あの日、諦めないと決めた
「あの日、思い出せてよかった」の後日談…蛇足? のようなお話になっています。
10年後、クラーラが13歳。
「アードルフ・ランデスコーグ伯爵。おばあさまと結婚してください」
13歳のクラーラ・リンドロード侯爵令嬢の訴えを聞いた28歳の若き伯爵は、口をへの字に曲げていやそうな顔をした。
13歳のクラーラには、28歳の血の繋がらないおばあさまがいる。
クラーラの両親は10年前、馬車の事故で亡くなった。クラーラを育てたのは曾祖父と曾祖父の後妻に入った当時18歳のおばあさま。名前をヨハンナという。
ヨハンナおばあさまは、曾祖父が幼いクラーラのために選んだ…侯爵家のためだけに結婚した人。
彼女はクラーラの犠牲になっていると親切な人たちは囁くけれど、おばあさまはいつだって笑顔で私に人生の幸福を伝えてくる。私がよその言葉に惑わぬよう、嘘偽りのない愛を伝えてくれた。
曾祖父亡き後も、血の繋がらないひ孫を我が子のように慈しみ、育ててくれた。
クラーラはおばあさまの愛を疑ったことはない。
愛を伝え、幸せと笑うおばあさまに嘘はない。
だけど、もっと幸せを目指していいと思う。
そう、たとえば再婚とか。
そもそも曾祖父とおばあさまの結婚はおじいさま(おばあさまのお父様)と使者の勘違いと暴走が原因だ。
お爺さまは養子縁組でヨハンナおばあさまを侯爵家へ繋ぎ止めるつもりだったのに、それを嫁入りと勘違いしたおじいさまが婚姻届を作成。養子縁組から婚姻に変更になった書類。ここで一言物申せばいいのに、使者も娘が手に入るのならと養子縁組用で用意していた侯爵様のサインを婚姻届けに使用してしまう。
受理された書類を受け取ったお爺さまは目が点になったらしい。
(でもお爺さまもお人が悪いわ。訂正しないで、そのままおばあさまを手に入れてしまうんだもの)
どちらにせよ、侯爵家の跡取りであるクラーラが成長するまでヨハンナの嫁入りは認められない。婿も取れない。
ならば嫁として迎え入れ、法律的に結婚出来ない状態にすればいい。
侯爵家のため、有望な人材を確保するため、お爺さまは決断した。
おばあさまは受け入れたけれど、時間をかけて現状を理解したクラーラは憤慨した。
(皆おばあさまの幸せを考えていないわ!)
おばあさまはそもそも結婚できない可能性の方が高かったのだから、素敵な旦那様ができて私は幸せよーって笑っていた。
おばあさまは、おじいさま(おばあさまのお父様)の失敗から侯爵家にお金で買われて嫁入りした。侯爵家の手助けがなければ立て直せなかったからどちらにせよ結婚できなかったとおばあさまはいうけれど、おじいさまの所為でお爺さまに嫁入りすることになったおばあさまばかり損をしている。
確かにお爺さまとおばあさまは仲のよい夫婦関係だったと思うが、完全に祖父と孫の関係だった。
ちなみに勘違いと暴走を重ね、役目を全うできなかった使者は罰を受けたが、早とちりしたおじいさまはそのままだった。おばあさまに締め上げられたそうだけど、それだけ。
しかしそれから数年後、再び事業が傾いて、見かねたおばあさまが事業を引き継いだ。
貴族にも経営者にも向いていないと叱られたおじいさまは、権限を封じられて庶民と一緒に生産業に携わっている。手先は器用で、言われた仕事を黙々と熟しているらしい。
領民達への扱いとか、実の娘への扱いとか、色々物申したいことは多いけれど、現在は命令される側の人間になっている。おじいさまは貴族だけど、貴族としての権限を行使できず、おばあさまの部下の部下、作業員として働いている。給金はかつての増税の戒めとして、ほとんど領地の経費になっていた。
おばあさまは今でも反省文という名のお手紙を貰うらしい。
おばあさまの為にも、おじいさまには生涯反省文を書き続けて欲しい。
