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主役登場

 

 マルネスやら久々に出会う人達と親交を深めていると、遂に今回の主役達が登場した。


 この世界の一般的な結婚式は割と適当であり、進行役なんかも居なかったりする。


 龍二の時や光司の時は立場や規模が違いすぎたので進行役が居たりもしたが、小さな結婚式では新郎新婦が2人っきりで永遠の愛を教会の中で誓う以外は自由なのだ。


 「おー、モヒカンの野郎死ぬほど衣装が似合ってないな」

 「プハッ!!........ジン、それはさすがにジーザンに........失礼だぞ........!!」

 「爆笑してるお前の方がよっぽど失礼だよアッガス。一回マリア司教様に殴られてこい」


 高価そうな白い服に身を包み、花嫁衣装に身を包んだマリア司教と並んで歩いてくるモヒカン。


 あまりの似合って無さに、会場にいる誰もが笑いを堪えて震えていた。


 マリア司教の美しい花嫁姿よりも目立っている辺り、その似合って無さがよくわかる。


 モヒカン、もう少し似合う服はなかったのか?


 「モヒカン、あまりにも似合ってないねぇ........ちょっと同情するぐらい似合ってないよ」

 「流石にフォロー出来ないの........」

 「まぁ、顔を真っ赤にしている本人が1番自覚してるだろうよ。なんなら、隣にいるマリア司教ですら“似合ってない”と思ってそうだ」

 「マリアちゃんは似合ってるのにねぇ」


 俺の隣でモヒカン達を見ている団員も、“流石に似合ってない”と言いたげな顔をしている。


 あまり人の事にとやかく言わないスンダルですら、難色を示していた。


 「フハハハハ!!昔を思い出すな!!」

 「そうね。あそこまでは行かないけど、貴方も似合ってない服を着てたわね。笑うのを我慢してた覚えがあるわ」

 「笑っていただろう?記憶を改ざんするな」

 「そうだったかしら?」


 へぇ、ストリゴイも似合わない服を着せられてたんだな。


 ちょっと見てみたい気もするが、まず間違いなく団員全員が笑うのでストリゴイはやってくれないだろう。


 ストリゴイ、かなりイケメンだし身長も高いので何を着ても似合いそうなのだが、彼が似合わない服とかどんなものなのだろうか。


 流石にドレスとかは無いと思うが、やはり気になってしまう。


 そんなことを考えながらも、モヒカンとマリア司教に惜しみない拍手を送っていると2人はこちらに気づいて近づいてくる。


 その顔は2人とも幸せそうだった。


 「久しぶりだな。あまりにも似合ってないその服の感触はどうだ?」

 「会うなり酷い言われようだな。だが、俺もこれは無いと思ってる。マリアが着てくれと行ってなかったら着てないぜ」

 「........?私は似合ってると思うんだけど、そんなに変ですかね?」


 そう言って可愛らしく首をかしげるマリア司教。


 この人、割とファッションセンスが終わっているのかもしれない。


 普段はシスター服に身を包んでいるから分からないが、私服とかとんでもないものを着てるんじゃないだろうな。


 ともあれ、あまり馬鹿にしすぎると怒られそうなので少し言葉を濁しながらも応えた。


 「うん、まぁ、100人中99人は“似合ってない”って言うぐらいには」

 「恋は盲目だねぇ。マリアちゃん、多分モヒカンが何着ても“似合う”って言うよ」

 「それは言えてるな。実際、もう少しましなのもあったんだが、マリアは全部“似合う”としか言ってなかったし」

 「ケッ、モヒカンにはもったいねぇ話だ」

 「俺も思ってるよ。兄貴にも見せてやりたいぐらいだ」


 ........この野郎。態々触れなかった話題に自分から触れやがった。


 ジーザンの兄であるジーザスは、俺がこの街に来てから間もない頃に起きた戦争で亡くなっている。


 確か、死体を踏み外してバランスを崩したジーザンを庇って死んだ筈だ。


 イスも懐いて居たぐらいには良い奴だったのだが、今となっては彼と会う手段はない。


 そして、ジーザスが生きていればここに立っていたのは彼だろう。


 彼とマリア司教は相思相愛だった。


 「まぁ、そうだな。ジーザスも喜んでるよきっと」

 「ぷ、フハハハハ!!あのジンが言葉を選んで気を使ってるぞ!!兄貴が死んでまもない頃ならともかく、もう何年も経ったのに気を使うんだな!!案外センチメンタルか?」

 「その純白の服が真っ赤に染まるぐらい殴ってやろうか?俺だって気を使う時は使うんだよ」


 人が気を使って言葉を選んでいたと言うのに、それを笑うとはなんて奴だ。


 マリア司教。今からでも遅くないからコイツとの結婚を辞めましょう。絶対ロクな事にならないよ。


 そう思い、マリア司教を見ると俺とのやり取りを楽しそうに見ながら花音とイスと話していた。


 マリア司教もジーザスの死は乗り越えたのだろう。どうやら憎たらしいほどに今はジーザンの事を愛しているようだ。


 俺は握った拳を下ろすと、モヒカンの肩に手を置く。


 そして、誰にも聞こえないぐらいの声量できっちり忠告しておいた。


 「間違ってもマリア司教を手放すような真似はするなよ。最悪、この街の全員がお前のその頭を刈り上げに来るからな。あと浮気もやめておけよ?お前、目立つから」

 「安心しろジン。最近では子供と仲良くしてるだけで嫉妬するようになってんだ。可愛いだろ?」

 「........?会話出来てる?返答になってねぇよ」


 何がどう安心できるんだ?それに、お前に忠告してんだよ。


 モヒカンはニッと笑うと、俺の背中をバシバシと叩いて笑う。


 コイツ、マリア司教との結婚が嬉しすぎて舞い上がってるな。


 「ま、お互い息抜きしたくなったら一緒に飲もうや。一人の時間も必要だしな」

 「その時は酒も飲んでやるよ。もちろん、モヒカン持ちで」

 「ハッハッハ!!教会に多額の寄付をして下さる敬虔なる信徒様に金は出させねぇよ」

 「バカにしてんだろ。俺は無神論者だ。何がともあれ、おめでとう。末永くお幸せに」

 「おう。また遊びに来いよ」


 そう言って隣にいたアッガスの方に行くモヒカン。


 それに釣られて、マリア司教もぺこりと一度頭を下げるとモヒカンの後ろを追った。


 「いい夫婦なんじゃない?見た目はお似合いとは言いづらいけど」

 「そうだな。見た目はともかく、中身はお似合いだろ。末永く爆ぜてくれ」

 「私が仁くんと花音ちゃんの結婚式を見た時と同じことを思ってるね。末永く爆ぜろ。いい言葉だよ」

 「それ、いい言葉なの........?」


 俺たちの世界では、幸せを願う事を“爆ぜろ”と言うのさ。


 そんなことをラファに教えていると、この問題児が割って入る。


 「結婚する相手を爆破してもいいってことですか?」

 「うん。違うね。エレノラは少し黙ってよう」


 爆ぜろに反応してしまった悲しき爆弾魔は、今日も平常運転だった。


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