よくある転生、だがしかし
(えーっと、どこだろう?ここは。)
ユウトは、突然彼を包んだ白い世界に困惑していた。
脳内には、神とやらの声が響く。
ーユウト様、聞こえていますか?まず結論から言うと、不運なことに、あなたは死んでしまいました。ー
(えっ?ちょっと待って?死んじゃったの?なんで?)
ーよくある…いや、よくあってはダメですが、交通事故です。ー
(え?)
ーですが、不幸中の幸いと言いましょうか。あなたには、積み上げてきた徳があります。ー
(待って待って、交通事故?それに徳?)
ー混乱するのも無理はありません。ですが、全て事実です。そして、積み上げられた徳を用いて、転生を行うことができます。ー
(転生ってあの、異世界に送られる…?)
ーその転生です。そして、一つだけ特典を設けられます。ー
(まだするって決まったわけでは…)
ーあなたが望むならば、このまま魂ごと消滅して、無に還すことも出来ます。ですが、それは嫌ではないですか?ー
(確かに、このまま消えるのは嫌だ。けど…)
ーあなたがやり残したこと、楽しめなかったことをもう一度する機会です。もう一度、新しい生を持って過ごせるのですよ?と言うか、あなたほどの善人の魂を無に還すのは私が怒られます。ー
(……分かったよ、転生する。)
ーそれでは、あなたの願いを一つどうぞ。ー
(願いと言われても…。僕はただ平和に解決できればなんでも。)
ー平和に、暴力を振るわずに解決できる力をお望みですね?それでは、転生を開始いたします。第二の人生、お楽しみください。ー
(ん…?なんか、あらぬ誤解を生んだ気がす──
彼の意識と視界は、次の瞬間には、森の中にあった。
「うおっ!ほんとに、異世界に来たんだ…」
彼の第二の人生の始まりであった。
◇◇◇
僕は慈善優斗と言います。
普通の17歳の高校生でした。
困っている人が居たらなりふり構わず走り出してしまう様な人です。
自覚あるんだ…と思うかもしれませんが、救いたいがあまり危険な事にも平気で飛び込むので、もう少し自覚を持て!みたいにお叱りを散々受けてきたんですよね…
えっと、女神?様も言っていた様に、交通事故に遭って異世界に転生したらしいです。
それで、今森の中です。
そういえば、女神様が間際に力がどうとか言ってた気がするんだけど…
まあ、今は気にすることではないか。
うーん、そうだなぁ。
ここで暮らすわけにもいかないし…
町とかあるかな?
とりあえず進むか。
「はぁ…はぁ…はぁ…!」
何の声だ?
一体何処から…
「…あ!すみません、そこのお方!追われてて!助けてくだ──」
「あ、どうかされましたか?」
困っているなら、助けなきゃな。
「ヒッ!こ、来ないで!!」
「え?あ、ちょっと…」
走っていってしまった。
おかしい。なるべく柔らかく接したはずなんだが…
第一印象で嫌われたってこと…?
ちょっとそれは…ショックだな…
ていうか、何から逃げて来たんだ?
嫌われたとしても力になりたいな。
「む?こんな辺境に人か?」
何だ次は?
追いかける様にもう三人来たな。
…って言うか、武器持ってるじゃん!
「あ、あなた達は、どうかされましたか?」
ちょっと身構えて力んだな…
うう、第一印象がぁ…
「あ…あ…あ、あなた、様は…!」
うぇ!?
ちょ、ちょっとこの人達、漏らしちゃったよ!
「えっと、本当に大丈夫ですか!?何かあったのでは…」
「く、来るぞ…!に、逃げ──!」
あれぇ?
先頭の人はなんか泡吹き始めたし、他の人は逃げちゃったよ!?
僕ってそんなに印象悪いのか?
はっ、もしかしてめっちゃ臭い!?
「あの、すみません!臭かったら遠慮なく言ってください!洗いたいのですが、近くに町はありますか?」
「あ…ああ、い、いえそそそそんなことは無くですね、それより町でしたらあああちらの方角を真っ直ぐ…」
「ありがとうございます!ご協力感謝します!では、お元気で!」
あんな反応をされるくらいだ。
異世界といえどお風呂くらいあるはずだ。
今すぐ洗ってしまおう。
「……何だったのだ、あの御方は…ま、まるで魔王の様な…いや、それ以上ではないか!?…はっ、ひ、姫ーー!何処へ行かれたのですかーーー!」
◇◇◇
お、町が見えたな!
