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第二部 クリスとナナ
「どうやら、賭けは私の勝ちのようだな」
「まだ、決まったわけじゃない」
「確かにまだ確定したわけではない。が、それも時間の問題というものだ。
しかし、君も甘い男だ。
自分が負けると分かりつつも彼を悩みから解放するとは。
私的には、あれは裏切りととられても仕方が無い行為だと思うが?」
「それは……そうかもしれない。
けれども、僕は彼に関わってしまった。
関わってしまった以上、僕には見放すような真似なんてできない」
「まあ、君らしいといえば君らしい。
君のその甘いところは君の短所だが、長所でもある。
それに、それは私には無い特徴だ。
だからこそ、君の意見には耳を傾ける価値があると私は考えているのだがね。
……さて、それでは出かけるとしよう」
「出かける?」
「そうだ。どうやらナノロイドが動き出しそうなのだ。
今までならそれも有りだったが、今回はケースが違う。
彼はもう完成しているのだから、ナノロイドの横暴を許すわけには行かない。
それに、ここまで働いてくれた君のお気に入りのもう一人の彼に、少しご褒美をあげようと思ってね……」