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厄災戦争 大魔王アザトースvs世界1

 

 世界各地で厄災の戦争が始まった頃。神聖皇国の西側にある開けた平原では、10年近く前に起こったはずの戦いが再び始まろうとしていた。


 地球から来た勇者達。


 彼らは元々、女神イージスのお告げによってこの世界に呼び出され、“七大魔王”を討伐する事を目的としていた。


『3年後に復活する大魔王を倒して欲しい』


 かつて言われたその言葉は、10年以上の時を経て今ここで達成されようとしている。


 女神の目を欺くために魂を7つに分け、初代勇者に封印され、更には念には念を入れて悪魔を魔王として人類に討伐させた。


 そして時が来た今、大魔王アザトースは動き出す。


 例え仲間の全てが滅びようとも、この戦いに勝つつもりであった。


 もちろん、目の前で対峙する神聖皇国軍の面々も勝つつもりであり、この戦いが世界の命運を分けることは誰もが分かっている。


 勇者の異能を持ち、前線へと立つ光司と親友に振り回されてばかりの龍二は頭を抱えたい気持ちを抑えながら静かに武器を構えた。


 「アイツ、マジで1発殴らせて欲しいんだけど。何が“大魔王アザトースが生きてるから後はよろしく”だ。説明が無さすぎるんだよ」

 「それに関しては同意だね。いつもそうだが、仁君はあまりにも説明が足らなすぎる。念の為に教皇陛下に話を通しておいたから良かったけど、もう少し詳しく話して欲しかったな」

 「花音はもうどうしようもないとして、朱那も何やってんだよ。いやホントに。仁から話を聞いていただろうから、俺達にもそれを話してくれって。アイツ、酒ばかり飲んでたお陰で脳が縮んだんじゃないだろうな?」

 「アハハ。有り得そう」


 仁から“大魔王アザトースが復活している”と話を聞いた光司と龍二。


 それに関しては最低限の説明こそあったものの、この場に大魔王アザトースを転移させる事については詳しいことを聞いていない。


 急に“大魔王アザトースをこの平原に飛ばすから後はよろしく”なんて手紙が届い送られてくるのだから、何が何だか分からない彼らにとっては溜まったものでは無いのは確かだ。


 しかも、ほんとうに大魔王アザトースと思わしき存在が目の前にやってきたとなれば尚更である。


 この世界に来る前から色々と振り回されてきた龍二と言えど、文句の一つや二つは言いたくなるものだ。


 「アレが大魔王アザトース。2500年前に世界支配しようと動いた凶悪な魔物。リュウジ、正直な話、私は戦力にならんぞ?人間相手ならまだしもな」

 「私もですね。人型ならともかく、化け物の姿に入っ私の異能も効きません。おい、リュウジ。バカ弟子に言っておけ。“死ね”ってな」

 「ストレートな暴言ですね副団長。とは言え、俺もそう言ってやりたい。あのバカは俺たちにこの場を任せて他の敵と戦っているらしいけど、んな事知らねぇよ。俺達は人間だぞ?無理だってこれは。化け物基準で物事を考えないで欲しい」


 アイリスとシンナスの言葉を聞いた龍二は、激しく同意しながらも拳を構える。


 数多の戦場を駆け抜け、世界規模の戦争にすらも参加した龍二と言えど今回ばかりは死ぬかもしれないと心の中で思っていた。


 剣聖相手に殺されかけた事はあったが運良く生き延び、今となっては守るものも増えた龍二。


 来年辺りには子供を作ろうかと思っていたにもかかわらず、親友から死をプレゼントされかけていることにイラッとしながら冷静に大魔王アザトースを見つめる。


 見上げるほどにまで大きいその巨体と、無数の触手。


 人1人程度なら余裕で叩き潰せそうな触手をどう攻略しようか悩んでいると、ついに大魔王アザトースが口を開いた。


 「そこの貴様。かつての勇者と同じ気を感じるな。今代の勇者か?」


 その言葉には物理的な重みがあり、その場にいた兵士達の何名かが膝を着く。


 龍二もその重みを感じ、実力差を感じ取った。


 しかし、女神の加護を受ける光司と今回ばかりは戦闘に参加している“禁忌”ロムスだけは普通にしている。


 大魔王アザトースはこの2人が障害となり得ると判断しつつも、油断はできないと目を細めた。


 「僕が一応勇者だ。大魔王アザトースだな?」

 「いかにも」

 「復活したとは聞いていたけど、まさかここまで醜い魔物だとは思わなかった」

 「新たな勇者が出現したとは聞いていたが、まさかここまで弱そうだとは思わなかったな。まだあのイカれた人間相手モドキの方が強いぞ」

 「........誰のことを言っている?」

 「ジンとか言う名だったか?夢の中で見ていたが、実に頭のおかしい奴だな。その隣にいた女も。あれは別方向で頭がヤバいやつだったが........」


 世界を震わせた大魔王にすら“頭がイカれている”と言われる仁と花音。


 彼らの素を知る龍二達は、思わず大魔王の言葉に頷いてしまった。


 「仁のやつ、大魔王にもイカレてるって言われてるぞ。否定はしないけれども」

 「まぁ、確かに仁君も花音さんも頭のネジがだいぶ緩んでるよね。どうしてだろう、大魔王と仲良くなれる気がする」

 「奇遇だな。私もだ。あの狂った夫婦の話だけは盛り上がれそうだ」


 ボロカスに言われる仁と花音。


 もしふたりがこの場にいたら、大魔王諸共げんこつを食らわしに行っていた事だろう。


 「フッハッハッハ。では、始めるか?」


 自分の感覚は人間と似ているんだなと思ったアザトースは、少し愉快そうに笑うと本格的に戦闘態勢に入るのだった。

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