマスティに渡してきたから、なくなるかも」

 「──あ?」

 次の瞬間、彼は勢いよく身体を起こした。開いたままののドアを見て、視線をこちらへと戻す。

 「ああ」

 私も身体を起こした。「寝ぼけてんの?」

 「ん──」両手で顔をこすると、左手を私の腰にまわした。「お前にかまってる時間はなさそう」

 そう言いながらも、キスをする。

 かと思えば目が覚めたらしく、私を放置して、彼はすぐにリビングへと向かった。

 ビール片手に、三人はサンドウィッチを見事完食した。そのあと、マスティとブルは一度家に帰った。待ち合わせ時間を遅らせるらしい。

 私も昨日、アニタと話していて午前二時近くまで起きてたうえ、朝が早かったので、アゼルと一緒に昼寝をした。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 「うまい」ななめ向かい、窓際ソファの前に腰をおろしているアゼルが言った。「万能すぎだな」

 私たちは三十分ほど前に起き、ふざけながらやっとベッドを出た。小腹がすいたと言ってカップケーキの入ったケーキボックスを開け、彼はチョコレート生クリームでデコレートしたチョコチップ・カップケーキを選ぶと、ペーパートレイの上でフォークを使って切り分け、ひとくち食べた。

 私はキッチン側ソファの前にいて、同じカップケーキを選んだ。切り分けたものを食べる。おいしい。

 「さすが私だよね」

 「いや、お前じゃねえだろ」

 「は? 私でしょ」また一口食べた。やわらかい。とろける。「生地混ぜたのよ。流し込んだのよ。オーブンのスイッチはアニタだったけど」

 「そういう問題じゃねえよな。お前らだけだと、こううまくはならないだろって話」

 「たぶんならないけど。っていうか、おばあちゃんにね、言った。つきあってるヒトがいるって」

 「へー」またケーキを口に運んだ。「で?」

 「ほぼひとり暮らし状態で、コンビニのとか外食ばっかりだから飽きると思って、サンドウィッチとか持って行ってるって言った」

 彼は笑った。

 「いきなり正直すぎだろ」別のケーキを手に取る。「さすがに怒られたか」

 「それが、ぜんぜん。むしろ昼食とか夕食が必要なら、言ってくれれば作るから、持って行くか取りにくるかしなさいって。会わなくていいからって」

 ケーキを口に運びかけた手を止め、こちらを見る。

 「──マジで?」

 「まじで」苦笑うしかない。「今までの、なんだったんだろうって話だよね。泊まりに行ってるのも、ほとんどはそのヒトのところだって言った。数え切れないくらい嘘ついてんのに、そんななんだもん。なんかもう、ね」ありがたいというか、なんというか。

 「──まあ、それはさすがに、悪いと思うけど」視線をそらしてケーキを食べた。「詮索はされなかったのか」

 「されてない。三年だってことは話した。でもあとはぜんぜん。けどアニタが──あ、あんたがひとり暮らし的なことをしてるってのは言ってないけど、アニタがね、おばあちゃんに甘えろって言うのよ。もっとヒトに甘えたほうがいいって。わりと説教された」

 「ああ。──で、どうしろと?」

 「だから、どうしろとかじゃない。でもあんたがいいなら、夕食はもらってくる。キライなものとか言っておいてくれれば、それ以外で作るって。育ち盛りなんだから、ちゃんとしたもの食べないとって。ここに来る毎回とは思ってないけど、平日なら一回はここに来るし、あと金曜か土曜、泊まりに来る時。メールすれば作ってくれるって言ってるから、一度取りに帰ろうかと思ってる。会わなくていい。私もさすがに、なに話せばいいかわかんないから」

 彼は苦笑ってフォークを置いた。

 「んじゃ、俺はお前に甘えることにする。飽きたとかはどうでもいいけど、正直ちょっと興味ある。お前やアニタが絶賛する料理ってのが」

 今さら、なぜかドキドキしてきた。嬉しい。

 フォークを置くと、床に手をつきながら移動し、アゼルの横に正座した。

 「キスしていい?」

 床に左手をついて身体をこちらに傾け、彼が微笑む。

 「イヤっつったらしねえの?」

 「する」

 キスをした。フレンチキスがすぐに深いキスに変わり、チョコレート味で、少し苦味があって、だけど止まらなくて、ふたりで床に倒れ込んだ。

 左肘で身体を支え、右手で私の頬を撫でながら、アゼルがつぶやく。

 「──やっぱここにも、置いとくべきかも」

 「だね。ずっと、ここはみんなの場所だからって思ってたけど、今はそれどころじゃない」

 「な。しょうがないからケーキはあとまわしにするか。んでいつものように、おとなしくベッドでヤるか」

 「おとなしくはないよね。おとなしかったことなんか、たぶんないよね」

 「ひとつ教えといてやろうか」

 私の両手は、アゼルの首にある。「なに?」

 「確かに俺はキホン、顔さえよければ、わりと誰でもいい。けど、相手のことなんか考えたことねえ。今までも、結果的に相手は満足してたらしいけど、それはモノがでかいからだし、向こうが勝手に。俺はとりあえず、ヤれりゃいいっていう考えだったわけ。自分が満足すればってことな。お前と同じで自己中だから、ヤるってのをホントの意味で楽しんだことはない。体勢変えて相手の反応を、とか、そんなんどうでもよかった。むしろひとりで感じまくってる女見て、すげえアホっぽいと思ってた。なにひとりで盛り上がってんだって。けどお前とヤるのは楽しい。お前がヤるのに慣れたら、そうでもないかと思ってたんだけど。今でも楽しい。お前がどうなんのか、見てんのが楽しい」 

 ──なんと、いうか。「すごく最低なこと、言ってるよね。いろんな意味で」こういう時は、本当に、喜ぶところなのかどうか、とても微妙だ。

 「最低な人間だからな」

 笑って言い、アゼルは私の首筋にキスをした。そのまま耳元で囁く。

 「まえに言ったとおり、お前が染まってくのを見るのが楽しい。そん時の気分で反応が変わるのもおもしろい。お前の声を聞くのが好き。なにでどんな反応すんのかって、それを見るのがすげえ楽しい」

 私は、顔が真っ赤になっていた。声が好きとかなんとか言われるのは、本当にダメだ。慣れない。

 「──遊ばれてる気がする」

 「お前が言いだしたんだぞ、声がどうとかってのは」

 「そうだけど」

 「さてと」腕を伸ばして視線を合わせる。「ケーキ食うか」

 私はぽかんとした。「はい?」

 悪戯に微笑む。「おあずけ」

 「ムカつく!」

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