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RED - DISK01  作者: awa
CHAPTER 06 * STRAYING AND BETRAYING
34/91

* Vice

 祖母に、“今日も文化祭の準備をしたあとで友達と夕食を食べに行くことになりました。いつもごめんなさい”と、メールを送った。

 完全に癖になっていた。特に九月は文化祭を言い訳にできたこともあり、回数がどんどん増えていった。今では平日五日のうち、三日か四日はそんなメールを送っているし、アニタやニコラが名前を貸してくることもあり、毎週一度は泊まりに行く。

 それでも祖母は、文句ひとつ言わずにいる。最初はやさしいのだと思っていたけれど、けっきょく、私がなにをしようと、どうでもいいのだろう。怒られても困るが。

 コンビニに寄ってからたまり場に行くと、ブルとマスティはオセロで対戦中で、アゼルはソファの上、コーナー部分に積み重ねたクッションを枕にして寝転び、マンガを読んでいた。

 私に気づいたアゼルが両手で持ったコミック越しに私に言う。

 「準備するんじゃなかったっけ」

 「ん、したよ」荷物をソファに置くと、二人掛けソファの前に座っているブルの傍らからオセロの盤面を見た。白のブルが負けている。「みんなは教室に集まって会議しててね、私は廊下でD組の偵察部隊と会議してた」

 ブルのターンになったので、私は真剣な表情で悩む彼の手から石を取り、盤に置いた。

 コミックスを床に置き、アゼルはまた訊いた。「それはサボりじゃねえの?」

 「違う」と答えてソファに座る。「店の名前考えた。偵察部隊と話してる時に名前なんかないかって訊かれて、バロット・マーケットっつったら即決してた。仕事した」本当に決まるとは思っていなかった。

 彼は笑った。「いちばんおいしいとこ持っていったな」

 「でしょ。だから堂々と宣言してやった。“文化祭はサボりますので準備も特に手伝いません”て」

 「マジか」

 「マジよ。しかもあれだよね、そろそろ本格的準備を言い訳にして、毎日遅くなれるよね」

 「大丈夫かお前」

 「知らない。テンション高いの、今」手を伸ばしてカバンとコンビニの袋を引き寄せると、カバンの中にある一口チョコレートを両手で掴み、アゼルとのあいだに置いた。「あげる。D組の偵察部隊にもらった。っていうか奪った」そしてコンビニの袋からペットボトルのカフェオレを取り出す。

 「奪ったって」彼はチョコをひとつ取って包みを開けた。「懇願とかじゃねえのか」食べる。

 「んーん。両手いっぱいのこれを見せてくれて、どのくらい? って訊くから、同じように両手を出して、“ちょうだい。ぜんぶ。よこせ。ぜんぶよこせコラ”、みたいな」

 「奪ってるな」

 「ね。ほんの数人だけど、一部の男は私に弱い」

 カフェオレを飲み、フタをして脇に置いた。

 「びびってるだけじゃねえの?」

 「そうかも。でもそいつらは気遣わなくていいから、私もズバズバ言えるの。向こうも女たちみたいに気遣ってこない。わりとなんでも言い合う。そっちのほうがラク」

 「俺らにも言いたい放題だもんな」

 確かに言っている。「真面目系? ブレインには無理よ。ノリの悪い奴とか。でも私のこういう態度に引かない奴らには、アホアホ言いまくってる。男と話してると、高確率で語尾に“アホ”がつく気がする」

 「ついてる。俺より多い気がする」

 「いい勝負」チョコの包みを開けて口に放り込んだ。

 「よっしゃ!」ブルは両手を挙げた。こちらに言う。「すげえ。お前が置いたあれで形勢逆転」

 マスティが顔をしかめる。「反則だろこんなの。助太刀とかナシだし」

 「そんなルールを作った覚えはない」

 「お前、オセロも強いんか」アゼルが私に訊いた。

 「どうだろ。小学校の時めちゃくちゃハマッて、学校にまで盤持って行ってやってたけど」家では使わなくなったので。

 「怒られねえの?」

 「言われはしたけどね。クラスの遊び道具として学校に置いから、平気だった」あの人たちはなくなったことにすら気づかなかった。

 「ああ」納得してまたチョコを食べる。「あとでやるか」

 「強い?」

 「普通」

 「普通ってなに」

 「どんだけかなんてわかんねえよ。リーズがおもしろいくらい弱いってのはわかってるけど、他は強弱よくわかんねえし。日によって違うし」

 それもそうだ。「文化祭でオセロトーナメントとかすればいいと思う」

 「時間かかりすぎだからやめたほうがいいと思う」

 「ショック。却下された」

 「ベラ、来い」マスティが言った。「なんか納得いかねえ」

 「もう一回ブルとすればいいんじゃないの?」

 「勝ったり負けたりだからよくわかんねえんだよ」

 「私とやってもよくわかんないままだと思うけどね」チョコをもうひとつ食べてから立ち上がった。ブルと席を替わる。「久々だからルール忘れたかも」

 「いや、忘れるようなルールじゃねえし」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 「お前とゲームしてたら、ゲームがキライになりそう」

 向かいでソファにもたれたブルが言った。私は三人と何度かずつオセロで勝負し、全勝した。

 マスティは私の右ななめ向かいに腰をおろし、ソファに背をあずけている。「ぜんぜん勝てないって、なにこれ」

 私はオセロの石を片づけている。「いや、カーレースゲームは苦手だし。ものすごい壁にぶつけるし」

 ソファに寝転んでいるアゼルが笑う。

 「あれはヘボいよな。トラックがトラックじゃなくなるまでぶつけるもんな」

 「でしょ? ゲームがキライになるほどのことじゃない。あと格闘ゲームも苦手だし」オセロも、自動で石を片づけてくれるという機械を作ったほうがいい。

 アゼルが言う。「必殺のボタン覚えねえからだろ」

 「あんな、何個も連続してボタン押すやつは無理。マシンガンぶっ放すのならいいけど」

 「あれはわりとストレス発散になってたのに、お前相手だとそうならねえ」と、マスティ。ゾンビゲームのことを言っている。

 「見つかったら瞬殺だしな」アゼルは起き上がった。「あれやるか。結託して真っ先にベラを殺れば勝てるかも」

 ブルも乗った。「やるか。個人対戦なのにチーム対戦的に。しかも三対一」

 「ええー。そんな卑怯なのあり?」

 「文化祭だと思うことにする」マスティが言う。「舞台は文化祭。クソみたいな文化祭をぶっ壊す」

 「リーズとニコラは真面目にやるのよ」舞台を勝ち取ったので、彼女たちのクラスは今日も練習している。「壊したら怒られる」

 彼は立ち上がった。「気にすんな。三人で結託してもお前に勝てなかったら俺はこのゲーム、もう二度とお前とはやらねえ」

 なにをそんなに必死になるのか。

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