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世界最強からの贈り物2

 

 準備を終えた俺達は、ついにショーの幕開けと行くことにした。


 この日のために色々と準備してきたので(リハーサル1回しかしてないし、なんならほぼアドリブ)きっと上手くいくだろう。


 少なくとも、今日参列している人達に被害を出すような真似だけは辞めておかないとなと思いつつ、俺はトップバッター達に指示を出す。


 「派手に頼むぞ」

 「フハハハハ!!任された!!」

 「了解よ。彼とは知らない中では無いし、盛大に祝ってあげましょう。リーシャ、頼めるかしら?」

 「私の煙が必要ならば何時でも」


 トップバッターを任された吸血鬼夫婦は、自信満々に頷くとそのまま空へ飛び出す。


 2人は吸血鬼として翼を持っているので、空を飛ぶのは自由自在なのだ。


 魔物としてバレるんじゃないかという心配もあるが、これに関しても問題ない。


 “世界最強の傭兵団の団員だから、背中から翼を生やして空を飛べるよな”と思われるだろうし、なにか突っ込まれれば“能力”と答えておけばいい。


 元々、人間に近い2人だからこそできる芸当である。


 ちなみに、リーシャが呼ばれているのは彼女の能力が便利すぎるからである。


 ストリゴイの能力は少しおぞましいので、使わないとなると自然と誰かの助けが必要となってしまうのだ。


 「では行きましょう“黒薔薇の鎌(ブラックローズ)”」

 「フハハハハ!!我は純粋に殴るとしようか!!」

 「煙を散らせるのも大変なんですけどね。|深き紫煙《Deep Purple》」


 リーシャがキセルから煙を吐き出すと、その煙は形を変えて大きな球体となる。


 純白の雪だけを使って出来たような白い玉に、スンダルは容赦なく鎌を振りかざした。


 「200当分ぐらいかしらね?アナタ、全部壊せる?」

 「フハハハハ!!舐めるでないわ!!余裕余裕!!」


 一瞬の間に細切れにされる煙。空に散った煙をストリゴイが拳で更に砕く。


 砕け散った煙は雪のように舞い散り、モヒカンとマリア司教の結婚を祝うかのようにハラハラと美しい光景を映し出した。


 「これ、普通にリーシャが煙で雪を再現するだけでいいよね」

 「花音、それを言ったらダメだ。パフォーマンスとしてやってるんだからな」

 「まぁ、盛り上がってるからいいんじゃない?次は私達だね」

 「レッツゴー」


 ストリゴイとスンダルの出番が終わると、次は堕天使組が出てくる番。


 2人は堕天使の羽を出す訳にも行かないので、空を飛ぶことはなく地上でその美しさを披露してくれる。


 「堕天したけど、能力はそのままだからね。少しは見栄えがあると思うよ」

 「私、回復系の異能だけど、ちょっとは見応えのあるものもあるんだよー」

 「それじゃ、元天使達の祝福をご覧あれ。“擬似太陽(ザ・サンシャイン)”」


 黒百合さんが魔力を使って能力を行使する。


 太陽の如く輝く太陽は、暑さを感じさせはしないがとてもつもない輝きを誇っていた。


 更にここからラファエルが追い打ちをかける。


 「悪い所は治そうねー“三番大天使(ラファエル)”」


 ラファエルが能力を使った瞬間、太陽の色が黄金から緑色に変わる。


 人々に安らぎを与えるとされる緑色は、観客たちの疲れを癒し酔いを覚ました。


 前も思ったが、ラファエルの異能は強すぎるな。死んでも尚生き返れる異能とか滅茶苦茶過ぎるだろ。


 ちなみに、ファフニール曰く俺ですらラファエルは殺せないらしい。


 例え存在そのものを消滅させようと、異能の力によって存在ごと復活させてしまうとの事だった。


 現状、俺が唯一殺せない相手と言っても過言では無いな。殺す気なんてサラサラ無いけど。


 ラファエルの癒しの波動によって人々が癒され、その後も俺達は自分の特技を使って観客たちを楽しませた。


 ダークエルフ組はシルフォードの炎とサラの炎を使った演武を、獣人組はリーシャの異能を使いつつプランの矢で鮮やかな雨を降らせる。


 俺と花音も負けじとイスと力を合わせてクソでかいオブジェを作ったりした。


 残念ながら、俺と花音はこう言う見世物に向いた能力ではない。


 正直俺達要らなくね?とは思ったが、俺達だけやらないのもアレなのでできる限り簡単で見応えのあるものを選んだのである。


 さすがに他の団員と比べるとインパクトに欠けるが、これはこれで盛り上がったのでよしとしよう。


 今度宴会芸用の使い方でも考えておくか。


 「ようやく私の出番ですか」

 「最後の大トリだ。派手に頼むぞ」

 「安心してください。少なくとも、先生達のなんとも言えないオブジェよりはマシですよ」

 「........」

 「ほんと、生意気になったねぇ」


 チクっと言葉のナイフを刺してくるエレノラに軽い殺意を抱きつつも、事実なので何も返さず無言を貫く。


 遅めの反抗期が俺達に向いてくる辺り、実にエレノラらしくてムカつくな。


 「では、巨大な花を咲かせましょう」


 軽く殺気を向ける俺達をガン無視するエレノラは、爆弾に一斉に火をつけると天高くに花を咲かせる。


 昔花火の仕組みとして、理科の授業で色々と学んだのがこんな所で活きるとはな。


 華々しく輝く空の花は、爆音を鳴らしながら新郎新婦を祝福する。


 天高く舞い上がる花は色鮮やかで、昔遊びに行った花火大会を思い出させた。


 「懐かしいね」

 「そうだな。すごく懐かしい。態々浴衣を着てまで行ったあの夏休みの祭りを思い出すよ」

 「懐かしいなぁ........お父さんとお母さん、元気にしてるかなぁ........」


 異世界組にとってこの光は懐かしの灯火。


 もう戻ることが出来ない地球で見た花火の輝きを懐かしみ、ただ見守ることしか出来なかった。


 「そういえば、団長殿は異界からの訪問者だったな」

 「懐かしいんでしょうね。私達と出会ってもう10年近く経っているんだから。シュナを見なさいよ。目尻に涙が浮かんでるわよ」

 「これが団長の故郷で見られた景色なんだ」

 「リハーサルの時も思いましたが、綺麗な花ですね」

 「フハハハハ、センチメンタルに皆浸りすぎだな。これでは誰を祝っているのかわからん」

 「フフッ、あちらは盛り上がってるけどこちらはお通夜ね。ちょっと面白いわ」


 そこの吸血鬼共、ちょっとうるさい。


 エレノラには聞こえない声量で話す吸血鬼夫婦達に呆れながらも、俺はもう戻れない故郷を思い出して感傷に浸るのだった。


 エレノラにこの爆弾の作り方だけは教わっておこうかな。

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