若者とせわしない女
ある小さな町に「喫茶シャングリラ」という名前のレトロな喫茶店がある。最近、一人の若い男が「喫茶シャングリラ」に通い始めた。
店内はそんなに広くないが、まばらに客が座ってる。男はいつも、なるべく他の客と距離をおいて席に着くことにしている
そんなある日、男が喫茶店を訪れると、店内には2、3人しか客がいなかった。この日は珍しく、男はテーブル席を選んだ。
男がいつものようにコーヒーを楽しみ始めようとしたとき、突然、一人の中年の女性がせわしなく喫茶店に入ってきた。
中年の女性は、男の隣のテーブルにやってきて、通路側の椅子に荷物をどさっと置いて、壁側の椅子にずしっと腰を下ろした。
「他にも席はたくさん空いているのに…」
あまりの荒々しさのため、男はいつものように自分の世界に浸ることができなくなってしまった。
食事が運ばれてくると、中年の女性は男の顔をじっと見つめ、パンとスープを勢いよく頬張り始めた。男は気づかないふりをして、コーヒーをすすった。
食事を終えると、中年の女性は急に脱力し、スースーと寝息を立てて眠り始めた。
「この喫茶店は、訪れる方々にいつも必要なものを届けてくれます。」
店主の言葉を思い出しながら、男は店を後にした。