プロローグ、あるいはエピローグ:僕のための僕の物語
僕はこの物語が今ここにあることにとても安堵している。
この物語は、僕のこの三年間の文芸部での活動の集大成だ。最後の文化祭というこの晴れの日にこの物語を間に合わせることができて本当に良かったと思っている。
中学一年生の終わりから今年の夏休みの終わりまでの出来事を僕がこうして小説という形で作品にしたのは、あの年の春に電子の海で出会った彼らのことを忘れたくなかったからだ。直接会ったことはなかったけれど、彼らが確かに存在したことの証明を残しておきたかったからだ。淡くて脆くて壊れやすい繋がりだったけれど、あの日々は今でも僕の中できらきらと光を放っている。
彼らとの記憶を辿ることは、僕にとって痛みを伴う行為でもあった。特にこの夏休みの終わりの朧げな記憶を掘り起こそうとする度に、何度も筆が止まった。それでも、この物語を完成させることができたのは”彼女”の協力によるものが大きい。”彼女”もよくもまあ、僕の無茶なお願いにここまで付き合ってくれたものだと思う。この物語は僕の想像で補完した部分も多々あるが、意外とまめな”彼女”の性格には幾度となく救われた。
そもそも、彼らに出会うことがなければ、僕がこうして筆を執ることもなかっただろう。こうして作品を形にするために力を貸してくれた人たち――殊更に”彼女”に、そしてあの出会いに僕は感謝している。
これは僕による、僕のための僕の物語だ。僕が体験してきた濃密で大切な時間が、ほんの少しでも誰かの記憶に留まることを願って、僕はここに筆を置く。
久々の投稿となります。
全く毛色は異なりますが、同時連載の「魔力なしエルフは今日も物理で殴ります!~嘘まみれパーティの冒険譚~」もよろしくお願いします。
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