結婚から3年。お爺さまが75歳で亡くなってからも、おばあさまは侯爵家のために生きた。
クラーラが爵位を継げるようになるまで、資産を減らさず増やさず平穏に保った。
(現状維持が一番難しいのよ。知っているわ)
資産が減ったのは三年前の世界的な不作時期だけで、それから元に戻っているのだからおばあさまの手腕は見事なものだ。
社交界でもおばあさまの評価は高い。
最初はあまりの年の差から、財産目当てだとか侯爵家を乗っ取るつもりだとか色々いわれていたようだけど、おばあさまは大人だった。
躊躇なく、周囲の人に頼った。
「私は小娘だから、一人で出来る事なんて高が知れているのよ。困ったときは人を頼るのが大事。任せきりにしないことがポイントね」
そう言って学生時代の級友達に手紙を出して、おばあさまだけでは処理できない事業の提携を行った。きちんと話し合ってお互いが納得する利益を得るために動いた。
結果人の繋がりが増えて、援助してくれる人も増えた。新しいアイデアを発信する人も確保して、一人でできなかったことがどんどん広がっていく。
独占しなかったから資産は増えなかったけれど、事業の幅が広がったので資産が減ることもなかった。
侯爵家がメインで動いている部分は動かさず、周囲の力を借りて細やかに枝を伸ばした。
そうなればおばあさまがなんのために侯爵家に嫁入りしたのか察する人は多くなり、むしろ枝を広げるおばあさまに肖ろうと積極的に関わる人が増えていく。おばあさまはのびのびと、できる人にできることを割り振って全体を見渡し、大樹のように社交界に根付いた。
そんな魅力的な人、既婚者だからって放って置かれるはずがなく…。
未亡人になれば更に近付く男性は増えて…。
(それら全てを、ランデスコーグ伯爵が蹴散らしていった)
蹴散らしていったのだ。この人。
まだ口をへの字に曲げている、王子様みたいな顔をした伯爵は、おばあさまに近付く男性に容赦しなかった。
おばあさまが社交界で立場を確立するのとほぼ同時。ランデスコーグ伯爵…当時子息も事業を盛り上げていった。
幅を広げるおばあさまと違い、彼は手持ちの事業…馬車の製造にのみ力を入れた。
落ち目だった売り上げを上げるため品質改善、研究を重ねスプリングを改良。馬車の揺れを軽減し、座席の座り心地にも研究を重ねクッション素材を開発。商売敵を吸収する勢いでのし上がり、王家御用達の馬車を開発するまでに至った。
幅を広げるおばあさまと提携する機会にも恵まれ、仕事として顔を合わせながら…絶対隣から動かない。
誰もが認める馬車の第一人者でありながら、社交ではおばあさまの隣から絶対動かない。
おばあさまと違って未婚の伯爵は伴侶を探さねばならないのに、そんな気配を一切見せず、おばあさまの傍から離れない。
社交界ではとても、有名なお話だ。
ランデスコーグ伯爵は、リンドロード侯爵夫人が役目を終えるのを待っている…と。
クラーラの訴えを聞いた社交界でよくて一途、言い方を変えると重いと言われる伯爵は、王子様みたいな顔で口をへの字に曲げたまま向かい合って座るクラーラを見ていた。
場所は伯爵家の客間。単身乗り込んできたご令嬢を放置せず向き合っているのは、クラーラが「ヨハンナのひ孫」だからだ。
「…それで、リンドロード侯爵令嬢はまさか私に婿入りしろと言うのか?」
おばあさまは、クラーラが爵位を継ぐまで侯爵家を支えると約束している。
だからクラーラが未成年の今、おばあさまは侯爵夫人である。侯爵夫人の再婚ともなれば、相手は婿入りの形になる。
クラーラは首を振った。
「いいえ。おばあさまを解放するから、子爵令嬢のおばあさまを娶って欲しいの」
「それで侯爵家はどうなる? アイツが10年間守ってきたものを捨てると?」
「今すぐじゃないわ。私が18になる5年後に、結婚して欲しいの」
