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魔法科医の訪問診療記  作者: キセノン
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初めての共同作業①

魔法科管理庁(まほうかかんりちょう) 対魔物戦闘師(たいまものせんとうし)課から参りました、橋見(はしみ) 心音(ここね)と申します! 不束者ですがこれから三か月間よろしくお願いします!」


 まさに天真爛漫といえる声が院内に響き渡る。


 内向的性格な僕とは真反対な性格を持つであろう彼女とこれから三か月間という長い長い期間を共にすることを彼女の挨拶の中で再認識しながら診察器具を鞄へと詰める。


「あ、あの!これから診察に向かわれるのですか!…でしたら私も準備をしてきます!少々お待ちを!!」


 問いに対する答えを教える前に早々と部屋を出ていく。事実これから診察に向かうのだから間違ってはいないのだが。しかし、これからどうしようか。


 あちらは派遣先のことは聞いているはずだから、僕のことも何かしら聞いているのだろうけど自己紹介に対して何も返さないという極めて失礼な、考えられるなかで最悪な対応をしてしまった。元より挨拶はしっかりとすると意気込んでいたのだが、彼女の思わぬ元気さに気圧されたのだ。


 そんな風に自分の行いを顧みていると、宣言通りすぐに彼女は帰ってきた。

「お待たせしました。私はいつでも出られます!」


「え…えっと…、じゃあこれから往診に向かうから、ついてきてください。自己紹介はあとでするから。」


「わかりました。よろしくお願いします!」


 この先に不安を覚えながら、二人は往診に向かうのだった。


 ◆◇◆◇◆◇

 一面に広がる花畑、壮大な湖、遠くまで連なる山々。この魔法列車から見えるこれらの光景はいつも僕の心を晴れやかにしてくれる。この晴れやかな気分に乗せて自己紹介するのが最善だろうと考えた僕は長く降りていた沈黙を破った。


 「えっと…、僕のことはどのくらい聞いているのかな。まず僕の名前は音無(おとなし)(とおる)、徹底の徹で(とおる)です。僕は魔法科訪問医、世間ではMDVって呼ばれる医師です。あと、

専行魔法の種類は回復師(アナスター)死霊師(ファンタズマー)です。えっと…とりあえずはそのぐらいかな。」


 「一応上からは音無さんがMDVだということは聞いていましたが、専行魔法がアナスターとファンタズマ―だということは聞いていませんでした!珍しいですね、対立種類の魔法を持っているのは!」


 「そうですね、確かにあまりこの二つを一緒に持っている人は見たことがないですね…。そもそもファンタズマ―自体母数が少ないので…。あ、でもそういえばアメリカの魔闘師にファンタズマ―を持った強い人がいましたよね…。橋見さんは専行魔法は何なんですか?」


 「えっと…その…。」


 出会って初めて彼女の明るい顔が曇る。何かまずいことを聞いたのか…?


 「私、実は子供の頃に魔力嚢に病気が見つかって、専行魔法は火炎師(フォーティアー)らしいんですけど…その病気を医師の方に治療していただくときに魔力嚢に封印魔法を使ったことで魔法が不得手なんです。」


 魔法は通常魔力嚢から魔力を全身や特に魔法を発動する箇所に巡らせることで使用することが可能になる。

 もし幼いころに魔力嚢に封印魔法を使われたのなら、確かに身体への魔力循環が自由にできず魔法を上手く発動できなくても何ら不思議でない。こういった魔力嚢の治療は僕達MDVなの仕事だから間違いない。


 再び二人の間が沈黙に支配される。


 「あ、あのでも私魔闘師としてはかなり優秀ですから!自分で言うのもなんですけど…」


 へへっと彼女は笑顔を浮かべる。


 「いや…確かに試験的にMDVのもとに送られるということは本当に優秀なんだろうね。少し発言が無神経でした。すいません。そして改めてこれからよろしくお願いします。」


 「謝らないでください!もともと魔法の話を広げたのは私ですし!それに畏まらないでください!こちらこそこれから三か月間よろしくお願いします!えっと、話は変わりますけど、あとどのくらいで目的の場所に到着するんですかね?かなり長いこと来ましたけど…」


 「うーん…じゃあもう敬語はやめにする。もうすぐで着くはずなんだけど、少し遅れている気がするね。それに何か、先頭車両の方が騒がしい…?」


 そう疑問を抱いたのも束の間、車両に放送が響き渡った。


 「ご乗車中のお客様にご連絡します。ただいま列車が推定4メートルほどの身体から炎を発するオーク型の魔物と遭遇いたしました。お客様の中に魔闘師の方がいらっしゃいましたら、車両先頭までお越しください。」


まさに森に列車が差し掛かろうとする中での出来事だった。




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