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ロリババァにも好かれない

 

 おバカな自己中共が一線を超えて来ないことを祈りつつも、それはきっと無理なんだろうなと思う今日この頃。


 今時地球でも“ちょっと待った”なんてするヤツ居ないのに、それをしようとするやつが居るのだから世界とは広いものである。


 それだけマリア司教がモテると言うのはあるだろうが、本当にその人のことが好きなら幸せを願えよ。アイドルに恋人ができたからって騒ぐ厄介オタクか?


 「やぁやぁ、久しぶりだね。自由人」

 「お前も来てたんだなロリババァ」

 「誰がロリババァだ。マリア司教はウチに依頼をくれる大切なお客様だし、あっちのモヒカンも知らない仲じゃないんでね。それに、こう言う催しに出てしっかりと常連さんとの繋がりを強めないと仕事が無くなる」

 「冴えない魔道具屋も大変だな。客1人を確保するのに必死な訳だ」

 「客を蔑ろにする商売屋に明日は無いよ。ひとつ賢くなってよかったな」


 そんな事を思いながら結婚式が始まるのを待っていると、ロリババァことマルネスが俺達を見つけて話しかけてくる。


 彼女と出会ってから10年近く経つが、マルネスはどこを見ても成長していなかった。


 身長やら体型やら、なんなら頭の中身まで。


 どうしてコイツは成長しないなだろうか。俺は悲しくて仕方がないよ。


 「........随分と失礼なことを考えている顔だね」

 「マルネス程じゃないさ」

 「アハハハハ!!それは言えてるかもね。所で、あの可愛い魔道具士さんはどこかな?」


 マルネスの言う可愛い魔道具士とは、恐らくドッペルの事だろう。


 人の姿に化けたドッペルは超絶美人であり、すれ違った人が立ち止まってドッペルをガン見するほどには目立つ。


 今回、ドッペルにも声をかけたが、ドッペルは魔道具制作がいい所だからパスと言って参加していなかった。


 アイツ、いつも何か作ってるんだよな。


 便利な魔道具から、何に使うんだよという魔道具まで。作るものは様々だが、とにかく作るのが楽しいドッペルは何かを作り続けている。


 ある意味、爆弾に魅了されて四六時中爆弾の事を考えているエレノラに似ているだろう。


 似たもの同士のためか、2人が一緒に何やら話しているところもよく見るしな。


 おれが首を横に振ると、マルネスは目に見えた落ち込む。


 この変態にドッペルを付き合わせるのも可哀想なので、居たとしても近づけさせはしないが。


 「残念。久々にあの可愛いご尊顔を拝もうと思ったのに........」

 「ご尊顔って........アイツは神かなんかか?」

 「神様だよ!!私にとってはあの可愛い顔とおっとりとした雰囲気は神に匹敵するの!!」

 「女神イージスを信仰する教会の前で良く言えるな。その頭の悪さだけは尊敬できるよ」

 「ケッ!!私がここに来たのは、マリア司教とモヒカンの結婚を祝うためであって、女神イージスに祈りを捧げるためじゃないんだ。なんと言おうが勝手だよ」

 「........そのメンタルも見習いたいな」


 ここには多くのイージス教信者が居る。


 そんな人たちがいる中で、声高らかにこんなことを言えるとは、マルネスも中々に肝が座っているな。


 と、ここでマルネスはあることに気づく。


 以前見た事がない、ウチの団員でもない頭のおかしい爆弾魔が居ることに。


 「ねぇ、ジン。あのボーッと教会を眺めてる子は誰?」

 「ん?あぁ、お前と会うのは初めてか。俺の教え子のエレノラだ」

 「へぇ、首都にある学園で教員をしているとは聞いたけど、本当だったんだね。君みたいなチャランポランでも教師って務まるんだ」

 「ぶっ飛ばすぞ。俺はとても優れた教師だったよ」

 「あはは。面白い冗談だね。それはそうと、君に教えられた可哀想な生徒がここに?まさか、愛j──────────」

 「んなわけあるか。俺は花音一筋だし、何よりあんな頭のおかしい奴をそもそも異性として見れないわ」


 とんでもないことを言い出そうとするマルネスに被せて俺は言う。


 俺ですら実験動物(モルモット)として見ている頭のおかしい爆弾魔を、どうやって異性として見ろと言うのだ。


 確かに顔は可愛らしいが、それを須らく台無しにする中身の持ち主だぞ。


 多分今も、“どうやったら綺麗に教会を爆発できるかなー”とか考えているに違いない。


 「........君がそんなに嫌そうな顔をするのは珍しいね。そんなに頭がおかしいのかい?」

 「おかしいなんてもんじゃない。四年間教えてきた子達の中で、最も頭がおかしくイカれた子だよ。俺や花音を実験動物(モルモット)として見るような奴だぞ?どれだけエレノラに振り回されてきたと思ってる」

 「君も大概だけどね?常人から見たら、君もきっとエレノラちゃん?と同じぐらい迷惑だから」

 「お前が言うな」

 「随分と失礼なことを言いますね。先生。私は普通ですよ」


 俺たちの会話を聞いていたのか、エレノラがふらりとやってきて渋い顔をする。


 こういうことを言われたくなかったら、まず目に入った物を爆破しようとか思わないでくれ。


 「君がエレノラちゃんだね........うーん、私好みの顔だけどそそられない。ジンの言っていた事は本当っぽいね」

 「その判断基準はどうにかならんのか........」


 女好きの変態であるマルネスが、エレノラを見て若干引いている。


 花音の時と同じような反応だな。


 つまり、エレノラの花音はマルネスから見たら同じって事?!ありえない。


 「君、変な奴に好かれすぎやしないか?君の嫁さんもそうだが、どこか狂ってるやつが多すぎる」

 「性癖が狂ってるやつに言われたかねぇよ。後、花音はまともだ」

 「え?私もしかしてカノン先生と同列に扱われてるんですか?心外です。カノン先生の方が圧倒的にヤバいです」

 「うん。私から見たらエレノラちゃんも変わらないからね。私の本能が言ってるよ“この子はヤベー奴”って」

 「........そんなぁ」


 エレノラはありえない!!と言いたげな顔だが、俺からすれば花音と同列なのがありえない。


 しかし、よくよく思い返すと、厄災級魔物達や他の団員も(トリスを除く)エレノラと花音を同列に扱っている気がした。


 よし、今度アンケートを取ってみよう。どっちがやべー奴なのか、決めようじゃないか。


 俺がアホなアンケート実施を心の中で決めていると、マルネスは思い出したかのようにポツリと呟いた。


 「あ、もしかしたら、君達に大きな仕事を頼むかもしれない。今日は祝いの日だから、また後日話すよ」

 「ん?わかった」


 この大きな仕事がまさか全世界を巻き込むことになるとは、今の俺が知る由もない。

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