「…それは今する話か?」
5年先の話をしているクラーラを、伯爵は気が早いと言いたげに見ている。
だがクラーラにとって、気の早い話ではない。
「今のうちにしないといけないわ。だって伯爵は10年前、おばあさまと婚約していなかったからこんなことになっているのでしょう。油断していたら駄目なのよ」
ぐ、と伯爵が詰まった。
伯爵の一途な想いが有名になればなるほど、婚約していれば話は違ったのにと人々は口にする。教訓にして恋人達が早めに婚約宣言するほど浸透している。
過去失敗しているのに、伯爵はおばあさまと将来の約束をしていない。
これを油断と言わずなんと言う。
「伯爵はいつもおばあさまにべったりだけど、隙間を縫って近付いてくる男性はいるんだから」
「なんだとどこのどいつだ」
「油断ならない相手代表は王弟殿下よ」
「45歳男やもめ…!」
そう、18歳で72歳のお爺さまと結婚したおばあさまは、そこそこ年上の男やもめに結構狙われている。
祖父レベルと結婚したのだから、父親レベルは許容範囲と思われがち。更におばあさまは現在28歳。45歳とは17歳差。貴族としてはあり得ない年齢差でもない。
「大人の世界は騙し合いが基本なんでしょ。うっかりが起きないためにも、言葉で約束するのって大事だと思うの」
「そんなの必要ない」
「必要よ! 待ってるって態度で示すだけじゃなくて、ちゃんと言葉にするの大事よ! 約束して伯爵! おばあさまをお嫁に貰うって!」
「ご令嬢にする約束ではないだろうお帰りはあちらだ」
「おばあさまにもしてないからいってるのよ!」
「なんで知って…ヨハンナァ!」
「あと何年待つつもりなのかしらって困惑しているおばあさまを安心させることもできないの!?」
クラーラは距離が近いくせに明言しない伯爵にぷりぷり怒っていた。おばあさまがちょっと困っているのを知っているから、ちゃんと明言して欲しい。はっきりしないからおばあさまが困惑しちゃうのだ。はっきりして。なんなら書類だって用意したい。
しかし伯爵は、子供みたいにそっぽを向いている。
「…ご令嬢が一人前にならないと、アイツは俺の求婚を断る」
「何度断られてもガッツを見せて!」
「簡単に言うな一回のお断りで心が折れるわ!」
おばあさまも責任感が強く、家族を大事にするので不貞と取られる行動はしない。だから伯爵の求婚に頷くことはないだろう。クラーラだってわかっているが、それでも気持ちを伝えて欲しかった。
「待ってるって明言するだけでも気持ちが違うの! 結婚して!」
「やかましい! ご令嬢も早く結婚しろ! 爵位を万全に受け継げ! 第二王子が会いたがってるぞ!」
クラーラは頬を膨らませた。
彼はおばあさま解放の手段として、クラーラに結婚相手を斡旋してきたりする。
「私年の差は5歳までが許容範囲内ですので! 20歳の殿下は範囲外です! 学校で有望そうなの捕まえますから!」
年の差がありすぎるのも考え物だと思ってのことである。
お爺さまとおばあさまは家族として信頼し合っていたが、夫婦としてではなかった。数ある家族の一つとして信頼し合う関係は理想ではあるが、クラーラが求める男女の関係と一致しない。
「ご令嬢が変なのに引っかかって婚活失敗したらヨハンナの未亡人期間が延びるだろうが! 第二王子で妥協しろ!」
「おばあさまに育てられたスーパー可愛く賢いクラーラちゃんは見る目が確かなので問題ないです!」
「くそ、ヨハンナの奴、ひ孫を自己肯定感バリ高のポジティブガールに育てやがって…!」
「自信は魅力なんですよ伯爵!」
「謙遜を覚えろ…!」
「過信しないよう気をつけてますもん! 自信と過信は紙一重って言われてますもん! でもクラーラちゃんが可愛いのは事実ですので問題ないです! クラーラちゃん可愛いでしょう!?」
