* To Words
花火を終えて話をしていたリーズたちも、同じタイミングで帰ることになった。リーズたちはエルミのことを、ものすごくおもしろがった。
ニコラが小声で“泊まりの電話入れようか”と言ってきたけれど、私は丁重にお断りした。
でも、アゼルと一緒にたまり場に寄った。
玄関ドアの鍵を閉めると、荷物を持ったまま、すぐにキスがはじまった。背伸びして彼の首に手をまわすと、アゼルはそのまま私を抱きかかえた。驚いて思わず叫んだ。
電気もつけずに歩き、私の手にあった荷物をリビングのソファに置くと、そのまま奥の部屋へと向かった。キスをすると、前が見えないと怒られた。
部屋に入ってドアを閉めると、彼は私をベッドに放り投げた。エアコンのスイッチを入れてから私の上に乗る。私たちは、キスをしながらお互いの身体に触れた。
もう、“ゆっくり”という言葉は存在しなかった。夢中でひとつにつながった。
少なくとも私は、欲を埋めたいわけではない。触れることそのものに意味があった。
キスをして、頬を撫で、髪に指を絡ませて、シーツの下でひとつにつながり、“ひとりじゃない”と思えることに。
そのあとに襲う寂しさのことは知っている。だから考えないようにした。
少なくともこの瞬間は、ひとりではない。
私たちがこうしていると、真っ暗な部屋が赤に染まる気がする。
私たちは赤色の中にいる。ふたりで赤い空間を作り出し、その赤の中にいる。
私たちそのものが赤なのだと思った。
そして、この恋愛も赤であることに気づいた。
そして、私のアゼルに対する気持ちも赤なのだと気づいた。
「──好き」
乱れ続ける息を必死に整え、上にいる彼の首に手をまわして言った。
アゼルは動くのをやめた。耳を疑ったようだった。
「すごく好き」
かすれた声でそう言うと、アゼルは伸ばしていた腕を曲げ、顔を近づけて私の頬を撫でた。彼の重みを感じた。
「俺もお前好き」
一瞬で、泣きそうになった。
キスをされ、目を閉じると、涙が流れた。
はじめてちゃんと口にした言葉だった。言うのが怖かったのだとわかった。
欲しいものを欲しいと言うには勇気がいる。
好きなものを好きだと言うには勇気がいる。
受け入れてもらえないかもしれない恐怖は、常に私の中にある。
突き放されることが怖い。自分がどうでもいいものからならともかく、自分が大切に思うものからは、突き放されたくない。
欲しいと思えば思うほど、大切に思えば思うほど。
私は、黒っぽくて赤い地獄の中にいた。そこが私の居場所だった。
友達と一緒にいる時だけ少し這い上がれる。だけどいつまでも抜け出せない。それはいつだって変わらない。
見上げると、ずっと遠くに光があった。
手を伸ばすと、届きそうな気がした。




