クリスの憂鬱
クリスは落ち込んでいた。
せっかく決意を新たにしたというのに、その直後にこの雨だ。落ち込まない方が嘘だと思うのだ。
クリスはため息を吐いた。それにしても、あの子は何なのだろう。
クリスはこんなにも落ち込んでいるというのに、ナナはこの雨の中、何であんなにも楽しそうなのだろう?
ナナが雨の中で踊っているのを見ていたら、クリスはますます落ち込んできた。
なんだかこの世の中の全てのものから見放されているような気がしてきた。
ナナはあんなに楽しそうなのに、クリスはちっとも楽しくない。
なんだか不公平な気がして気が滅入る。
どうしてクリスには嫌な事ばかりが起きるのだろう?
何でナナはあんなにも楽しめるのだろう?
クリスはため息を吐いた。そんな事、考えたって分かるわけが無い。
いくら考えてもクリスはこの状況を楽しめないし、ナナはこの状況を楽しむだけだろう。
雨に濡れて身体が寒くなってきた。
クリスはお尻が濡れるのも構わずに地面に腰を下ろして両膝を手で抱いた。
寒いし、つらいし、地面は固いし、なんだか家がまた恋しくなってきた。
温かいシャワーとふかふかのベットが恋しい。
クリスは空を見た。
なんだか沼の底みたいな黒雲は、全然まだまだ晴れそうにも無い。
家に帰ってしまおうか?
家に帰るだけなら、この雨の中を歩いていってもそんなにつらそうじゃない。
いや、それは出来ない。
そんな事をしたらクリスは負ける事になるのだ。
別に誰が勝ちとか負けとかを決めるわけじゃないけれども、クリス自身が負けだと思ったらそれは負けなのだ。
クリスは負けたくない。
……けど、このままだとくじけてしまいそうだった。