第一部 高尾とハチ
「あなたは本当にその計画を実行に移す気なのか?」
「ああ、そうだ。これはもう決めた事だ」
「あなたは僕の話を聞いただろ? それなのに、あなたはあなたのエゴのためだけに、本当にそんな事をする気なのか?」
「確かに、君の言い分はわかる。私も君の意見はもっともだと思うし、できれば尊重したい。
しかし、だからといって君はあの根性無しどもの横暴を許しておく気なのか?
あの地表に住む哀れな同胞達をそのまま放置しておけというのか?
私にはそんな事はできない。
それに、私は単にアレの製作者の責任というだけではなく、一人の人間として、これ以上アレの横暴を許す事などできそうにはないのだよ」
「だったら、彼等はどうなるんだ!? 彼等はこの環境に生まれ、彼等なりのやり方で安定しているんだ。
それなのに、こちらの一方的な言い分で彼等の全てを変えてしまう権利が僕達にあるのか?
彼等なりの幸せを奪う権利が僕たちにあるのか?
君は、それが正しいと思うのか?」
「それは……確かに君の言い分が正しいのは認めよう。
そう、確かに、君の言い分はもっともなのだ。
彼等には自らの生活を全うする権利があるし、彼らが望むならばそれは阻害されるべきではない。
私達から見れば明らかに不当な状況に置かれているにも拘らず、それを自らが不幸と思わずに、ただ満たされているというならば尚のことだ。
だが、我々にはこの状況を正すべき大儀がある。
……確かに、もはや我々はこの星に用はない。
あの出来損ないどももクズなりに働いたようだし、褒美としてこのまま干渉を行わずに放置するというのも一つの手ではあった。
しかし、アレは明らかにやりすぎだ。
アレの行った事を正さないなど論外だ。
それは君だって理解できているはずだ?」
「それは……けど!!」
「まあ落ち着きたまえ。
アレの暴挙を許すことはできない。
とはいえ、君の意見は正しい。
正しいからこそ困ったものだ……さて、どうするべきか……
……そうだな。
では、こうしよう。
それは、彼等自身に決めさせるのだ。
弟よ、一つ賭けをするとしよう。
君と私で、非常に不遜な賭けを。
あの地表に住む人々の運命を賭けた賭けを……」
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