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RED - DISK01  作者: awa
CHAPTER 07 * REPAYING AND REGAINING
43/91

* Two Weeks

 翌週月曜。

 文化祭の時と同じオリジナル制服に、パーカーを合わせて学校に行った。

 朝のHRのあと、担任であるオルフ教諭に注意された。だけどスカートは制服のままだし、冬になったらセーラー服の上にパーカーを着ることがあるのだからどちらも変わらないなどと、よくわからない言葉を並べて黙認を求めた。

 おおらかでやさしく、物分かりがいいと生徒たちに評判の担任に、校長に呼び出されても知らないぞと言われた。くるならきやがれと思った。

 そしてアニタたちと一緒に昼休み、デッド・ボール大会をすることにした。マーニを加え、ナンネとジョンア、他の友達を数人誘うと、翌日からエルミが加わり、ブルとマスティに話が伝わってなぜか加わり、リーズとニコラが観戦に来たり時々加わったりして、わりとおかしなメンバーになっていた。しかもそれを、月曜から金曜まで続けた。

 それどころか、ナンネはカーツァーへの気持ちを再熱させ、私はアニタを口説こうとするマスティを必死に止め、ものすごくわけのわからないことになっていた。

 一週間でやめたのは、最後には私とタスカとマスティとブルが残るという、決まりきった結果になることに気づいた私が、“これ以上はラチがあかない”と投げたから。だって、勝負がつかない。そして飽き疲れた。

 ちなみに月曜、リーズとニコラはオリジナル制服をやめる気のない私を見て、自分たちもすると言いだした。放課後、制服の色に近いベストを一緒に買いに行き、祖母に頼んで同じリボンを作ってもらった。

 火曜にはさすがに違和感を持ったボダルト生徒指導主事が注意してきたものの、オルフ担任に言ったのと同じようなことを三人で言い、黙認させた。ただしリーズとニコラは、再来週にある修学旅行にはちゃんとセーラー服を着ることを条件として。私は、ついに不良になったのだと思った。

 もうひとついえば水曜、ハヌルが、“アゼルと別れたってほんと?”と訊いてきた。私の不幸を嗅ぎつけたらしい。というかおそらく、ナンネあたりが喋ったのだ。

 別れたと答えると、ハヌルは理由を訊いた。関係ないと言ってやろうかと思ったものの、奴がいちばん聞きたがっている答えを返してやった。“フラれた”と。

 “そっか、残念”、なんて言っていたけれど、心の中で大笑いしているのがわかった。どうやってこいつに思い知らせてやろうかと考えはじめた。

 ドッジボール週間が終わると、エルミも同じように訊いてきた。時間差の理由はふたつある。

 ひとつは、ブルは私たちが別れたことを話さなかったし、違和感を感じたエルミに訊かれても、彼は“さあ”と返していたから。

 そしてもうひとつ。ハヌルに別れたと言った時点でエルミにも確定話が伝わっていたはずだが、その時は昼休憩中、ブルが一緒にドッジボールをしていた。私を刺激すればロクなことにならないと思ったのだろう。だからドッジボールが終わるまでは様子をみた。ぬかりのない女だ。

 アゼルの姿を見ることはなかった。文化祭が終わって一週間が経った頃、彼がずっと学校をサボッてることはマスティとブルから聞いたけれど、それ以外は知らない。リーズたちは彼の名前を出さなかったし、どうしているのかなど、私も訊かなかった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 ドッジボール週間の翌週金曜夜九時過ぎ、祖母の家の屋根裏部屋。音楽を聴いていると、携帯電話が鳴った。アニタだ。

 「二年の先輩に告白されたんだけど」と、彼女は切りだした。

 私は質問を返した。「文化祭の時に知り合って、たまに話すようになったあのヒト?」

 「うん。さっきまで電話してて。どうしよう。思わずオッケーしちゃったよ」

 「思わずって、べつに悪い気はしてなかったじゃん。むしろ楽しそうだったじゃん」

 「いや、そうなんだけど。それはいいんだ。そうじゃなくて、明日デートに誘われた」

 「早いな。金曜で明日いきなりか」明日は私、リーズとニコラと約束がある。

 「でしょ? だから日曜って言った」

 思わず笑った。「なんか変わる!?」

 「いや」彼女の声は少し、うわずっている。状況がよくわからないらしい。「まさかとは思うけど、土曜だと泊まりとか言われる可能性あるじゃん。だから日曜。そんなヒトじゃないだろうけど、念のため」

 なるほどと納得した。ごめんねいきなり泊まって。「なに? もしかしてセンター街とか行くの?」

 「そう。バスで一緒に。超テンパッてんだけど。どうしよう」かなりそわそわしている。

 「普通はあれだよね」“普通”など知らないが。「ランチ食べて映画でも観て店ぶらついて、夕方帰るよね」そんなデートはしたことない。

 「うん、そんな感じで話してる。でもはっきり好きなのかどうかわかんないのに、いいのかなと」

 私はきょとんとした。でもすぐに口元がゆるんだ。

 「だいじょうぶ。一緒にいればすぐわかるよ」

 「ほんと? 絶対?」

 「絶対。私の基準は、キスがイヤじゃなかったかどうかだったけど。好きでもなんでもないうちにキスされて、二回目でイヤじゃないことを確認した。次にたぶん好きなんだって気づかされてそのまま、つきあうことになったけど。それからはもう、一気に夢中になったわけだけど」

