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砂の王と千夜の唄  作者: 回向田よぱち
第四夜 阿鼻土の死体屋
13/23

13

 砂漠に放り出された清那たちが流れ着いた街は、キャラバンが休むための隊商宿を中心に栄えているオアシスだった。

 簡素な日干し煉瓦造りの宿は、小さな窓から煌々と明かりが漏れていた。宿の先は果てしない砂原が広がっている。

 清那たちが中に入ると、ヤシの幹で作ったカウンターから宿の主がひらひらと手を振った。

 清那は鞄から袋を取り出す。

「今日の宿代です」

「おお、だいぶ稼げるようになってきたじゃないか」

 パンパンに詰まった袋を受け取りながら女将は言う。袋の中身は麦だ。白冠と違い砂漠地帯ではまだあまり通貨が浸透していないので、物々交換で対価を払う。

 女将は褐色の肌の女主人だった。昔は傭兵業を営んでいたのが影響してか、少し豪胆なところがある。細い枝のような切りっぱなしの髪を、高い位置でひっつめにしている。

 彼女の前に広げられた地図は白冠より下、南方砂漠の山岳地帯まで明記されているものだった。

「それにしても、黒狗か。あちらさんに行くには、どのキャラバンを借りても高くつくよ。あんな端っこまで行ったって商機はないからね。普通は行かないんだ」

 女将はカウンターに寄りかかりながら、獅子の尻尾をゆらゆら揺らした。

「キャラバンに加わろうとは思っていないんです」

 王国軍が追ってくる可能性だってある。できるだけ他人の手は借りたくなかった。

「おや、そうなのか。そりゃまあ、大変だな」

 女将は特に理由を聞くことなく、カウンター奥の棚から貸し出し用の毛布を取り出した。訳ありの旅人などごまんといる。事情を敢えて聞かないのも隊商宿の主人だからだろう。

「気をつけな。今は阿鼻土が拡がっているからね。もう飲み込まれているかもしれない」

 先ほど酒場の店主の口から得た単語がすぐ出てくると思っていなくて、清那は少し驚いた。しかし阿鼻土とは南方砂漠の山岳地帯を指す言葉ではなかったか。拡がっているとはどういうことなのだろう。

「阿鼻土って、地名じゃないんですか」

「ああ。二十年前くらい……それこそアタシが傭兵やってた頃は地名だったんだけど」

 女将はカウンターを指でとんとんと叩いた。

「説明のしようがないな。とにかくヤバいんだ阿鼻土ってのは。雑に説明すると異常気象みたいなものだね。とにかく空気が悪くて、対策をしていないと精神がおかしくなってしまう……」

 苦し紛れに語尾を濁す女将に、後ろから見ていた高砂が口を出す。

「行けばわかる、と」

「まあ、遭遇しない方が幸せだよ」

 眉間に皺を寄せる女将から毛布と布巾のセットを受け取ったその時、背後の広間から歌が聞こえてきた。

 旅人たちの交流スペースになっている広間では、酒場が閉まっても飲み足りない人間たちが宴を開いていた。絨毯の上に思い思いにあぐらを描き、クッションにもたれながら酒を飲み交わしている。