大体丸一日歩いたぞ…
あのおじさん、ここまで長いなら言ってくれれば良かったのに。
というか、本当に異世界に来たんだな。
町のはずなのに城壁みたいなのあるし。
門はここか。
「…ひぇ!あ…ああ!」
「終わりだ…この世の終わりだ…!」
「か、神よ…」
「た、助けっ!」
何だ何だ!?
何で僕を中心に皆んな倒れていくんだよ?
「あの!皆さん大丈夫ですか?何処か悪いのですか?もしかして流行りの病とかでしょうか?」
僕はそうやって皆んなに声をかけたのだが…
「…あ……あ……」
「ガハッ…」
気絶するだけなんだけど?
そんなにひどいか僕の体臭は!?
「うっ、ぐっ…!この威圧感…失礼を承知でお聞きしましょう…!貴方様は…何者なのですか!」
うわぁ。
この人すごい筋肉だ。
装備も素人目で見ても凄い豪華だ。
というか、何者と言われましても。
「しがない高校生です。あ、この世界高校生は通じないのか…?」
「こう…こうせい…?それが…貴方様の…!ぐはっ…」
あ、ちょっと!
そんな、このマッチョさんまで異臭の餌食に!
もう構ってられない!
「皆さん!お風呂がどこにあるか分かりますかーーー?」
「よ、浴場でしたらあちらですが…しかし今は…!」
「いえいえ、ありがとうございます!マッチョさんの…付き添いの人!では、お元気で!」
僕は医者でもないから気絶させてしまった人たちは治せない。
だったら元凶の僕を洗浄しなくては…!
◇◇◇
ふぅ。さっぱりしたぁ!
浴場を墓にしてしまった時はめっちゃ焦ったよー。
「し、失礼。少し連行させては頂けないだろうか。」
え、僕もしかして悪いことを?
いや、めっちゃ心当たりある。
手当たり次第気絶させてしまった。
というか…
「あの、大丈夫ですか?足が随分と震えている様ですが…腰ですか?膝ですか?肩を貸しましょうか?」
「い、いえ、結構。では、ついて来てほしい。」
「分かりました!それであなたが助かるのならば!」
「か、感謝する!マスターがお待ちしている。」
そういった形で、僕はこの…
冒険者ギルド…?なるものにお邪魔することになった。
◇◇◇
「うむ…なんという覇気だ…」
とか言うこの人、ごっついな。
「あの、あなたは…?」
「これは、失礼した。このギルドのマスターを務める、ガルダースと申す。貴殿の名も伺いたい。」
「僕は慈善優斗と言います。あ、優斗慈善かな?」
「ユウト殿、だな。これまた失礼にはなるのだが、それを抑えてはくれぬだろうか?」
「はい?どれです?」
「いや、分かっておらぬ訳ではなかろう。その威圧のことである。」
「…威圧?」
「…まさか、自覚がないと申すか。」
「は、はい。すみません、何も分からないです。」
「恐らくはスキルの類いか、固有の異能か…それらならば、解除を念じるだけでよかろう。」
「は、はあ。やってみます。」
スキル?異能?
よくわからないが…
解除!
「…はぁ…はぁ……はぁ…」
「あの、大丈夫ですか?息切れしてますけれど。」
「ふ、貴殿にそれを言われるか。こう見えて結構な痩せ我慢をしていたのだ。しかし自覚が無いというのは問題となろう。ステータスには載っておらぬのか?」
「ステータスですか。なるほど…ステータス、オープン!…なーんて、そんなことが──」
ー個体名ユウト・ジゼンの意思を確認。ー
え?本当に?
…って、これは!
――――――――――――
名称 ユウト・ジゼン
種族 人間
職業 平民
称号 女神の加護 異世界の転生者 心優しき者
基礎ステータス
レベル 1
体力 F 12/13
魔力 F 0/0
物攻 F 3
物防 F 5
魔攻 F 0
魔防 F 1
速度 F 4
技術 F 9
精神 E 12
知性 C 50
幸運 F 4
[魔法] 該当なし
[スキル]
《威圧・神》SSS Lv.MAX 任意発動 消費魔力:0
相手を威圧し、無力化する。
何人たりとも抗うことはできない。
使用者の心情、また相手の格により効果が左右される。
[異能] 該当なし
[耐性] 該当なし
――――――――――――
へー。
なるほど。なんかFが並んでるから…弱そうなのはわかる。
だけど、この《威圧・神》って!
今までのは全部これのせいか!
あ、そういえば…
女神: 平和に、暴力を振るわずに解決できる力をお望みですね?