 そして気づけば終わっていたわけだが。

 「ああ、なるほど」アニタの声が少し落ち着いた。「じゃあ、手つなぐとかでもわかるかな」

 「うん。わかると思う。イヤだったら逃げてきちゃえ」

 彼女は笑った。

 「そうする。日曜、帰ってきたら報告するね」

 「うん。がんばれ」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 土曜日。

 リーズとニコラの修学旅行用の買い物につきあうため、私は祖母が作ってくれたミニワンピースを身にまとい、彼女たちと三人でセンター街へと向かった。来週の水曜から金曜まで、三泊四日で二年が修学旅行に行く。

 彼女たちと一緒に買い物を済ませると、私はとうとうファイブ・クラウド・エリアに足を踏み入れ、そこにあるゼスト・エヴァンスという小さなCDショップに入った。

 白い壁とライトブラウンのフローリング調の床の小洒落た店内。音楽が静かに流れていて、いろいろなポスターが貼られた壁に沿うよう、そして店内に四列の通路を作るように黒い棚が並び、そこにはCDがずらりと並んでいた。

 奥にあるレジカウンターに、PCに向かっている店長らしき男のヒトがいた。

 「サイラス!」

 彼女たちが声を揃えて名前を呼ぶと、彼がこちらに視線をうつした。「お、ニコリーズ。ひさしぶりだな」

 ニコリーズ!?

 「ひさしぶり、じゃねーよ」ズカズカと歩いて彼のところへ向かい、ニコラはカウンターの前に立った。ショップ袋を持ったままの両手を腰にあてる。「めっちゃ待ってたのに、三ヶ月以上じゃん。店放り出しすぎだし」

 「ほんとだよ」あとに続いたリーズも咎めるような口調で言った。「夏休み、何回もセンター街に来たのに、ぜんぜん戻ってこねえし」

 彼は笑った。「悪い悪い。しばらくはいるつもりだ」こちらへと視線をうつす。「友達か?」

 「そう。ベラっていうの」ニコラが紹介した。「彼女を連れてきたかったの。すごいんだよ。気に入るとね、曲をすぐ覚えんの。詞もメロディも。神業かと思う」

 「ほう」腕を組んでチェアに背をあずけ、こちらに訊いた。「どのジャンルが好きなんだ?」

 その質問に、私は好きなジャンルとアーティスト、声やテイストを、つたない言葉で説明した。

 ジャンル分けはあまり得意ではない。ひとりのアーティストのひとつのアルバムでも、テイストの異なる曲が入っていたりして好き嫌いが別れることがあるし、ひとつのジャンルでは縛りきれないアーティストもいる。いろいろ挑戦タイプより、私は一貫しているアーティストが好きなのだが。

 サイラスは私の気に入りそうなCDをいくつか教えてくれた。視聴までさせてくれて、私はほとんどを気に入った。楽しすぎてサイラスとの会話に夢中になっていたものだから、リーズとニコラは途中から呆気にとられていた。サイラスがかなり値引きしてくれたこともあって、CDアルバムを四枚も買った。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 「ベラ、ホントに音楽好きだね」左隣を歩くリーズが言った。「あんな楽しそうなベラ、はじめて見た」

 私たちはすでにサイラスの店を出て、ナショナル・ハイウェイ沿いにあるバス停へと向かっている。

 「楽しかった。あそこまで音楽を熱く語ってくれるヒト、いないんだもん」つい夢中に。「なんか時間かかってごめん」

 ニコラが笑う。

 「いいよ。サイラスもすごい楽しそうだった。二人とも、酔ってるのかと思うほど笑ってたし」

 確かに笑っていた。私は、同級生が騒ぐようなアイドルグループたちには目もくれない。大人の音楽が好きなのだ。昔からそうだった。恋愛などしたことがないのに、恋愛の曲が好きだった。もちろんそれ以外もあるけれど。

 「あ」リーズが立ち止まった。ニコラに言う。「酔い止め、買ってねえ」

 「あ」ニコラも立ち止まり、彼女と視線を交わした。「まずいよね。絶対うちら、酔うよね」

 「どうする? キャッスルにもあるけど、ついでだしこっちの薬局行く?」私は訊いた。

 「行く」ニコラが答える。「ごめん。すっかり忘れてた」

 「どこにあるっけ。私、ここら知らないんだけど」

 「うちらもよくわかんね」

 「ウェスト・アーケードならあるよね」と、リーズ。

 「ああ、そこだ」とは言ったものの、ニコラは天を仰ぐ。「逆方向だよ」

 「いいじゃん。酔って撃沈するよりマシ」と、私。

 方向を変え、ウェスト・アーケードに向かって歩きだす。

 酔う酔わないの話をしていると、ハンドバッグの中で携帯電話が鳴った。取り出して画面を見ると、ナンネからだった。通話ボタンを押して携帯電話を耳にあてる。

 「はいは──」

 「ベラ──」

 思わず立ち止まった。泣いている気がする。

 「なに。どしたの」

 「──ンアが──」

 「は? なんて?」

 ナンネが泣きながら説明し、私はどうにか状況を理解した。心配していたことが現実になったらしい。

 二、三言言葉を交わして電話を切った。

 「ごめん。用が出来た。先帰る」

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