 誰かが持ち込んだ竪琴に、囲む皆が歌を乗せていく。


 眠れ眠れ 竜の子よ

 星は落ち 砂に埋もれど

 夜は明け 鳥が鳴けども

 優しき君の ともし火は

 永久に砂漠を 照らしうる

 眠れ眠れ 竜の子よ

 眠れ眠れ 竜の子よ


 清那と高砂は同時に息を飲んだ。

 二人で顔を見合わせる。

 歌唱が終わった途端、清那たちは旅人の輪に突っ込んでいった。

「あ、あの」

「なんだい」

 初老の猫族の男が振り向いた。

「この歌は」

 清那を見やりながら、皺の深く刻まれた男は言う。

「ライラの唄だが、なんだ」

 動揺してまごついている清那の横から、高砂が顔を出した。いつの間にか手には紙束と羽ペンが握られている。

「すみません。私たちは芸の題材として民謡を聴き集めているんです。先ほど竜と歌われていましたが、竜とはなんですか」

 男は首を傾げながら言う。

「知らねえなあ。おい、知ってるか」

「知らない」

 知らない、知らない、さあ、そういえばよくわかんねえよな、と周囲の人々も口々に言い出した。

 そんな中、鰐族の若い男が声を上げた。

「俺の出身では人の子よ、で歌ってたな」

 今度は駱駝の女が言う。

「私は小さいころ赤き鳥で歌ってた!」

「赤き鳥も人の子もわかるけど、竜ってなんなんだろうね」

「昔いた種族とか?」

「鳥族の一種じゃない? どの鳥の特徴を引き継いでいるかわからないけど」

「伝説の動物だったりして!」

 好き勝手進む話を俯瞰で見つめながら、清那は開いた口を閉じないまま立ち尽くしていた。

 高砂が追い求めていた竜。

 明星の叔父、諸橋が蒸発した原因の竜。

 白冠では誰も知らない竜。

 それがこんな宿で、しかも位置的にはまだ中央砂漠から抜け出していないような場所で、見つかるだなんて。

「そもそもライラの唄がまた流行り出したのって最近じゃない?」

「確かに! 子守唄としては聞かされてたけど、酒場で歌われ始めたのって最近だね〜」

 段々移り変わっていく話題に脳を揺らされながら、清那は虚空を見つめていた。こんなことって、あるんだろうか。

 ふと、上着の裾が伸びる感触があった。

「ちょいと、お嬢さん」

 この中では一番年配の、亀族の老人が清那の衣をくいと引っ張っていた。折り重なる皺が分厚く垂れていて眼球が見えない。亀族は他の種族よりも断然寿命が長いため、百年以上生きているかもしれない。

 老人はモゴモゴと口を動かした。

「ライラの唄はただ子守歌と言うわけではない。阿鼻土を退ける、退魔の唄じゃ。我らが王の、唄じゃ」

 皺の奥の瞳が、鈍く光ったように感じた。

「……どういうことですか」

「……」

 それきり老人はなにも言葉を発さなかった。そのまま眠りこけてしまったかのように、一寸たりとも動かない。

「……なにか、知ってるんですか」

「さて、なんだったか……最近物忘れが酷ぅての」

 老人は骨と皮だけになった手で、ペシ、ペシと禿げ上がった頭を叩いた。

「あーだめだめ、まともに聞いちゃ」

 驢馬耳が生えた青年が割り込んで来る。老人の世話係なのだろう。同じキャラバンの紋章を腕につけている。

「爺さんいつもほら吹いてんだ。和隼王は不老不死だとか、山奥に朝が来ない街があるとか、千夜の神は顔がないとか鳥だとか……支離滅裂なんだよ。ほら、爺さん。明日は日が昇る前に出発だろ、寝るぞ」

 青年は老人の腕を掴み強引に引っ張っていく。

「年寄りは嫌でも起きるわい!」

 口の中で文句を垂れながら、老人は部屋の奥へと消えていった。

 いつの間にか、宴の話は歌詞の内容からはかけ離れたものになっていて、清那たちは完全に蚊帳の外だった。竪琴の旋律も、白冠でも人気な流行歌に変わっている。

 せっかく核心に迫ったと思ったのに、得られたものはおぼろげな単語が独り歩きしているだけだという情報だけだった。

(結局、何も進展しなかったか)

 歌われる場所によってマイナーチェンジしていることはわかったが、それ自体はよくある現象である。

「誰も竜のことを知らず、竜という単語が独り歩きしている……しかも最近始まったこと……」

 高砂は清那とは違い得るものがあったようで、いつものように自分の世界に入り、何かぶつぶつと呟いている。

「何か言いました?」

「まさか、まさかな……」

 清那など視界に入っていないかのように、高砂は羽根ペンを握りしめながら今日泊まる部屋に向かって歩き出した。

 清那はため息ひとつつくと、先ほど女将から渡された毛布を抱えて高砂の後を付いて行った。



 その日の夜のことである。

 妙な静けさを感じて瞼を開いた。宿の部屋は狭い空間に二段のベッドがひとつあるだけで、清那はその上段に寝ていた。上方についた明かり取りの窓から月光が差し込んで空気中の埃を照らしていた。

 なにか、嫌な予感がする。

「先生?」

 違和感と共にベッドの下段を覗く。カーテンは全て開かれており、そこに寝ているはずの高砂はいなかった。ただシーツに付いた皺だけが先ほどまで人が寝ていたことを主張している。

 部屋の隅で縮こまっているてとに目をやる。てとはすぐ清那に気づいて金色に光る瞳を向けた。どうやら眠らなくても支障がないらしい。

「あるじ、そと」

 仮面の下、抑揚のない声で、てとは言った。

「ついてくるな、いわれた」

 ガビガビした単調な声だというのに少しだけ寂しそうに聞こえる。てとはがっくりと面を伏せた。

「そっか。私、ちょっと探してくるね」

 清那が梯子に足をかけようとすると、てとはぶんぶん首を横に振って梯子の下に陣取った。そのまま体育座りをして清那が下段に降りる道を塞ぐ。

「だめ、あるじのめいれい、ぜったい!」

「命令って……」

「ますたーまもる、てとのしめい、てと、ここはなれる、いな、ますたー、そといく、てと、ますたーまもれない……」

 言っている意味を完全には理解できないが、行くなということなのだろう。あんまりにも悲しそうに項垂れるものだから、清那もこれ以上進む気にはなれなかった。

「わかったよ。大人しく寝てろってことでしょ」

「そ!」

 てとがぴょんと跳ねる。

 清那は梯子にかけた足をしずしずベッドに戻し、毛布の中に潜り込んだ。眠くはなかったが、無理矢理目蓋を閉じる。頭の中で嫌な考えが逡巡する。歌詞が竜に変わっているライラの唄を聴いてから、高砂はいつにも増しておかしかった。あの様子だと、また一人で何か行動しそうで怖い。確証がないと口に出さない人間なのは清那も重々承知なのだが。

