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悪役令嬢は優雅に微笑む  作者: 篠原 皐月
第3章 悪役令嬢の真実

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(5)三公爵家の意思統一

「せっかくですので、単刀直入にお伺いします。ローガルド公爵家とシェーグレン公爵家の意向は、どうなっておりますの?」

 早速探りを入れてみたマグダレーナだったが、それに対する答えは明確なものだった。


「我が家は表向きゼクター王子派だが、積極的には支持するつもりはない」

「付き合いでユージン王子派だが、我が家も乗り換えるのに躊躇はないな」

「そうでしょうね。そうでなければ、今更エルネスト殿下の周囲を探ったりしないでしょうし」

「逆に私達も聞かせてもらいたいが」

「キャレイド公爵家の意向はどうなっている?」

「エルネスト殿下です」

 周囲に人影がないのを注意深く観察しながらの台詞ではあったが、予想以上にマグダレーナが断言してきたことで、彼らは思わず懸念の表情を浮かべた。


「そんなにはっきり言ってしまって良いのかい?」

「誰彼構わず口外しても構いませんが?」

 皮肉っぽく彼女が口にした内容を聞いた二人は、仮にそんなことをした日には家ごとどんな報復を受けるか分からないくらいは認識できており、苦笑いで首を振った。


「降参。君を敵に回す気はないよ」

「私も口外する気はない。因みに、どこまで決まっている話なんだ?」

「陛下と宰相閣下と重臣の主立った方は、そのつもりで準備をしています。これを聞いた以上、お二方も腹を括っておいてください」

「…………」

 ディグレスの問いかけに、マグダレーナはあっさりと内情を暴露した。それを耳にしたイムランとディグレスは、揃って表情を消して固まる。そんな二人を見て、マグダレーナが不審そうに声をかけた。


「お二人とも、どうかしましたか?」

 そこで二人は想像以上に国の上層部で話が進んでいたことに動揺しつつも、何とか気を取り直して声を絞り出した。


「聞くんじゃなかった……」

「それとなく匂わせて貰うだけで良かったのだが……」

「お二方に打ち明けたことは、早速家に伝えておきます。万が一、事が露見して騒ぎになったら両公爵家に責任を取って貰いますので、そのおつもりで」

「容赦がないな」

「勘弁してくれ」

 呻くように言葉を返してきた二人に、マグダレーナは笑いを堪える口調で尋ねる。


「そんなことを仰っていても、両家ともとっくにエルネスト殿下を推す方に傾いておられたのでしょう?」

「まあ……、確かにそうだな」

「さすがに、上の二人ではな。良いように担ぎ上げられて、混乱の元だ」

「とりあえず、現当主ではない私達が好き勝手に話していても、仕方がありません。お父上達に、私の父と密かに連絡を取っていただきたいのですが」

 そこで現実的な話を持ち出された途端、イムランとディグレスは真顔になった。


「それは構わないが、どのように? 普通に手紙のやり取りをしても良いが、常に交流がない家同士だとそれだけで使用人達に怪しまれる可能性があるからな」

「我が家の使用人に、他の家からの密偵が入り込んでいるとは思いたくないが、慎重に進めたいな」

「そこは兄が出入りの商会や行きつけの店などを使って、どうとでもするでしょう。我が家からの連絡をお待ちいただけるよう、伝えていただけるだけで大丈夫です」

「分かった。父上にはそのように伝えておく」

「勿論、表面上はいままでの王子派を装いながら、だな」

「ええ。よろしくお願いします」

 そこで話が纏まったところで、ディグレスが真剣な面持ちで問いを発する。


「ところで、どうしてエルネスト殿下を推すのか、聞いても良いだろうか?」

「そうだよな。せっかく水面下で手を組むのが決まったのだから、教えて欲しいが」

「消去法です」

 打てば響くように即答され、ディグレスはがっくりと肩を落とした。


「……そこまで断言しなくとも」

「気持ちは分かるが」

「逆にお伺いします。あのエルネスト殿下に、進んで推したくなる要素がありますか?」

「いや、まあ……、消去法だろうな」

「否定できない……」

 大真面目にマグダレーナから問い返された二人は、微妙に視線を逸らしながら曖昧に頷く。それから真顔での会話が続いた。


「それから当のエルネスト殿下は、自分が後継者に内定したことは知っているのか?」

「知っていて、素直に即位する気があるなら、周囲から咎められるような行為を進んでしないと思うのだが」

「そうなると、本人は未だに知らないということになるよな? 更に、実際に立太子される直前まで内密にする予定とみた」

「だから、その前に殿下の粗が出ないように、君が水面下でフォローしている。それは上の方々の意向と一致している、そう思って良いのかな?」

「お二人の理解が早い上に状況把握も正確で、大変助かります」

 本心から思いながら、マグダレーナは正直な感想を口にした。それを見た二人が、溜め息を吐いて話を続ける。


「次代が内定したものの、安定した舵取りは当初は難しいだろうな」

「そうだな。側近達が苦労しそうだ。しっかり王家と国政を支えて貰わないと」

 そこでマグダレーナは、冷静にあることを指摘した。


「そんな他人事のような口ぶりで良いのですか? 殿下と同年代のあなた達は、揃って次期公爵家当主ですのよ? それにエルネスト殿下を推すと決めたからには、最後までしっかり後見していただかないといけません。その辺りをきちんとお分かりですよね?」

「…………」

 そこで二人は無言のまま、微妙な面持ちになった。そんな彼らに向かって、マグダレーナは笑顔で話を締めくくる。 


「取りあえず、今日の所はこれで良いでしょう。また分からない所があれば、その都度お教えしますわ」

「今日はありがとう。良く分かった」

「これからも何かあったらよろしく」

 そこで何事もなかったかのように三人は荷物を纏めて席を立ち、前後して自習室を後にした。


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