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ハチとナナ
帰還者は普通なら何も感じないし何も考えないし何も行動しない。
それは道端に落ちている帰還者も、人間に拾われた帰還者も同じ事なんだけれども、高尾に色んな事を教えてもらったハチだけは、少しだけ他の帰還者とは違うのだ。
ハチはあまり感じられないしあまり考えられないしあまり行動しない。
けど、少しだけ感じるし、少しだけ考えられるし、少しだけ行動できるのだ。
帰還者は普通、帰還者を拾わない。
それはハチも同じ事で、いつもなら帰還者を拾おうとは思わないだろうし、これから先も帰還者を拾おうとは思わないだろう。
じゃあなんでこの時は女の子を拾おうと思ったのかというと、それは多分、女の子の黒い目と髪がとても綺麗だったからからだと思う。
ハチはキリストが生まれてから三千四百二十五年目の八月の八日に拾われた。
だからハチの名前はハチなのだ。
今日はキリストが生まれてから三千四百二十六年目の十一月の七日だ。
だからハチはこの女の子の名前はナナに決めた。