 なんだか高砂がひどく遠いところにいる気がする。

(私、信用されてないのかな)

 清那は手のひらの中で毛布を握りしめ、胸元に引き寄せた。

 結局、清那が眠りに落ちるまで、高砂が部屋に帰ってくることはなかった。



 一夜が明けた。

 今日は風が強い。宿場町を覆うように砂塵が舞っている。今朝出発予定だったキャラバンたちも立ち往生を食らったのか、広間で水煙草を燻らせながら駄弁っているのが散見される。

 そしてそれを加味しても、広間はいつもよりごった返していた。

 数日間ここに泊まっているが、ここまで騒がしいことはない。まるで広間全体が不安に包まれているかのような、妙な雰囲気だった。

 清那は有り合わせのカウンター席に座り、朝食として配られた硬いエイシを噛み潰した。申し訳程度に蜂蜜が混ぜ込んであるのか少し甘い。

「先生、昨晩どこに行ってたんですか」

「用を足しに行っただけだ」

 高砂は淡々と答えた。

「それにしては長かったように思いますけど」

 答える気がないようで、高砂はエイシを黙々と咀嚼している。心ここに在らずといった様子だった。あまり寝ていないのだろう。珍しく目の下に隈が浮かんでいる。

「死体屋が出たって?」

 清那の犬耳が、遠くから飛んできた声を鋭く拾った。

「巡回で街道沿いを見に行ったら、死体が捨てられてたんだ。ありゃ間違いなく死体屋だ」

 町の自警団なのだろう。切れ味の悪そうな三日月刀を持った髭の男が言った。

 清那はいてもたってもいられず立ち上がり、人混みを縫って男の前に立った。

「それ、詳しく聞いてもいいですか?」

「ああ、構わないが」

 男は眉間に皺を寄せたまま喋り出した。

「遺留品から考えると、被害者は数日前にここに来た鳥族の宝石商だ。阿鼻土じゃ珍しい鉱石が採れるといって、元居たキャラバンから抜け出して一人で阿鼻土に入ろうとしたらしい。阿鼻土の産物は千夜の残党の所有物だから、首を突っ込むとろくな目に遭わないとは忠告してたんだがな……」

「なぜ死体屋の犯行だってわかるんですか」

「火葬されてたんだよ」

「火葬?」

 他国ならまだしも、照耀国ではまず見られない埋葬方法である。

「死体屋の手口だ。絶対に生まれ変わらないようにだろうな。遺体を黒焦げにするんだ。千夜国に楯突く敵は来世に祈ることすら許さないんだろう」

 照耀国では遺体の保存のために、愛玩動物でさえミイラにするのが一般的だ。ミイラにする理由は至極単純。肉体をきれいに保存しておくことで、魂が帰ってきたときに同じ体で生き返ることができるようにという願いなのだ。従って火葬するということは、魂が戻る肉体を無くしてしまうということ。そのささやかな願いをも否定する、死者に対しての侮辱なのだ。

「むごい……」

「それだけじゃない。死体屋の印も残ってた。これだ」

 自警団の男は麻袋から面と弓を取り出した。面は黒い犬の面で、長い耳と金色の瞳が印象的だ。てとが常に被っているものと少し似ている。弓は黒く塗られていて、九本の矢が携えられている。砂塵のような模様が金で彫ってあるが、清那には何かわからなかった。面も弓も実際に使うものというより、儀式用という印象を受ける。

「これは?」

「死体屋がいつも現場に残すものだ。死体の顔に面を乗せ、手にはこの物騒な弓を握らせるんだ。歯向かったらお前もこうするぞ、という意思表示だろうな。顔もわからないほど黒焦げにした上に、わざわざ面をかぶせて尊厳を踏みにじるだなんて、照耀国に恨みがあるにしてもやりすぎだよ。もう内戦が終わって十年以上経ってるんだぞ。まだ戦争を引き摺ってるだなんて、こっちにゃ迷惑でしかないよ」

 男は吐き捨てるように言った。

 この口ぶりで簡単に教えてくれるあたり、そう珍しいものでもないのだろう。

「誇りとか馬鹿らしいよな。千夜国なんて、もう無いんだから」

 窓の外、男の視線の先には、荒れ狂う砂嵐が渦巻いていた。



「先生! 聞いてました?」

「……ああ、すまない。少し考え込んでいた。何を話していたんだったか」

 天候は酷くなるばかり。朝食が済んだところで外に出るわけにもいかないので、宿の部屋に戻ってきていた。紙束を見つめながら二段ベッドの下段に寝転がる高砂を横目で見ながら清那は腰を下ろした。