「くっそ!!!!!!!」
「否定がないので事実です!」
クラーラは婿を探さねばならない。
おばあさまが心配しない、立派な婿を。
そして幸せな結婚をすることが、おばあさまへの恩返しになる。
だっておばあさまはクラーラが大好きなのだ。クラーラが悲観して、おばあさまのためだけに能力だけの夫を選ぶことは望まれていない。
クラーラも、おばあさまも、幸せにならなくてはいけない。
「私も必ずお婿さん見つけますから、だから、おばあさまと結婚してください!」
その約束を、クラーラはずっと求めている。
なのに意地悪で恥ずかしがり屋な伯爵は、全然クラーラの望む答えをくれない。
「さっさと帰れご令嬢。早く帰らないと馬車の試運転に付き合わせるぞ」
「最新式の馬車…ご褒美では…?」
「到着駅は王宮だ。第二王子が会いたがっている」
「そろそろ帰ります。また来ますね伯爵!」
「もう来るな」
すたこら逃げるクラーラは、伯爵がクラーラを追い出すけど来訪は拒まないのを知っている。
口も態度も悪いけれど、おばあさまを大事にしているから「ヨハンナのひ孫」のことも大事にしてくれているとわかっている。
伯爵がおばあさまを、大好きだと知っている。
(周知の事実なのに、明言しない伯爵は意気地なし!)
不満でぷくっと頬を膨らませながら、クラーラは侯爵家へ帰る馬車に飛び乗った。
ちなみにこの馬車、色々言い訳しながら伯爵がおばあさまに贈った最新型である。
伯爵は本当に素直じゃない。
「やっと帰ったか…」
遠ざかる車輪の音を聞きながら、アードルフは窓を閉めた。
事ある毎に結婚しろ結婚しろ…口約束をしろ、将来を誓えと迫り来るご令嬢に目眩を覚える。しかもご本人ではなく、おばあさまと結婚しろという。
(お前にいわれなくてもするわ)
それはアードルフにとって、幼い日からの決定事項。
アードルフの嫁は、ヨハンナ以外いない。
既婚者だろうが、相手は年寄り。未亡人になることが決定しているのだから諦める理由がない。再婚だろうが嫁にする。
両親は妥協して別の女を娶れと煩かった。煩かったので、別宅に放り込んでいる。
元々落ちぶれかけていた伯爵家を盛り立てたのはアードルフだ。保身しかできない両親など邪魔でしかない。
アードルフは15年でも20年でも30年でも待つ。それでヨハンナが手に入るなら絶対待つ。晩婚でも構わない。
跡継ぎ問題はあるが、いざとなったら親族から養子を取ればいい。血が遠かろうが関係ない。一滴でも伯爵家の血が入っていればそれでいい。周囲は煩いが、アードルフは強行する気だ。
そう決めているのに、クラーラの望む約束をしないのは訳がある。
かつて嫁にこいと言ったアードルフに、ヨハンナは…。
『あのねアードルフ』
あの日、彼女は仕方がないなぁと笑いながらアードルフに語りかけた。
『私、クラーラが立派な侯爵になるまで再婚するつもりはないの。そう言う約束だし、可愛いひ孫が立派に巣立つのを見送らないと安心できないわ』
愛情深い奴だ。どうしようもない父親も叱り飛ばすが見捨てられず、とうとう流されて年寄りの後妻になってしまうような奴だ。
アードルフが傍で目を光らせて、変な奴に搾取されないようにしていなければならなかった。
だけどアードルフはガキで、親の意向に逆らえず、苦しむヨハンナの傍にいられなかった。
『それが何年後か約束できない。少なくとも15年以上かかるのに、伯爵家の跡取りであるあなたと約束なんかできないわ』
そんな些事、どうでもいいのに重要なことのように語る。
それだけの年月を血の繋がらないひ孫にかけると言いながら、同じ年月アードルフが待つことを考えていない。
『だから、お互い区切りをつけましょ』
諦観に慣れた大人みたいな顔をして、ヨハンナはもうアードルフじゃなくて、新しい家族を慈しむことを決めていた。
