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その鼠はゴリラに恋をする  作者: 花花花花子
12/12

12話目

その話によると、私は決闘の最中、急に様子が変わったそうだ。戦闘未経験の素人にような動きから、突如、達人のような動きになったらしい。

…なんで。全く覚えてない。刀なんて使えるはずないのに。

ただでさえ自分が誰だかわからないのに、更に得体が知れない自分がすごく怖くて、知らず知らずにうちに、体が震える。

と、急に、ゴリラの話が止まった。

どうしたのだろうと顔を上げた私のほうを見て、少し逡巡した後、また話し始める。その行動に震えていた私を気遣うような雰囲気を感じて、さっきまでの恐怖が少し薄れた気がした。

「それで…」

知らず知らずのうちに、ゴクリと唾を飲み込む。

「急に倒れた」

……。

…………。

………………。

「………は?」

思わずあげた声を聞いて、こちらを向いたゴリラは繰り返す。

「お前が急に倒れた。それだけだ」

……ああ、なるほど。私はゴリラを殺そうとして、それで倒れた、と。

「ってそんな訳あるかあ!説明下手にも程がある!なんかあるでしょ、その間!」

「だから何もなかったんだよ!俺を切りつけようとして、バタリって倒れたんだよ!急に!」

「バタリとはなんだこの野郎!んな訳あるか!」

興奮しすぎて言葉が乱れ始めた私と、説明が要領を得ないゴリラを止めようと、椿さんが間に入る。

「まあまあ落ち着いてください、二人とも。…なとりさん、納得いかないかもしれませんが、龍の言っていることは事実です。龍を切りつけようとしたなとりさんは何故か、急に気を失ったんです」

…そんな、ことが、あってたまるか。ーーでも、椿さんがいうなら。

「…そうだったんですか」

「おい。なんで俺があれだけ言っても信じようとしなかったくせに、郁が言ったらすぐ信じるんだよ」

これまでの行いに決まってるでしょ。

私とゴリラが睨み合っている間、椿さんがいつもの笑みを消して真剣な顔で言った。

「ただ…気を失う前の様子が少々おかしかったんです」

「…む、おかしいとはどういうことだ、郁人」

「先程龍が述べたようになとりさんは別人のようでした。刀の使い方や立ち回りは隊長クラスと遜色なく、龍と短時間ではありますが互角に打ち合っていたことが彼女の刀の腕を示すというものです」

「…ふうむ、龍と互角か」

「はい。ただ、打ち合っていた時間自体は短いものでしたので、もう一度戦えばもっとはっきりすると思われます。何故か、彼女は決闘の最中倒れてしまったので」

椿さんと九条さんの会話から、なんかやばいことをやってしまっているということは充分伝わってきたのだが、急に倒れたのは何故だろう。体力が尽きてしまったのだろうか。

「いえ、体力が尽きたため倒れたといった感じではありませんでした。龍と打ち合いのさい、隙をついて一撃を入れようとしたなとりさんは突如体制を崩し、頭を抱えて滂沱の涙を流しながら、うめき出したのです。明らかに様子がおかしく私たちの声も聞こえないようでした」

やばいやばいやばい奴だ私。冗談抜きでほんとにやばい。挙動が完全に最終決戦のラスボス。

「何かを呟いていたようですが、それは私には聞こえませんでした。龍は何か聞きましたか」

「………、いや、特に何も」

どうしよう、右手が疼き出したりするのかな?ーーいや、やっぱり左眼かも。邪眼に目覚めるのかも!

「お前は落ち着け」

イタッ、ちょっと!

「病み上がりの幼気な少女を殴らないでもらえますか!」

「誰が病み上がりの幼気な少女だ、起きて早々頭突きしてきたやつのせりふじゃねえよ!」

それはそれ、これはこれよ。

「落ち着きなさい、二人とも。なとりが病み上がりなのは事実だろう、あまり興奮させてはよくない」

九条さんがため息を吐きながらそう言った。

「とにかく大体は理解した。これ以上はなとりもキツイだろう、ゆっくり休むと良い」

そして立ち上がりながら、両脇にいた二人も促して部屋を出ていく。それを見送っていると、

「あ、そうそう。基本的にうちは勝手な私闘を禁止しておる。なとりが知らなかったとはいえ、今回の件はそのまま見過ごすことはできん。沙汰は追って知らせよう」

振り返りざまにそう宣言した。

な、なんですと!決闘って駄目だったの!?

てか言えよ!と思ってゴリラの方を向くと気まずそうに顔を背けられた。覚えてなかったんだなちくしょー!というか頭に血が昇って気づかなかったに違いないよ!ちっくしょー!

そのまま去っていく三人を横目に頭を抱えた。

入団早々規則破りって、問題児すぎない?

いや、隊長に喧嘩売った時点で問題児扱いは免れないよな。

ちっっくしょーー!!

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