 相変わらずぼんやりしている高砂に向かって唇を尖らせる。ベッドに両手をついて、身を乗り出す。

「もう! 死体屋の犯行の話です」

「ああ。照耀国への恨みを伝えるために痕跡を残すんだな」

 様子が変でもちゃんと話は聞いていたらしい。

「少し、違和感があるんです」

「言ってみてくれ」

「千夜国の住民には照耀国への恨みがあって、その感情の表現のため現場に物を残すのは筋が通っています。ですが……」

 清那は目を細めた。

「面も弓も、黒いんです。先生の論だと黒は白冠では死の色。しかし死体屋の本拠地と言われている阿鼻土では生命の色だという認識が強い可能性が高い。変じゃないですか? 殺した相手にわざわざ添えるには、良い意味になりすぎる」

 死を運ぶ犬の面、外敵を殺戮する弓。

 神を模した面、外敵から身を護る弓。

 死者への侮辱。

 何らかの呪術的な暗示。

 一方から見たら屈辱的に、もう一方から見たら丁寧に飾られた死体。

「もしかして、弔い、なんじゃないでしょうか」

 憎いはずの敵国の者をなぜ弔わなければならないかは清那にもわからなかった。無辜の人間を殺したのだ、死体屋のしたことは許されるものではない。しかしそれにしては、手が込みすぎているように感じるのだ。

「確かに、皆が認識している以上の意味があるかもしれないな」

 高砂は起き上がり、うんうんと頷いて懐から取り出した紙束に筆を走らせた。



 それから私たちは踊りで日銭を稼ぎながら、オアシスの村を渡り歩いた。

 炎の王と星読みの巫女だけでは流石に飽きられるので、見聞きした昔話や民謡を織り交ぜながら新たな演目を創作し、虱潰しに公演を重ねていった。題材はなるべく千夜由来のものと思われるものを選び、見物客の会話からなるべく竜や死体屋の情報を引き出せるように工夫した。おかげでどこの街に行っても「本場白冠から来た有名な踊り子一行」として歓迎されるようになった。

 踊り子としての名声が高まったのは素直に嬉しいが、一方で調査は一向に進展しなかった。

 よかったことと言えば、王国軍が追ってくる気配がないということだろうか。白冠を抜け出したあの日から、王も隼人将軍の名も聞くことはなかった。砂漠に遠征したという話もない。

 高砂はと言えば、夜中に抜け出して翌朝眠そうにしている時はあったが、悪神の方面では体に異常がある様子はなかった。イシが用意したアイテルが効いているのだろうか。

 一歩、また一歩。

 止めることなく歩みを進めていたら、いつの間にか南方砂漠に入っていた。

 申し訳程度にあったヤシの木もだんだん少なくなり、キャラバンが逗留するようなオアシスは数を減らしていった。こうなると頼りは砂山の谷間に薄く生える肉厚の植物ぐらいになる。植物は地下水源がある証拠なのだが、これもいつ途切れるかわからなかった。サラサラの砂山も、岩山が近いのか段々礫へと変化していく。

 白冠を出てから、二カ月は経った。

 今日は野宿だった。使い古して黄ばんだ麻布を天幕にして張り、焚火を囲みながら、数日前に会った旅人が分けてくれた干し肉を噛む。もうこんな暮らしにも慣れきってしまい、清那は自分が学生だったことすら遠い昔のように感じていた。

 空には星の河が瞬いている。

 結局、隼人が口にした星が揃いつつあるという予言はなんだったのだろうか、と清那は思う。清那がアイテルを手に入れたことで未来が変わったのならそれでいいが、なんだか腑に落ちない感じもする。

 高砂は地図を広げながら言う。

「このまま天候が悪くならなければ、黒狗まで数日だろう」

「くろいぬ! ねこづか!」

 さぞ嬉しいのだろう。てとがぴょんぴょん跳ねる。

「……もう、ここまで来たんですね」

 長いような短いような旅だった。すぐ近くに自分の故郷があるという実感があまりない。

 想像する。燃える家々を。母が叫ぶ顔を。

 それらはリアルな思い出として頭に焼きついているのに。

「……不満そうだな」

 二カ月も一緒にいると、流石の高砂も清那の表情に敏感になるのか、妙な察しの良さを発揮するようになった。

「空しいが近いでしょうか。随分遠くまで来たのに、何も得ていないんです。先生の呪いのこともわかっていませんし、王国軍がなぜ黒狗を焼いたのかもわからない。大体、南方砂漠に来ても、昔の戦争のことは忘れよう、忘れたいという人が多かった」

