就活生とスパシーカレー
「喫茶シャングリラ」の店内の片隅に、就活中の大学生が静かにカレーを食べていた。カレーのスパイスの香りが鼻をくすぐるが、彼の頭の中は面接で聞かれる「自己分析」に占められている。
「自分は何ができるのだろう…」彼は考える。スプーンを手に取りながら、これまでの学生生活を振り返る。アルバイト、サークル活動、そして研究。でも、何かが足りない気がしてならない。
その時、店主の祖父が静かに声を掛ける。
「迷ったときは、カレーに聞いてみるんだよ。スパイスの調合だって、ひとつひとつのバランスが大事さ。自分にとってのスパイスは何か見つけるといい。」
彼はその老人の言葉に驚きつつも、再びスプーンを手に取り、一口カレーを食べる。その瞬間、少しずつ自分の中にある強みと弱みが見えてくるような気がした。
「スパイスの調合か…自分の人生にもバランスが必要だな。」
大学生が真剣に考え込む姿を見て、店主の祖父は心の中で少し笑った。
「それっぽいことを言っただけだから、そんなに深く考えなくてもいいんだがな…」と内心思いつつも、表情には出さずにカウンター越しに静かに見守っていた。
「まぁ、カレーが役に立つならそれもいいか」と心の中でつぶやきながら、店主の祖父はアンティークの食器を磨き続けた。