ああ、誤解されてると思ったら…
確かに暴力は振るわれてないけどさ…
「確認は済んだか?あれ程の威圧を放てるのだ。さぞ強いことなのだろう。」
「あの、質問なんですけど、スキル名の横につく…神?とかいうのは何ですか?」
「ふむ…神、というのは聞いたことがないが…知らないならば教えよう。基本、スキルには等級があってだな。
普通であれば、
初級
中級
上級
超級
熟練級
達人級
極致級
…という進化を進むのだ。しかし神というならば、これらよりも上の等級なのかもな。」
「はあ、参考になります。もう一ついいですか?この基礎ステータスにあるFとかCというのは何ですか?」
「それはステータスの成長率だな。SS~Fまでランクがあり、レベルが一つ上がる時にもSSならば100以上は必ず上昇し、Fならば10以下と言ったところか。体力と魔力は例外でな。体力は他ステータスの上昇値×5、魔力は×2といったところだな。」
「最後に、スキル名の横にもSとかあるんですけど、これは?」
「スキル自体のランクだな。これもSS~Fまである。上に行くほどより強力な効果になるという単純な指標だ。最も、熟練度を高めればFがSSを下す事もあるがな。」
SSまで?
なんかSSSなんですが…
「…あの、失礼でなければ、あなたのステータスを拝見させていただくことは…」
「ふむ、いいだろう。元より弱者は強者に従うまで。あの威圧を放てるだけでも、貴殿が格上であることは重々承知よ。」
では、失礼します…
――――――――――――
名称 ガルダース
種族 超人
職業 大剣暴君
称号 竜殺しの英雄 (竜と対峙した時、全ステータス1.5倍)
基礎ステータス
レベル 127 ☆
体力 A 22,118/45,118
魔力 D 6,025/6,025
物攻 S 11,726
物防 S 10,990
魔攻 C 4,328
魔防 D 3,645
速度 E 1,473
技術 A 9,051
精神 A 8,214
知性 C 5,167
幸運 A 10,002
[魔法]
→《炎魔術・上》Lv.5 任意発動
[スキル]
→《大剣術・極致》E Lv.3 常時発動
大剣を手足のように扱える。
→《山穿撃・達人》S Lv.9 任意発動 消費魔力:1,500
山を穿つ程の一撃を振り下ろしで打つ。
→《魔剛解放・超》A Lv.4 任意発動 消費魔力:変動
毎秒最大魔力量の(0.5%)の魔力を消費する代わり、全ステータスを(1.2倍)上昇させる。
→《爆心剛体・熟練》A Lv.7 任意発動 消費体力:変動
望んで消費した分の体力だけ、次の一撃の威力が上昇する。
現在、最大体力量(3%)ごとに威力(1.7%)上昇。
etc…
[異能]
→《竜人へと至る道》常時発動
竜討伐数 12/100 体
物攻+(5000),技術+(1000)
[耐性]
熱 極致
寒 熟練
風 超
電 超
毒 上
――――――――――――
は、はい?
なにこれ。
え、僕なに?
僕はなんなの?
いやこの人がおかしいの?
スキルとか多すぎて見切れてるし…
主要な四つが表示されているのか?
ていうか、体力が減ってないかな。
あ、威圧のせい…?
「貴殿にとっては弱く見えるであろうが、一応はSS級の冒険者としてもやっているのだ。まあ、一撃特化型ではあるが…な。」
「え?いや、え?これより強いって…ははは…あなたはなぜ、こんな所でギルドマスターを…?」
「ははは、生まれ故郷だからよ。これより立派な理由があるかね?」
「いいえ、素敵です。」
「さて、そろそろ話を戻して良いか?貴殿をなぜここに呼んだか、という点だ。」
そうだった。
ガルダースさん、衝撃すぎるよ…
「貴殿には、是非冒険者になってもらいたいのだ。」
「冒険者…?僕が?で、出来ますかね?」
「はははは!貴殿がなにを言う。威圧というE級スキルで体力を半分も持っていく程の強者なのだ。心配など不要だ。」
威圧って基本E級なんですね…
てかこれあれだ。
女神様の時と同じだ。
決定事項だったやつだ。
「…はい、やりますよ。」
何気に第二の人生の生き方を変えてしまう大きな決断だったよな?
う〜、何で僕は断れないんだ〜!
「うむ、貴殿が加われば、この町はさらに安泰よ!初めは貴殿もF級からの始まりだが、よろしいな?」
「はい、もう分かりました。」
…はは。
仕方ない。
冒険者になったからには、救える命は救っていく。
やるか。
この世界でも、僕は変わらず生きていこう。
「…えっと、本音は…?」
「バレていたか。貴殿という化け物を管理下に置いておきたかったのだ。なにをしでかすかわからんからなあ。」
「確かに、そうですね。」
はは。
威圧無双、始まり。