 ここまで来るのに、黒狗やその周辺の戦災地域出身だという人間には何人か会った。トラウマが尾を引いているのだろう。家族が殺されたことに憤慨を抱いている人はおれど、あの事件の裏に何があったのかまで言及する人はいなかった。

 口を揃えて言う。全部千夜国のせいだ。

 戦争を起こすような千夜国の者など頭のおかしい人間であり、自分と違う生物であり、生活圏内に入ってきてほしくない。その考えに凝り固まっている。

 それが砂漠の住民の、特に照耀国の人間の多くが思っていることだった。千夜国への奇異の目は、そのまま死体屋を見る目と同じだった。

 むしろ砂漠の奥へ行けば行くほど、千夜国への偏見が強くなっていく。白冠では旧千夜地域出身であっても暮らしてはいけた。しかし南方砂漠では、あの土地の者は差別されるべき対象であり、殺されてもしょうがない人間たちだった。

 まるで千夜国を、自身の怒りのはけ口にしているような。

「死体屋のことはわからないですけど、こんな状況だったら照耀人を殺したくなるのもわかる気がします」

 口元から思わず零れてしまった言葉を、高砂が拾う。

「理解はしても同情はするな。正当な理由があれど、死体屋は人殺しだ。その行為は許されるものではない。憎しみを飲み込まないと、戦は終わらないんだ」

 高砂は拳を握りしめた。

「最近、よく考えることがある。悪神も、照耀人の怒りのはけ口にされていたのかもしれない。俺は照耀の王宮の中で守られていたのかもしれない、と」

 悪神の血を引き継ぐ王子は、王宮から出ることなく一生を過ごし、美しい箱庭の中で死んでいく。

 閉じ込めるための檻は、同時に堅牢な城壁にもなりうる。

 誰にも姿を晒さぬ悪神は、人々から認識されることはない。糾弾されることもない。

「なんだか、頭がごちゃごちゃします」

 清那は地面に指を滑らせて、砂をかき混ぜた。

 物事を多角的に見る行為は精神を酷使する。ゆえに大概の人間は思考を放棄する。そんな中思考を続けることを選ぶことは、茨の道なのだった。

 清那は自分の意見に段々と自信がなくなるのを感じていた。得る情報の偏りゆえに、流されている自分に気づいたのだ。

(自分の意見とは、なんなのだろう)

 どんな主張でも、必ずなにかに影響されている。

 正常な判断なんて、この世のどこにもないのだろうな、と清那は思った。

 この瞳に映る焚き火の赤は、果たして本当に赤いのだろうか。清那が目蓋を細めると、視界の揺らぎに炎はぼやけていった。



 入り組んで迷路のようになっているバザールを、清那とてとは駆けていた。

 荒い呼吸を無理やり整えようと、短く息を吸って吐く。落ち着け、と思う度に逆に鼓動は早まる。

 背後からは夕闇に溶けるように黒い影が迫ってくる。その影は一つではなく、清那の鋭敏な犬耳はいくつも蠢くものがあると告げていた。なぜ追われているのかわからなかった。まさか隼人将軍の配下か。そうだとしたらこんな砂漠の果てまで来て、今更現れることがあるのか。

 考えてもわからない。ならば今はてとの小さな背中を追いかけ振り切ることだけを考えるしかない。

 黒狗の街に至る道で最後の宿場街に着いたのは昼下がりだった。この宿場は阿鼻土に一番近い宿場のため、阿鼻土で多く採れるという孔雀石や瑠璃などの宝石や、千夜国の遺構に残っているとされる宝を狙う冒険者が多く滞在する。それゆえにこんな砂漠の果てなのに行商人がひしめき合い、白冠ほどでなはいが、大型の行商人街が展開されている。

 清那と高砂は露天で軽く昼食を取ってから、二手に別れて今後の旅路での必要物資を買い集めようとしていたのだが。

 頬に涼しい感覚。

 鋭く、風が吹く。

 目の前を、一文字に刃が走る。

 清那はその空気を割く音を敏感に察知し、後ろにのけぞった。

 心臓の奥がひやりとする。オシに刃を突きつけられた時とは全く違う。殺意が滲み出た一閃だった。

 のけぞった反動でバランスが取れなくなり、二、三歩千鳥足をふらつかせてから地面に尻餅をつく。臀部に鈍い痛みを感じる。薄暗い路地裏の地面は、堆積した砂が深く立ち上がるのにも相当な足掻きを必要としそうだった。

 清那は顔を上げた。

 夕日の逆光になった影は大きな犬の耳をかたどっている。

「炎の王の公演をしているのは、お前だな」

 その顔を覆うのは、見覚えのある仮面。

(死体屋……!)

