全力で★を要求する怪文書
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嘘です。
お使いの端末は爆発しません。
騙してしまって本当に申し訳ありません。
ですが私は、どうしてもあなたに★を付けていただきたかったのです。
なぜならこのエッセイは、
『★を付けるだけで幸福が訪れる』とSNS上で話題沸騰のエッセイだからです!
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あの世界的大企業を創業したスティーブ・ジョーズ氏は、
亡くなる直前に次のような言葉を残したと言われています。
「もっとなろうで★を付ければ良かった」
彼は現代で最も偉大な成功者ですが、そんな彼でも人生の最期に後悔することは、
なろうで読んだ小説に★を付けなかったことだそうです。
不思議に思われるかもしれませんが、
これは決してスティーブ氏だけの特殊なケースではありません。
2020年にハートリー大学で行われた最新研究でも、
『なろうで★を付ける人は付けない人より人生の幸福度が高い』
ということが示されています。
この研究は日本のなろうユーザー10000人を対象に調査したものです。
まず被験者を2つのグループに分け、
一方のグループには小説を読んだら★を付けるように指示し、
もう一方のグループには★を付けないように指示します。
また、その他の要因で幸福度に差が生じないよう、
全ての被験者に同じ食事、睡眠、運動をするように指示し、
その状態を一か月間継続してもらいました。
そして最後にアンケートを行い、
小説に★を付ける行為が人生の幸福度にどのような影響を及ぼすのか調査しました。
その結果、なんと★を付けたグループは付けなかったグループよりも、
67%も幸福度が高いことが判明しました。
あまりピンと来ない方もいらっしゃるかもしれませんが、
これは人生における幸福の絶頂とされている『結婚』に次ぐ数字です。
しかも驚くべきことに、★を付けてもらったグループの中で、
『★を付けたせいで不幸になった』と答えた方は、たったの0.2%でした。
幸福の絶頂である『結婚』ですら約30%の人が後悔し、不幸になることを考えると、
幸福な人生を過ごすために最も大切なことは、
結婚ではなくなろうで★を付けることです。
これが科学の結論です。
人類の歴史は欲望と争いの歴史でした。
限られた食料を奪い合い、実り豊かな土地を争って戦争し、
今では『物に溢れた豊かな生活』を維持するために、
あらゆる人が過酷な資本主義競争の中で、
大量生産大量消費社会を回す歯車として命を削っています。
これらの争いは、欲望を満たそうとして有限の物を求めた結果、
生まれてしまう悲劇です。
しかし今、人類は新たなステージに立とうとしています。
それが『★を付ける』という行為です。
私たちはただボタンを押すだけで、無から★を生み出すことができます。
それだけで作者の承認欲求が満たされるのです。
これはさながら、食料のない荒野で飢餓に苦しむユダヤ人を憐み、
天からマナを降り注いだ神の如き奇跡の御業です。
今まさにあなたの前には、
承認欲求に飢え渇き投稿サイトを彷徨う流浪の民がいます。
あなたは彼らのために、無から★を創造し与えることで、
その乾いた心を潤すことができるのです。
ところで、大いなる力には大いなる責任が伴うものです。
読者に見捨てられ、★による癒しを受けないまま肥大化した承認欲求は、
やがて迷惑系投稿者という形で注目を集めようとすることが知られています。
これは単純に投稿者本人の倫理観の問題とみられがちですが、
その裏には★を与えることもできたのに与えなかった読者の責任もあることは否定できません。
あなたには大いなる責任があります。
まずはこの文書に★を付けてみましょう。
その一歩から、世界に平和が訪れるのです。
「★を与えよ。そうすれば、自分にも★が与えられるであろう。」
(ルカによる福音書 6章 38節 筆者訳)
このエッセイに登場する研究、キャンペーン等はすべてフィクションです。
しかし作者が★を渇望していることは、紛れもない真実です。