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その鼠はゴリラに恋をする  作者: 花花花花子
9/11

9話目

 まあ、さまざまなハプニングを乗り越え、ようやく決闘に臨んだのが、もう子の刻前。

あの後、よくよく考えれば決闘には見届け人がいるということで、椿さんを呼び、また私たちは向かいあっている。

ということで、問題。

今さらだけど、私は刀を使えるのか。

ええ、ええ。これは、昨日の夜思うべきことですよ。さっき見届け人の有無に気付いたなら、武器についても考えておくべきだったのに、私の馬鹿!

今、冷や汗で背中びっしょびしょ。

剣の持ち方は、ゴリラを真似して構えてみたけど、しっくりこない。

改めて、今の状況が真剣にやばい気がする。

でさ。なんで、ゴリラは真剣で戦おうとしてるの?

竹刀でいいじゃない!いや、ほんと今更だけど!ああ、どうりで椿さんが変な顔をしているわけだ!てかゴリラ!真剣が決闘の基本なのはお前だけだ!

ああ、でも、竹刀にしようって言いたくない!私の自尊心(プライド)が許さない。

その瞬間、ゴリラがすごい速さで一歩踏み込み、刀を振り下ろす。

「っ!」

それを間一髪で避ける。そして叫ぶ。

「し、竹刀にしましょう!」

自尊心(プライド)?何それ美味しいの?

ゴリラがピタリと止まる。

「…竹刀?」

そしてこちらを向き、ニヤリと笑った。

「ビビってんのか?」

「叩きのめしてやりますよ」

自尊心(プライド)を捨てたい。これが私の切実な問題。

さて。真面目にどうしよう。てか、さっきから妙に汗が止まらない。

そう思っていると、椿さんが言った。


「全く、あなた達、そんなことやっている間に、今、子の刻になりましたよ」


その瞬間。

何かが変わった。


誰か別の人格が乗り移ったかのように。


まるで。


……()()()()()()()()()()()()


「…おい?」

ゴリラも異変に気づいたらしいが、今はそれどころじゃない。

この溢れる万能感。

全てを支配できるような研ぎ澄まされた感覚。

それに身を委ねたい。

ああでも、とりあえず今は。

あいつを倒して。

あの方のもとへ行かなくては。

ゆらりと体が動く。

構えていた刀を鞘に直す。

「…戦わない…ってわけでもなさそうだな」

私の溢れ出る殺気に気付いたのか、目の色が変わる篝火龍。

「ようやく本性を現したか。刀が使えないんじゃないかって騙されるところだったぜ」

ペロリと唇を湿らし、歯を剥き出して笑う。

…早く倒さないと。

早く、あの方のもとへ。

全てを早く。

………思い出さないと。

何故か少し泣きそうになった。

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