 まさにあの死体に被さっていた面だった。呪術めいた黒い面は、光のない金色の瞳をぎらつかせている。

 面の主の声は少年のようだが、一概に若いとも言い切れない諦観めいたものを清那は感じた。小柄だが無駄なく筋肉がついた体は、この者が人を殺す術を身につけていることを物語っている。

 手には槌矛が握られており、その切先は清那の喉元に突きつけられていた。

「……なにか用ですか」

「今すぐ公演を中止しろ」

 死体屋は感情のない声で言った。

 気配だけ。一見無人の路地裏のようだが、大勢に囲まれているのがわかる。

「……私が踊ると、なにか都合の悪いことでもあるんですか?」

「お前が知る必要はない」

 息を短く吸う音がして、死体屋がその手の槌矛を高く振り上げたその時だった。

「ますたー! たすける!」

 後ろに潜んでタイミングをうかがっていたのだろう。てとが短い脚をばねのようにして飛び出してきた。その包帯が巻かれた手には、いつの間にか大ぶりの三日月刀が握られている。

 仮面の男は動じることなく、自動人形か、と短く呟いた。

「柩神接続。夜の民、王の血脈。黒の名を引き継ぐ者が権限を上書きする。マスター、黒夜。ログイン。システム、強制終了」

 無機物めいた呪文を死体屋が唱え終わった瞬間、てとの体が突然痙攣した。

 そのまま魂が抜けたかのように膝をついて、パタリと倒れた。

「てと⁉︎」

 地面にごろりと転がったてとはピクリとも動かない。その力ない姿は生き物ですらなくなってしまったかのようだった。

 清那は荒れた唇を噛んだ。

(しょうがない。一か八か……)

 砂に埋まった右手に力を籠める。

 想像する、熱き炎を。広がる砂漠に灯る光を。一旦接続が繋がったからか、情景を呼び起こすのは容易だった。

 体にアイテルを巡らせる。

 詠唱を、唇に乗せる。

「炎の王の名の下に歌う」

 汗ばんだ掌に、温かな炎が収束し始めた。

 掌に空気が集まり、ぼ、と音を立てて燃え上がる。

 死体屋の仮面の奥の、灰色の瞳が揺れる。

 光彩は炎を確かに映している。

「嘘、だろ」

 清那の通る声を遮るように、死体屋は槌矛を握り直し、拳一つほどだが切先を引っ込めた。

「まさか、貴女は、セナ様か」

 その声には焦りが滲んでいる。

 いや、焦りだけではない。震える声音は、それ以上の感情を内包していた。溢れ出す感情を抑えきれないとでもいうように、死体屋の首元に汗が流れ落ちるのが清那には見えた。

「……?」

(私を、知っている?)

 そもそも清那はこの近くの出身なのだ。白冠に来る前の清那に会っていても不思議ではないが。

 それにしては、動揺しているような。

 黒犬と金犬の間に、沈黙が流れる。

 ここから逃げる好機であることは清那にもわかっていた。しかしそれ以上に清那は気になっていた。目の前の黒い仮面の男は、何を考えて清那を見つめているのかを。

 清那が口を開こうとしたその時だった。

 両者を割くように、弦楽器の音が、たった一音響く。

「なんだ?」

 次の瞬間。空から、正確にはこの路地を囲う建物の上から、声が降ってきた。

「失礼するよ!」

 背後に何かが着地した。

「清那さん、ちょっと耳塞いでな」

 清那の小麦色の犬耳が、頭巾のようななにかで覆われる。ここまで一瞬の出来事で、清那も、多分死体屋も、状況が理解できていないまま固まっていた。

「眠れ眠れ、夜の子よ。優しき君は、夢の中。我ら忘るる、その声を」

 男性の柔らかな歌声が路地を包み込んでいく。その旋律はライラの唄と同じもの。

 夕焼けに切り取られた死体屋の影が、揺らぐ。

「う……」

 小さなうめきと共に、死体屋は体勢を崩した。そのまま砂の積もった地面に身を横たえ、最後には寝息を立て始めた。

 一瞬の出来事に口を開けて目を白黒させることしかできなかった。

 頭の頭巾が取られる。

 清那が振り返ると、視界に映ったのは初老の男。

「ん〜、流石に耳がデカいと効きがいいな」

 男は背中にウード(弦楽器)を背負っていた。黒くうねった髪に皺の刻まれた褐色の肌。隼の羽。その優しげな目元は清那の知っている人間にどこか似ていた。

(明星先生?)

