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魔法科医の訪問診療記  作者: キセノン
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出会と再会

 その少女は純潔であった。

 その少女は謹厳実直であった。

 その少女は人を思いやり、優しさをもって接する鑑であった。

 しかしー少女は力を持っていなかった。病に抵抗する力を。



 激しく動悸する心臓、酷く発汗する身体、にも関わらず少女の顔は青ざめている。魔力を蓄える器官である魔力嚢(まりょくのう)を徐々に蝕む病である魔染病-魔力嚢に蓄えられた魔力を汚染し、それらが全身に巡ることで引き起こされる-の典型的な症状だ。

 少女は目を閉じる。

 耐え難い痛みに悲鳴をあげる身体を前にもはや生き長らえたいという意志はもう殆ど残っていなかった。


 ああ、やっと楽になれるのかという朦朧とした意識の中父親の声が部屋を響く。


「先生がきたぞ!心音(ここね)、もう少しの辛抱だ!」


 名前を呼ばれることで朦朧としていた意識が少しはっきりとする。床に伏していた身体を起こし医師に身体を向ける。


「じゃあ、心音さん、今から魔法を使って魔力嚢を診るからもし何か身体に異変を感じたらすぐに声を発するか手を挙げてー


 医師の話を傍らに瞼が落ちる。少女はその医師のまずいなといった声の中意識を失っていったのだった。


 ◆◇◆◇◆◇

 西暦2045年、日本の魔力に関する病気を担当しているMDV-魔法科訪問医〈magicology visiting doctor〉-である僕、音無(おとなし) (とおる)は窮地に立たされていた。

 

 魔法科管理庁が近年の魔物-特に先天的に魔力を持った-の出現数の増加に伴い訪問診療医などの様々な場所に向かう職業の者は必ず一人以上対魔物戦闘師-通称:魔闘師-の資格を持った助役を連れなければいけないという決まりを制定してしまったのだ。

 

 その施行前にお試しで魔闘師が派遣されるとのことなのだが、悲しいことに僕はあまり人との交流が得手でない。

もちろん、業務の中のコミュニケーションは全く、本当に全く嫌いでも不得手でもないのだがそれ以外は非常に苦手なのだ。

 

 それが数奇な縁によって再開した、自らが治療を担当した患者相手出会っても、全くといっていいほど例外ではなかったのだ。

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