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三千四百二十六年目の十一月の七日
キリストが生まれてから三千四百二十六年目の十一月の七日。
その日、ハチは珍しい事に道端で一人の女の子を拾った。
とは言っても今の時代、道端で女の子を拾う事自体は別に珍しい事じゃない。
女の子も男の子も、今の時代では道端にいくらでも落ちているのだ。
宇宙人の宇宙船が毎日現れては人間をさらっていって、その代わりといっては何だけれども、帰還者を道端に捨てていく。
そして人間は寂しがり屋だから帰還者を拾って帰るのだ。
それは本当は違法な事だけれども、でも、それは機械の人間が決めた事だから、人間は誰も気にしていない。
だから、道端で女の子を拾う事自体は別に珍しい事じゃあないのだ。
じゃあ、なんでハチが女の子を拾った事がそんなに珍しいのかというと、それは、ハチも女の子と同じ、帰還者なのだ。