 男はうつぶせになっているてとの黒い外套の中に手を突っ込んで、背中の辺りをまさぐった。

「人の物を勝手に奪っちゃいけないよな」

 ピ、とてとから音が鳴る。

「権限解除、マスターを巫に再設定」

 男が手を引っ込めると、てとはすぐさま起き上がりきょろきょろと辺りを見回した。

「ますたー!」

 てとは清那を見つけるといの一番に胸元に飛び込んできた。嬉しいのか面が体にぐりぐりと押し付けられて少し痛い。

「大丈夫かい?」

 男は屈んで皺が浮かぶ手を差し出した。

 清那は手を取り立ち上がった。

 旅装に着いた砂を払いながら、男をじっと見る。

「あの、貴方は……?」

 髭の生えた顎を撫で、男は言う。

「諸星。いや君が知ってるとすれば、諸橋という名の方が馴染むかもな。いずれにせよ、今はいきずりの吟遊詩人だ」

「諸橋……司書長?」

 諸橋はにっこりと笑って頷いた。

「あの、聞きたいことが、沢山あるんです」

 逸る気持ちを抑えられなかった。

 清那の目の前にいるのは正真正銘高砂の恩師であり、明星の叔父であり、千夜の「竜」の秘密を握っているその人なのだ。

「それはまたの機会だ。今は早急に伝えなければならないことがある」

 気持ちよさそうに眠っている死体屋に目をやりながら諸橋は言う。催眠の効き目が長いわけではないということだろう。

「清那さん、よく聞いてくれ。貴女がしなければならないのは公演を中止することじゃない。炎の王の伝説を民に知らしめることだ。どんな些細なことでもいい。千夜の伝承の中から炎の王に関することを引き出し、それを題材に公演を続けるんだ」

「……なぜですか」

 諸橋はひとつ息をついて、強い声で言った。

「私たちの本当の敵に立ち向かうために」

 清那の手が握られる。

「君たちは、千夜の、そして照耀の、唯一の希望なんだ」

 握る手の堅さに、清那は切実なものを感じた。

 敢えて言語化するなら、その感情は祈り、だろうか。

 諸橋は手を離すと、清那の背中をとんと圧した。

「夜の民が目を覚ます前にここを離れるんだ。この道をまっすぐ行くと広場に出る」

「あ、ありがとうございます!」

 諸橋は再度にっこりと笑った。夕日に照らされた人懐こい表情は、やはり明星によく似ている。

「隼砂くんをよろしくね。あの子は不器用だから清那さんを困らせることもあると思うけど、悪い子じゃないんだ。根気よく付き合ってくれると嬉しいな」

 すでに夕日は地平線に差し掛かっていた。

 てとに手を掴まれた清那は、諸橋を背に再び駆け出した。真正面で輝く金色の太陽に緑の瞳を焼かれながら、狭い路地裏の地面を蹴った。

 ふと振り返る。

 吟遊詩人の姿はもうどこにもなかった。



「師匠に会った?」

 羊の串焼きを頬張りながら、高砂は言った。

 よほど驚いたのだろう。嚥下を失敗してむせた。それからしばらくの間咳こんでいた。

 日も落ちて空は暗いが、各商店にぶら下げられたランプが眩しく光っているので、昼間のような明るさだった。広場は所狭しと露店が出ている。宴会を行っている旅人も多い。祭りの日でもないのに、この

「よろしく言っておいてくれって言われました。今は私たちと同業で暮らしているそうで」

「竜版のライラの唄を聞いた時にまさかとは思ったが、本当に生きているとは……」

 高砂は汚れた口回りを布巾で拭いながら言った。「すごかったですよ。死体屋に襲われそうになったところを、歌で一気に眠らせて」

 隣で息を飲んだ音が、清那の耳に飛び込んできた。

 高砂は目を見開いて清那を見た。

「待て、死体屋と接触したのか」

 その顔は凍り付いていた。

「はい。露店を散策していた時に見つかって……」

「清那君を一人にしなければ……」

 高砂は片手で顔を覆った。ぐらつきながら清那の肩に掌を乗せる。

「危ない行動は取らないでくれ」

「え?」

「ただでさえサソリや野犬が徘徊していて危ないんだ。清那君がいなくなったらと思うと、俺は……」

 憔悴した様子の高砂を見て、清那はいよいよ疑念を抑えきれなくなった。

 普段だったら真っ先に諸橋や死体屋のことを聞いてくるはずなのに、清那のことを気にかけている。彼の中では千夜国の呪いを解く方法がすべての優先順位の上に位置していたはずなのに。

 研究一筋の高砂は、どこに行ったのか。

「先生、最近変ですよ。夜にいなくなったり、研究そっちのけで私の心配をしたりして」

「夜のことは、すまない」

 しおしお口をすぼめて言うものだから、清那はいよいよいらつきを隠せなくなった。

「謝ってほしいわけじゃない。理由を聞いてるんです」

 声を荒げると、高砂は顔を伏せて目を逸らした。

「……清那君が俺にアイテルを使ってから、悪神の姿が活性化するようになってしまったんだ。以前のように自分が自分じゃなくなるものではなく、意識を完全な支配下に置いた上であの姿になれるようになった。だから夜に色々と実験をしていたんだ。どの条件で体を変えられるのか、持続時間はどれくらいか、痛みや疲れは伴うか……」

