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厄災戦争 目覚める太古は終焉の為に3

 

 アトラス大陸。


 それは、ニーズヘッグによって沈められた太古の大陸。


 かつては、様々な魔道具や魔術の知識によって世界を支配するとまで言われ、事実、ひとつの大陸が国であった。


 その国の名は“アトラス魔道帝国”。


 人の身では決してたどり着かない境地の力を手にし、時として内戦を起こしていたこのアトラス魔道帝国だったが、ある時の王によってその繁栄は終わることとなる。


 アトラス魔道帝国最後の王“ジルフール・アトラス”の手によって。


 彼はわかっていた。この強大なる力が、後に人類を滅ぼすことになるだろうと。


 当時、別大陸に侵攻を開始しようとしていたらアトラス魔道帝国だったが、彼は乗り気ではなかった。


 過ぎた力はいずれ人々を殺す毒となる。


 だから、彼は当時友人であったニーズヘッグに頼ったのだ。


 “この大陸を沈め、この強大な力を終わらせろ”と。


 ニーズヘッグは最初嫌がったがジルフールの覚悟は固く、最終的にニーズヘッグは願いを叶えることにした。


 そして、彼らは海の中で静かに眠ることとなる。


 この世界を滅ぼしかねない時のみ、この世界に現れるとニーズヘッグと約束して。


 「久しいですね。最後にあったのは10年前でしょうか?団長さん達と共に追放楽園を出た時以来ですかね?」


 海が割れ始め、大地が顔を出す。


 ニーズヘッグはどこか懐かしみながら、彼がこの世界に再び姿を現すことに喜んだ。


 人間の友であり、仁達に出会う前に唯一この背中に乗せた存在。


 ニーズヘッグは彼から人の言葉を教わり、彼との繋がりを感じ続ける為に人の言葉を話続ける。


 「──────────」

 「あの人間二人を始末してください。方法は任せますよ」

 「──────────」


 人の耳では聞こえない音を聞いたニーズヘッグは、楽しそうにしながらレナードとクロネスの始末を依頼する。


 ニーズヘッグ1人でも勝つ事は出来るがらどうせなら、彼の勇姿を見たかったのだ。


 「な、なんだあれは........」

 「バカでかい島?いや、島というか、大陸やねー」


 突如として現れた巨大な大陸に混乱するレナード達は、自分が今厄災級魔物と戦っている事も忘れてその大陸に目を奪われる。


 彼女達はこの大陸がかつて滅んだアトラス大陸だとは気づけなかった。


 それもそのはず。


 滅んだ大陸が再びこの世界に姿を現すなど、誰も思いもしないだろう。


 仁だって最初は混乱するかもしれない。


 「では、行きましょうか」

 「──────────」


 次の瞬間、地面の下から数多の魔道具が顔を出し、その全てがレナード達に向けられる。


 世界観を完全に無視したメタリックな魔道具達は、レナード達を標的と定めると攻撃を開始した。


 ピュン!!


 と、白色のレーザーがあちこちから放たれ、更にはミサイルのような形をした飛翔物まで飛んでくる。


 どう考えても人間二人に対して飛ばす火力では無いが、数万年ぶりの地上世界を見たジルフールはテンションが上がりまくっていたので仕方が無い。


 それに、彼は海の中で見ていた。


 終末の異能を持つ二人の人間が暴れ回っていたのを。


 これだけの火力を持ってしても、殺せはしないと分かっているので心置き無く兵器をブッパできるのだ。


 「ッ!!糞が!!なんだこれは!!」

 「ちょちょちょ........!!これはあきまへんなぁ。死んでしまうて!!」


 空を飛び、自身の異能を使って死ぬ気で身を守るレナードとクロネス。


 クロネスはこのような攻撃に弱いのでレナードに守ってもらう形ではあるが、それでも何とかこの猛攻をしのぎ続ける。


 この調子で相手が息切れするのを待つしかない。


 そんな考えがレナードによぎったその時だった、


 火山灰で暗くなっていた空が僅かに光り輝く。


 空を見上げれば、見たこともない程の巨大な魔法陣が現れている。


 「なんやあれ........見たこともない魔法陣やで」

 「やばいやばいやばい!!あれは死ねる奴だ!!」


 レナードは自らの危険を察知すると、一切手加減無しの大噴火を起こそうと魔力を練り始める。


 クロネスもレナードが何をしようとしているのかを察知し、できる限り防御に徹した。


 「ありゃりゃ、これを使うのですか?下手をすると、向こうの大陸まで被害が行きかねませんねぇ」

 「──────────」

 「世界が滅ぶよりはマシ?ハハハ。それはそうですけどね?」


 巨大な魔法陣を見つめながら笑うニーズヘッグ。


 その魔法陣は、かつてアトラス魔道帝国が内戦の時に使っていた禁術なのだ。


 “巨大岩石落下(インパクトフォールン)”。


 直径5km程の巨大な岩石を、空から落とす禁術。


 隕石が落ちてくるスピードで落としはしないが、それでも周囲に多大な被害を齎す化け物のような魔術である。


 本来は魂を消費する代物であるが、彼らはそのデメリットを打ち消せるだけの技術を持っていた。


 「破局噴火(レバ・カタストロフ)!!」


 レナードは落ちてくる巨大な岩石に対して、全力の噴火を起こす。


 この時点でこの世界の気候は狂いに狂うのだが、そんなことを気にしている場合ではなかった。


 世界をも滅ぼす噴火が岩石を破壊せんと吹き飛ぶ。


 しかし、彼女たちは腕に気を取られすぎた。


 上も本命ではあるが、下も本命。


 その隙をジルフールが見逃すはずもなく、魔力を圧縮したレーザーで2人の心臓を的確に撃ち抜く。


 「........カッ」

 「........しまっ」


 幾ら強かろうと、人間であるかぎりそのからだは脆い。


 レナードとクロネスは、力無く海に落ち、更にトドメと言わんばかりに岩石が上から落ちてくる。


 ドゴォォォォォン!!


 と巨大な水飛沫を上げながら海へと沈んでいく岩石。


 射程範囲内から逃げていたニーズヘッグは、その様子を見ながら楽しそうに呟いた。


 「討伐完了。私は少しだけ友人との仲を深めましょうかね。悪魔も魔王も、他の人が向かってくれるでしょうし」

 「──────────」

 「アハハハハ!!大丈夫ですよ。団長さんがいれば全て丸く収まります」


 ニーズヘッグはそう言うと、この戦いで起きた二次被害は計り知れないんだろうなと思いながらジルフールと話すのだった。



 その日は近くの山に山菜を取りに来ていた。山菜を取っている最中、何やら大きな音が聞こえると思い振り返ると、そこは海へと変わっていた。街は水の中に飲み込まれ、この山にも迫る勢いだった。私は全力で山を登り事なきを得たが、街にいた人々は死んでしまった。あれは神の怒りなのだろうか?全てが終わったあと旅をしてわかった事だが、あの日海に飲まれた街は私が居た所だけではなかったらしい。分かっているだけでも100以上の街と村が飲み込まれている。その日から、私は海を見ると恐怖に震えるのだ。灰色の空を見上げながら。“とある旅人の日記”より。

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