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悪役令嬢は優雅に微笑む  作者: 篠原 皐月
第2章 予想外の展開

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(31)久々の再会

 クレランス学園での波乱含みの初年度が終了し、マグダレーナは学年末休暇に入ると同時に公爵邸に戻った。しかしゆっくり身体と心を休める間もなく、早々にリロイと共にテオドールの屋敷に出向くこととなった。


「ご無沙汰しております、大叔父様。本日はお招き、ありがとうございます」

 正面玄関で出迎えたテオドールに色々と言いたいことはあったものの、マグダレーナは年長者に対しての礼を失することなく挨拶した。それに対し、テオドールも表面的には穏やかに声をかける。


「ああ、久しいなマグダレーナ。相変わらず、元気そうでなによりだ」

「誠に申し訳ありません。体調は万全ですが、生憎と機嫌は最低です」

「お前に愛想を振りまいて貰いたいなどとは夢にも思っていないから、その辺りは心配無用だ」

「そうでございますか」

 思わず本音を吐露してしまったマグダレーナだったが、テオドールは平然と言葉を返した。そんな二人の横でリロイとモニカが、一見和やかに言葉を交わす。


「大叔母様もご壮健でなによりです」

「ありがとう、リロイ。ところで、そろそろ結婚相手を紹介してくれるのよね?」

「はい。彼女もクレランス学園を卒業しましたし、電光石火で諸々を進めるつもりです」

「あなたのことだから何事も漏らさず進めていくと思うけど、あまりお嫁さんに気苦労をかけさせるものではなくてよ? 悪い事は言わないから、うちの人程度までに留めておきなさい」

「肝に銘じておきます」

 大真面目に忠告してくる老婦人に、リロイは苦笑の表情で頷いた。それを耳にしたテオドールが、心外とばかりに口を挟んでくる。


「おいおい、モニカ。酷い言われようだな。これ(リロイ)と比べたら、私は遙かに善人で正直者だと思うのだが?」

 しかし、彼と長年連れ添った妻の言葉は辛辣だった。


「タチが悪い人間は、似たり寄ったりな事を申しますもの。私からすれば、あなたもリロイも陛下も同類ですわ」

「大叔父上と陛下と一括りですか……」

「大叔母様……、これまでのご苦労をお察しします」

 キッパリと断言された台詞を聞いて、リロイとマグダレーナ揃って遠い目をしてしまった。そんな二人を苦笑いしながら眺めたモニカは、優しく声をかける。


「無駄話はこれくらいにしましょうか。そろそろ陛下がいらっしゃる時間ですから、二人とも応接間に入って頂戴」

「はい」

「お邪魔します」

 そこで気持ちを切り替えた二人は、テオドール達と共に応接室に向かった。そしてソファーに落ち着くと、モニカがお茶の準備のため席を外す。室内に三人だけ残った状態で、リロイが呆れ気味に口を開いた。


「今更ですが、幾ら人目をはばかる会談だからと言って、良く陛下が一臣下の家に秘密裏に顔を出せますね」

 その問いかけに、テオドールが素っ気なく言葉を返す。


「公には、王宮から出ていないことになっているからな」

「はい?」

「これまでも秘密の地下通路を使って、王宮に隣接している某屋敷に出て、そこから変装した上で単身騎馬でこちらを何度も訪問している。『奥方の手料理が食べたくてな』などといけしゃあしゃあと口にして押しかけては、『お口に合ったのなら嬉しいですわ』と、今ではモニカも慣れたものだ」

「…………」

 (たった今、何やら聞き捨てならない内容を耳にした気がするのだけど?)

 思わず隣に座るリロイに視線を向けると、彼も同様に思ったのかマグダレーナに視線を向けていた。そして何秒か兄妹で見つめ合った後、揃ってテオドールに向き直る。


「護衛は?」

「単身と言ったと思うが」

「あの、それって色々な意味で問題が」

「気にするなら、そもそも出て来ない」

「そうですわね……」

 どこまで傍迷惑な人なんだと、二人は改めて頭を抱えたくなった。するとここでノックの音が響き、ドアを開けながらモニカが声をかけてくる。


「あなた、リロイ、マグダレーナ。陛下がいらっしゃいました」

「やあ、邪魔するぞ。モニカ、すまんが茶を一杯貰えるか? 少々喉が渇いた」

「すぐにご用意しますのでお待ちください」

 妻に続き、遠慮など欠片も見せずにレイノルが入室してきたことで、テオドールは苦々しい顔つきになった。しかし重臣のそのような表情などは見慣れたものだったらしく、レイノルは微塵も気にせずにマグダレーナに声をかけてきた。


「あの祝賀会以来だな、マグダレーナ。学年末の試験でも、堂々学年一位に輝いたと耳にしている。キャレイド公爵も鼻が高いだろう」

 さすがに座ったまま出迎えるわけにはいかず、リロイとマグダレーナはすぐさま立ち上がって一礼した。


「恐れ入ります。ですが父は、娘の学業成績で一喜一憂するような人間ではございません。私の人間的成長が認められてこそ、喜んで貰えるものと考えております」

「なるほど。確かにそうかもしれんな」

「陛下、こちらにお座りください」

「分かった」

 促されるままレイノルはテオドールの隣に落ち着き、他の三人もソファーに座り直す。戻ってきたモニカがお茶をレイノルの前に置き、再び廊下に姿を消した。そして人払いをして四人だけになった室内で、レイノルが話の口火を切る。


「それではマグダレーナ。一年間クレランス学園で三人の王子達を観察した上での、お前の判断を聞きたい。次期国王として、三人のうち誰が相応しいか。また三人以外に相応しいと思われる人間が存在するのか。遠慮無く言ってみろ」

「分かりました。それでは私の意見を申し上げます」

 真正面に座る国王を真っ向から見据えながら、マグダレーナは口を開いた。



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