 その声音はいつものように自信と確信に満ち溢れたものではなく、弱弱しいものだった。

「だがこんなこと清那君に言ったら反対するだろうし、心配もさせる……何より、傷つけたくなかった」

「そんなことぐらいで傷つかないです!」

 串焼きに刺さっていた羊肉が地面に落ちる。

「それより、なにも言わない方が傷つきます。現状打破には状況の正確な理解が必要でしょう? 伝達してくれなきゃ解ける呪いも解けないじゃないですか」

 二人で千夜の呪いを解こうと約束したのに。

「やっぱり変ですよ。先生の癖にリスク管理があべこべです。どうしちゃったんですか」

「どうも、しない」

「また説明を濁す!」

 清那は串を放って、先ほどから頑なに目を合わせようとしない高砂の頬を両手で挟んだ。自分の方に無理矢理向けさせる。褐色の肌に苦虫をかみつぶしたような顔が浮かんでいる。

「……わかった。ちゃんと伝える」

 高砂は清那の両くるぶしを掴んで、頬から手を下ろさせた。

「これは他人の状況や経験則から聞いた言葉を鑑みて、自分の感情に照らし合わせて導いた結論であって、世間一般で言うその感情と合致するのかは自信がないのだが……」

 高砂は、大きくため息をついた。

 そして、恥ずかしくなるほど真っすぐに、清那を見た。

「どうやら俺は、清那君に、恋をしているらしい」

 予想外の言葉に清那の体が固まる。

「好きだ、清那君」

 追い打ちをかけるように紡がれた睦言で、清那の脳内は混乱の極みに達した。

(私のことが、好き?)

 高砂の黒い瞳が、清那を一心に見つめるその瞳が、熱を帯びて潤んでいる。

「あ……」

 うまく言葉が出てこなかった。

「ごめんなさい!」

 手を振り払って、清那はその場から一目散に逃げだした。


 広場の隅にしゃがみこんで、膝に顔を伏せていた。

 ゆるい風が清那の体を通り抜けていく。

 隣に誰かが来た。衣擦れの音だけ立てて横に座る。ひんやりとした気配で、てとだとわかる。

「ますたー?」

 てとは不安そうに顔を覗いてきた。

「あるじ、しんぱい、してた、よ」

「わからないよ」

 清那は夜に吐息を溶かすように、苦しげに声を出した。

「高砂先生と、これからどうやって話せばいいの」

 そう口に出した清那の顔は涙に濡れて、真っ赤に染まっていた。

 初めての感情だった。

 逃げ出したくてしょうがないのに高砂を意識してしまう。天狼座の中で散々色恋の話を聞いていて耳年増なわりに、自分の恋愛は全くしてこなかった。どちらかというと馬鹿な男なんかに狂わされて愚かだと思ってきた方なのに。

 一人の男を意識している状態が、こんなにも苦しいだなんて知らなかった。

(先生のあんな顔、初めて見た)

 焦がれるような目線を思い出すたびに、それが自分に向けられていることに胸がざわつく。

 落ち着かなかった。

(なんで、逃げたんだろう)

 ひとえにそれは自分の生活が変わることへの恐怖であり、高砂との関係が変わることへの恐怖であるのだろう。

 わからなかった。自分の心も、感情も。

 冷えた指先を握りしめたその時だった。

 ふいに、頭上から声が降ってきた。

「お迎えに上がりました、星南(せな)様」

「……え?」

 顔を上げると、黒い面があった。

 その声は先ほど自分を襲ってきた死体屋と同じだった。しかしそれだけではない。先ほどの落ち着いた声にはなかったものをはらんでいた。

 ひとえにそれは、希望に満ち溢れた少年の声。

 体が強張る。目線だけ動かして周りを見渡すと、同じ面をつけた者たちがこちらを囲んでいるのがわかる。今度は隠れないで、清那を凝視するように面をこちらに向けていた。

 死体屋は清那の目の前で片膝をついた。

「面も取らずぶしつけな訪問で申し訳ございません。私たちは夜の民。千夜王家の血を引く者たちです。星南様の帰還を今か今かと待ち続けておりました」

 まるで、生まれる前から忠誠を誓った臣下かのように。

「我らと共に来てください。千夜国には、星の巫が必要です」

 夜の民を名乗る死体屋は、だらりとぶら下がる清那の白い手をとった。

 眩い露天商の灯の中で揺れる黒い影たちに、清那は、炎は黒を濃くするんだな、と場違いなことを思った。

コミックマーケット105にてこちらの小説「砂の王と千夜の唄」の製本版を頒布いたします。

詳しくは作者X(旧Twitter)他各種SNSをご確認ください。

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