あさのたいよう?
クリスに泣きつかれたナナは戸惑っていた。
ナナに抱きついたクリスから、いろんな感情がナナに流れ込んでくる。
ナナはその感情をどう理解していいものか分からずに、戸惑っていたのだ……
悲しい気持ち。これは悲しい。
クリスは悲しいのだ。何でかわからないけれどもクリスは悲しいのだ。
苦しい気持ち。これは苦しい。
クリスは苦しいのだ。何でかわからないけれどもクリスは苦しいのだ。
つらい気持ち。これはつらい。
クリスはつらいのだ。何でかわからないけれどもクリスはつらいのだ。
怖い気持ち? そう、これは怖い
クリスは怖いのだ。なんでかわからないけれどもクリスは怖いのだ。
寂しい気持ち? そう、これは寂しい。
クリスは寂しいのだ。何でかわからないけれどもクリスは寂しいのだ。
許せない気持ち? そう、これは許せない。
クリスは許せないのだ。何でかわからないけれどもクリスはナナを許せないのだ。
いろんな感情が溢れてくる。全部が全部、嫌な感情。
ナナは分からない。どうしたらいいのか分からない。治めてあげたいけれども、どうしていいのか分からないのだ。
ナナはクリスを抱きしめて、そっと優しく頭を撫でた。
どうしていいか分からないから、ナナにはクリスの感情を治めてあげられないから、せめてクリスに安心して欲しいから、だからナナはクリスを抱きしめてそっと優しく頭を撫でたのだ。
ナナはクリスを抱きしめて、そっと優しく頭を撫で続けた。けれども、クリスは泣き止まなかった。
いつまでそうしていたのか、気がつくと空が明るくなってきた。
不意に強い光に照らされて、ナナはまぶしくて目を細めた。
何が光っているのか知りたくて、ナナは光っている方を見た。
そこで目に入ってきた光景に、ナナは息をするのを忘れそうになった。
朝の太陽? そう、これは朝の太陽。
キレイな黄色。
キレイな太陽。
キレイな青。
キレイな空。
キレイな白。
キレイな雲。
キレイな緑。
キレイな森。
キレイな茶色。
キレイな山。
キレイな水色。
キレイな湖。
……世界が色で満ちている。朝の太陽に照らされて世界は色で満ちている。
色が無い月の夜の世界はキレイ。
色で溢れている朝の太陽の世界もキレイ。
世界はキレイ。朝も、昼も、夜も、世界はいつも違う色で、世界はいつも違う音で、世界はいつも全部が違っている。
だから世界はキレイ。
ナナは世界の美しさに見とれていた。
ナナの胸の中からは、いつのまにかクリスの泣き声が消えていた。
そこでは、いつのまにかクリスもまた世界の美しさに見とれていた。
ナナとクリスの二人は、朝日が映し出す景色にいつまでも見とれていた。