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厄災戦争 無限と支配者は世界を壊す1

 

 正教会国の中心部、まだ移住が住んでおらず人々の気配がない跡地にて、“浮島”アスピドケロンと“輪廻の輪”ウロボロスは“破壊竜”バハムートと“三頭”アジ・ダハーカと対峙していた。


 厄災の名を冠する龍が四体。


 その光景は、一般人からすればこの世の終わりとも思えるような光景である。


 「お?魔力の高まりをあちこちで感じるね。私たち以外にも好き勝手にやってる子が多いみたい」

 「だな。儂らよりも強い魔力も感じる。おそらく団長殿だ。ここからはかなり距離が離れているはずなのだかな........相変わらずの規格外ぶりだ。さすがは本気を出せば、この世界を消せるだけの力を持っているだけある」


 竜種と言うのは、ほかの生物と比べて感覚が圧倒的に優れている。


 アスピドケロンとウロボロスは、仁やほかの厄災級魔物達の魔力を感じて“戦いが始まった”と確信した。


 仲間の勝利は疑っていない。


 どんなに相手が強大であろうとも、自分達に敵う相手は居ないと確信している。


 それは目の前の相手にも言えることであり、バハムートとアジ・ダハーカを見ても余裕の態度を崩さなかった。


 「あちらこちらで魔力こ高まりを感じる。完全に仕組まれたな。相手は最初からこちらを殺す気で準備していたらしい」

 「愚かな........と言いたいところだが、我らの前に居る厄災達を見るに油断出来ない。これほどにまでの戦力を持った組織がアドム以外にも居るとは予想外だ」

 「人々を殺し、女神を殺さなければならないというのに、面倒事が増えるとは。俺はこの角を持って言った奴らを殺したいだけなのにな」

 「そうボヤくな。バハムート。角は後でも取りに行けるだろう?」


 “破壊竜”バハムート。


 竜種の魔物の中でもかなり有名な一体であり、かつて合衆国とやりあった過去がある。


 当時バハムートは、ほかの厄災級魔物と戦っていた反動で弱っており、その隙を付いた人間達がバハムートの角を一つ取り去ったのだ。


 それが、当時の合衆国を代表するミスリル級冒険者“初代”聖刻である。


 狙われたバハムートは当時の合衆国に甚大な被害をもたらしたが、それでも滅ぼすまでには至らず。


 討伐こそされなかったものの、さらに傷ついたバハムートは力を取り戻すまでの間静かに隠れ潜む事になるのだった。


 バハムートがアドムに力を貸す理由は、人間種の絶滅。


 1人でもできなくは無いが、人間も抵抗してくることを考えると誰かと手を組んだ方がいいと判断したためだ。


 その対価が女神との戦争なのだが、同じ神がいるのなれば勝率も高い。


 「今なら見逃してあげるよ?私は平和主義者だからね。人類を滅ぼし、女神を殺そうとしなければ、穏やかな余生が送れると思うんだけど?」

 「ほざけ、デブ。覚悟は最初から決まっている」

 「「あっ........」」


 アスピドケロンの降伏勧告に対し、キツイ言葉で言いかえしたバハムート。


 しかし、選んだ言葉があまりにも悪すぎた。


 厄災級魔物と言えど、心はか弱い女の子。


 どれだけ巨体を持っていたとしても、その体格を弄ると言うのはデリカシーに欠ける。


 ましてや“デブ”呼び。


 あまりデリカシーのないウロボロスですら、絶対に言わない言葉。


 2人の話を聞いていたウロボロスと空気の読めるアジ・ダハーカは、思わず“あっ........”と言ってアスピドケロンを見た。


 「デブ........デブって言ったな?私が気にしていることを........!!ぶっ殺すぞクソガキがァ!!」


 普段の口調からは考えられないほどドスの効いた声でキレるアスピドケロン。


 仁ですら恐ろしくて冗談でも言わなかった言葉を言ってしまったバハムートは、次の瞬間何かに弾き飛ばされて近くの山に体をぶつけた。


 「ゴッ........!!」

 「誰がデブだ!!あ゛ぁ゛?!生きて帰れると思うんじゃねぇぞ!!」

 「ゴッ、ガッ、ブッ!!」


 怒りに任せてバハムートをボコボコに吹っ飛ばすアスピドケロン。


 仲間であるアジ・ダハーカは本来バハムートを助けなければならないのだが、今回ばかりは自業自得なので助けはしない。


 代わりに、こっそりそばを離れて嵐が過ぎ去るのを待っていたウロボロスに近づいた。


 「なんと言うか、ごめん。バハムートがあそこまでデリカシーの無いやつだとは思ってなかった」

 「アスピドケロン相手に体格の話はタブーだ。悪意のない“大きいねぇ”とかなら笑ってくれるが、流石に“デブ”はダメだろ........」

 「魔物と言えど女の子。だからバハムートはモテないんだよね」


 バハムートの自殺行為を見て、アスピドケロンに同情してしまった2人は敵同士だと言うのに仲良く話す。


 あまりにも怒り心頭なアスピドケロンをどうやってなだめようか考えるウロボロスと、馬鹿な相棒を付けられて困るアジ・ダハーカ。


 この厄災級魔物二体は、意外と似た者同士なのかもしれない。

 

 主に、面倒な仲間を持った苦労人として。


 「少し待つ?俺も手を出さないよ」

 「話がわかるな。なぜ女神に仇なす」

 「俺にも色々と事情があるのさ。女神には興味無いが、人類を滅ぼすことには賛成なのでね」

 「なるほど。団長殿と先に出会っていれば話の分かる友として語り合えたかもしれんのに」

 「........だといいね。さて、彼女の機嫌が治まるまではのんびりしよう。バハムートも偶には痛い目にあって反省しなよ」

 「フハハハ。その後死ぬかもしれんがな」

 「その言葉、そっくりそのまま返させて貰うよ」


 妙に仲良くなってしまったウロボロスとアジ・ダハーカは、アスピドケロンの怒りが収まるまでのんびりと待つのだった。

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