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結婚式の大宴会

 

 ちょっと待ったをしようとした愚か者達を瞬殺(殺しては無い)し、教会に戻ってくるとまだ静かな時間が続いていた。


 モヒカンとマリア司教の幸せを壊そうとした者達はこの後、傭兵達から口には出せないような仕打ちを受けることとなるだろう。


 傭兵団の身内意識は高く、彼らは面子が命みたいな所があるのできっと容赦しない。


 衛兵ですら下手したら参加しそうである。


 「おかえりなの」

 「ただいまイス。思ってたよりも早く帰ってこれたよ」

 「先生達に喧嘩を売るとか、命知らずにも程がありますね。そんなにはなく死にたいんでしょうか?」

 「エレノラ、世の中には馬鹿を超えたバカもいるんだよ。私達を殺そうとしたアホもいたぐらいだしねぇ」

 「........マジですか」


 今の俺しか知らないエレノラからすれば、世界最強を殺そうとする愚か者に見えるだろう。


 しかし、当時はまだまだ弱く、財力も権力も暴力も持ち合わせていなかった。


 今となっては笑い話だが、当時は大変だったな........


 そんな事を思いながらモヒカンとマリア司教を待つこと数分。


 遂に教会の扉が開かれて、新たなる夫婦がこの場に誕生する。


 この結婚の儀式を終えて初めて、この世界では夫婦として認められるのだ。


 パチパチと鳴り響く拍手の雨に晒されたモヒカンとマリア司教は、照れくさそうにしながらもこちらに向かって手を振る。


 さらに拍手は大きくなり、実に5分間の間ずっと拍手が鳴り響いていた。


 そんな拍手を送る俺たちに近づいてくる気配が1つ。実に見知った気配の持ち主は、少し残念そうに俺に話しかける。


 「残念。間に合わなかった........」

 「よう。バカラム。姿が見えなかったから、来ないのかと思ったぞ」


 “双槍”のバカラム。


 このバルサルの街で最も強いとされる衛兵であり、我らがギャル“浮島”アスピドケロンが暴れた際に足止めの役を担っている奴だ。


 過去に1度戦った事があり、俺達の強さを証明するのに人役買ってくれた人物である。


 俺がバカラムに声をかけると、彼は渋い顔をしてモヒカンとマリア司教に拍手を送る。


 「どこぞの傭兵共と違って、俺達衛兵は忙しいんだよ。仕事もサボれないしな」

 「流石はこの街を守る衛兵様だ。仕事熱心で市民も安心だろうよ」

 「嫌味か。これでもかなり頑張って仕事を終わらせたんだぞ?」

 「でも間に合ってないじゃん」

 「........それを言うな」


 渋い顔がさらに渋くなるバカラム。


 傭兵とは違い、彼らは国に雇われたある意味国家公務員。


 自分の都合がいい時に、好きなように仕事を休める訳でもないのだ。


 やはり、自由な時に仕事の出来る傭兵って最高だな。


 「しかし、マリア司教様とあのジーザンが結婚か........未来ってのは分からないもんだな」

 「全くだ。見ろよモヒカンの服装。最高に似合ってないだろ?」

 「似合ってない。正直、笑いたいのを我慢してるよ」


 暫く続いた拍手の雨も止み、遂に宴会がスタートする。


 新郎新婦を楽しませようと、さまざまな出し物を用意した人達が芸を披露し、それを見なでみて盛り上げる。


 こういう所は、ウチの結婚式と余り変わらないんだな。


 「ジンも何かやるのか?」

 「もちろんやるさ。俺達もノリはいいんでな。次に出し物をやる奴が居なくなるぐらい派手なのをやってやる」

 「........確か順番とか決まってないよな?よし、今からジーザンの所に行ってお前達を最後にして貰えるように交渉してこよう。でないと、他の奴らが可哀想だ」


 バカラムはそう言うと、楽しそうにゲイを見ながら飲み食いするモヒカンの元へと消えていく。


 ちなみに、俺達の出し物は能力を全力で使った超ド派手な奴だ。


 態々この為だけに、イスの異能に全員をご招待するつもりである。


 あまりに派手すぎて、街中でやると怒られそうなんだよな........


 「これは私達が最後の〆になりそうだねぇ」

 「責任重大だな。とは言え、完成度は高くないけど」

 「大まかな流れしか決めてないからねぇ。後はアドリブでよろしくってる感じだったし」

 「まぁ、ヘマこいても吸血鬼夫婦が上手くやってくれるさ。あの二人、色々な芸を見ていたせいか、かなりのゲイを持ってるからな」


 元国王と王妃の吸血鬼夫婦は、以外にもこういう出し物は得意分野だったりする。


 即興で何かやってと頼むと、結構な高クオリティの芸を幾つも見せてくれるのだ。


 吸血鬼特有の体を生かした物だったり、単純ににすげーヤツだったり。


 今回は正体がバレないようにする為、使える芸は限られるがあの二人なら上手くやってくれるだろう。


 最悪最年長者が上手くやってくれると思いつつ、俺はパクパクと串焼きを食べるエレノラに声をかける。


 今回の出し物には、エレノラ一人で頑張ってもらう時があるのだ。


 「エレノラは爆弾の調整大丈夫そうか?」

 「問題ないですよ。それにしても、先生も面白いことを考えますね。爆弾の爆発に色を使って楽しませるなんて。なんでしたっけ?“花火”でしたっけ?」


 爆破しか脳の無いエレノラだが、逆に言えば爆破に関しては右に出るものが居ない程のエキスパート。


 “もしかして花火とか作れるんじゃね?”と思い、エレノラに話してみた所、魔術やらなんやらを使って本当に実現させてしまったのである。


 こういうところに関してはガチで天才なんだよな。爆破に限定される上に、倫理観が欠如してるから実験とか酷かったが。


 「俺達の故郷ではよく見られた祭りの代名詞だ」

 「先生の故郷も面白いですね。爆破で人を楽しませられる物があるとは、思いつきませんでした」

 「これを機に花火師になるなんてどうだ?多くの人の笑顔が見られると思うぞ?」

 「嫌です。確かにこれはこれで楽しいですが、私は爆破して物を壊す事に快感を覚えるタチなので」

 「うん、やっぱりエレノラは1度脳ミソを取り外した方がいいな。頭がどうかしてる」

 「先生ほどでは無いですよ。私は至って正常です」


 正常(異常)なんだよなぁ。


 どこの世界に自分の教師を爆破の威力実験として的に使うやつがいるのやら。


 最近はモーズグズとガルムがよく的にされているらしいが、あまりにも可哀想すぎる。


 俺は何度も何度もエレノラに注意しているのだが、“本人がOKしてくれるので”と言って聞く耳を持たないし。


 俺は、この問題児を本当にどうにかしなければと思いつつ、串焼きを口に運ぶのだった。

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[良い点] 作り込みされた作品で読み応えがあります! [気になる点] 誤字脱字 [一言] 芸の事をゲイは、流石に… ここで断念
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