女は切り替えが早いという言葉通り、彼女はアードルフへの未練を断ち切って、楽じゃない道を選んだ。
(…未練にして堪るか。俺にとってお前は過去じゃない)
責任感があって、小さな子供が大好きで、家族を大事にするヨハンナが好きだ。
脆弱な侯爵家を捨てて、アードルフの手を取って生きる道を選ばなかったのは…悔しいけどヨハンナらしい。捨てたってよかったのに。ヨハンナは関係がなかったのに「嫁ぎ先だから」って背負ったヨハンナの逞しさが憎らしい。
あの日、ヨハンナがアードルフの手を取っていれば…。
(…今ほど、穏やかではなかっただろうな)
アードルフは事業を立て直す途中で、伯爵家には保身ばかりの両親がいた。侯爵家に嫁いだ事実は変えられず、不義理を働いたことで不利になったかもしれない。余計な勘違いばかりする子爵も健在だったし、何より一度家族として受け入れた存在を捨てて、穏やかに過ごせるほど薄情じゃない。
あの頃はやっと両親を蹴飛ばして事業を継いで、これからというときで。
だからこそヨハンナを連れ戻せるなどと勢いづいていたけれど、今思い返せば勢いだけだった。
悔しいが、ヨハンナがアードルフの手を取らなかったのは最善だった。
…悔しいが。
遠くから待つなんて真似は出来ない。今度こそ彼女が困ったとき助けられるように財力を身につけて、傍で待つ。
結婚を断られたあの日、アードルフは晩婚だろうが絶対結婚してやると決めたのだ。
大人みたいな顔をしてさよならしようとする彼女に、みっともなく縋り付こうと決めていた。
(次は絶対、断らせるもんか)
断られるとわかっているのだから、告げることなどできない。明言したら断られて、ヨハンナに逃げられる。
ガッツを見せろと憤慨するクラーラを追い出して、アードルフは口をへの字に曲げた。
それから2年後。
15歳になったクラーラは貴族学園へと入学した。
学園でよき伴侶を探していたクラーラだが、何故か第三王子と公爵令嬢の痴情のもつれに巻き込まれた。その原因になった周囲を沈静化させるべく、クラーラは周囲を巻き込み大立ち回りを演じることになる。
第三王子に近付いた演技力の高い男爵令嬢を劇団に放り投げ、役に立たない側近だった子息達を単騎撃破。天狗になっていた伯爵子息を学力で黙らせ、男尊女卑だった侯爵子息を礼節ある騎士団にぶち込み、逆に女遊びが激しかった公爵子息は関係者しかいないお茶会に縛り付け慰謝料を巻き上げた。
厳しい婚約者ではなく都合のよい女に浮気した第三王子に浮気男の末路を怪談調で語り、完璧を求め王妃教育で余裕のない公爵令嬢には余暇の必要性を説いた。
半分以上を更生させたクラーラは第二王子にしっかり目をつけられて、派手に大立ち回りしたクラーラに近付く子息もおらず…。
更に3年後。
クラーラは第二王子に心身共に捕まった。
第二王子は侯爵家に臣籍降下し、婿入りが決定。
王家のテコ入れが入った侯爵家はより盤石になり。
ヨハンナの役目が終わった。
すぐ手放さないが、彼女が侯爵家から一歩下がったそのとき。
白馬に乗った王子様は現れなかった。かわりに最新式の馬車に乗った幼馴染みが彼女を迎えに駆けつけた。
馬車に彼女を乗せた幼馴染みは、不器用に宣言する。
「ヨハンナ。結婚してやる」
「お断りします」
「何故だ!」
求婚を断られて半泣きになるアードルフに、ヨハンナは仕方がないなぁとヒントをくれた。
「年を取っても女は乙女なので、その言い方じゃ頷けないわ」
「…」
結婚してください。
素直じゃないアードルフがヨハンナにそう伝えられたのは、馬車が目的地に到着して、更に一時間が経過してからのことだった。
誤字報告いつもありがとうございます。
見直しても見つけられない不思議…何故…思い込み…?