3話~同棲・救済~
「すごいね、ここ」
スレイ、こと神原聡の家は大きなマンションの一室だった。
いや、一室というと語弊がある。ワンフロアすべてだ。
しかも、私が見た事もないような高級マンションである。
―――聡がIT企業の社長なのは聞いていたけど、どれだけお金持ってるんだ…
「君が望むなら、このマンションを買いきってもいいけどね」
「いや、いいです。」
きっぱり断り、聡が住むフロアに着く。
聡に案内され、フロアの一室に入る。
「さて、ここが君の部屋だよ、好きに使っていいからね」
そう言われた室内は、私が住んでいたワンルームの倍ぐらいの広さがあった。
「家具とかは、使い慣れた物の方がいいかと思って、そのまま持ってきたけど」
「買い替えたかったら、言ってくれればすぐに変えるからね」
綺麗な部屋に対して、安物な私の家具がやけに浮いて見えて恥ずかしくなった。
「そうだ、寝室はこっちだから」
そう言われ、聡についていくと
大きなダブルベッドがあった。
「ねぇ、勘違いだったら別にいいんだけど、これ、一人で寝る用?」
「いや?僕と君二人のベッドだよ」
……悪気なく言われ頭を抱える
「あのさ、私達、ゲームでの付き合いは長いけど、実際に会ったのはほんの数週間前だよ?」
「それが?」
「まず!一緒に寝るのはまだ速い!」
「そう?」
「そうだよっ!?」
驚きながら言うと、聡は私の手を取って
「でも、君と離れると不安で僕は眠れないかもしれない。」
「はぁっ!?」
「君は僕が嫌い?」
「うっ、いや、そんな、ことは……」
(ないけど……)
言葉に詰まりながら、聡から目を逸らす、
しかし、聡に顎を掴まれ、目を合わさせられる。
「嫌いじゃないなら、問題はないよね?」
聡は笑いながらも、目は真剣だった。
「大丈夫、君が本当に嫌がることはしない。」
「でも、離さないから。」
そういって、抱き締められた。
「うっ……もうっ。」
私は何か言い返してやろうと思ったが、何も思い浮かばず
されるがままになっていた。
しばらく私を抱き締めてると、満足したのか聡は離してくれた。
「まぁ、君の言う通り、もう少しお互いを知ってから一緒に寝ようか」
そう言われ、私はほっとする。
「少しでも寂しいと思ったら、僕の所に来てくれていいからね?」
「行きません。」
私がきっぱりと断ると、聡は笑いながら
「ははっ、元の君に戻ったみたいでよかった、僕はそう言うところが好きだよ」
「う"っ」
よくもまぁ恥ずかしい言葉を普通に言えるなぁ、思わずキュンとして変な声が出た。
「こっちに来てくれ、見せたいものがあるんだ」
聡に付いて行くと、そこには最新鋭のデスクトップPCが用意されてた。
「おわぁ!最新モデルだぁ!」
私の給料2か月分ぐらいのPCが目の前に置いてある。
「喜んでくれたみたいでよかった、僕からのプレゼントだから好きに使ってくれ」
「いいのっ!?」
「もちろんさ」
そう言われ、私はPCの電源を入れて動作を確認する。
「起動はやっ!すごい!私がプレイするゲームほとんど入ってる!」
子供の用にはしゃぐ私に聡は後ろから抱きつき
「君の事はなんでも知ってるからね。」
と耳元で囁く。
「もうっ!いちいち抱きつかないでよっ!」
と言って、彼から逃げる。
「ごめんごめん、君と一緒に居られるのがうれしくて、つい、ね」
と悪気の無い顔で言ってくる。
「まったく……」
私は呆れながら、再度PCをいじりはじめた。
―――その後、一緒にゲームをしたりして時を過ごし、
夕飯時になり、色々とお世話になったので、
せめてものお返しに、私が料理を振舞うことになった。
「あぁ、彼女が作ってくれる初めての料理……幸せだ」
テーブルに座りながら恍惚の表情を浮かべて何かつぶやいてる。
「期待されるほど、私、料理上手くないからね。」
「大丈夫、君が作った物なら、例え炭だろうと、美味しいに決まっている」
「そこまで下手じゃないからっ!」
―――――――――――――――
聡の好みが分からなかったので、無難なメニューにした。
味噌汁に、ハンバーグ、肉じゃが。
THE男子が喜びそうな物をとりあえず作って並べてみた。
一応自炊をして生活してたので、これぐらいの料理なら作れる。
―――聡はなぜか、料理を並べても食べずに眺めている。
「どうしたの?早く食べないと冷めちゃうよ」
私がそう言うと聡はすごく悩むように唸りだし、
「いや、君の初めての手料理を、永遠に保存する方法は無いかと思って。」
「また作ってあげるから、さっさと食べなさい。」
「君はいいお嫁さんだな」
「まだ嫁じゃないんだが」
「まだ、ってことはいつかなってくれるんだね?」
私は味噌汁を啜りながら、しまった、と思い。
「……検討しときます。」
私は顔を赤くしながら、そう返すので精一杯だった。
食事を終え、再び一緒にゲームをして暇をつぶした後、
それぞれの寝室に行き、私は一人、布団に潜り込んだ。
(今日は色々あったなぁ)
聡の強引さには困ったけど、正直、嫌ではなかった。
(ずっと、一人で仕事してたから、誰かに必要とされてると思うと、安心する。)
私はそう思うと、少しだけ胸が暖かくなり、その心地よさを抱きながら眠りについた。
――――――――――――
あれ?ここは……
見覚えのある部屋
ここは、そうだ、私の職場だ。
聞きなれたコール音
社長の、聞きなれた怒声。
怒られた上司が、私にやつあたりしてくる。
(あぁ、そっか、そうだよね……ここが私の居場所だ)
勘違いしていた、聡と一緒に居て、少しでも幸せを感じてしまった。
そう思い、私は上司にいつも通り頭を下げようとした―――――
「――リ!アカリッ!」
私は揺さぶられ、ハッ!と目を覚ます。
「よかった……うなされてたから、心配だったんだ。」
目の前には、聡の心配そうな顔
―――夢、だったんだ。
そう思い、安堵した瞬間、涙が溢れた。
「アカリッ!?」
聡は慌てて、私を抱き寄せ背中をさすってくれる
「……ごめん」
何に対してなのかわからないけど、なんとなく、謝罪の言葉が漏れた。
「いいんだ、ここには君を傷つける者はいないから。」
「安心して、ね?」
「……うん……」
私はそのまま、聡の胸の中に、身を預けた。
しばらくすると、気持ちが落ち着き、
「夜中に、ごめんね、もう大丈夫だから」
と言って聡から離れる。
「本当に大丈夫?」
「うん、いや……」
「今日だけ、一緒に寝てもらっても、いいかな?」
私が目を伏せながらそう言うと、
聡は私の頭を抱き寄せて布団に潜り込んだ。
「今日だけ?」
布団の中で、聡が小さく笑う。
「一生でもいいけど?」
私は顔を赤くして、
「……ばか」
そう言い返し、彼の腕の中で、眠りについた。
これにて完結です。
読んでいただきありがとうございます!
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以下お目汚し
これを書いたのが2月14日の朝、バレンタイン!そうだ恋愛物を書いてみようぜ!
と謎の衝動が沸き、出来上がりました。
他の作品もこんな感じのテンションで書いていますので、
そちらも見ていただけると泣いて喜びます(作者が)
~追記~
好評につき連載化します!
連載版の初投稿日時は私の活動報告にかいてありますので、見に来ていただけるとうれしいです!




