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天堕天界戦争:不死王vs六番大天使2

 口喧嘩に負けた六番大天使は、不死王に向かって真っ直ぐに突き進む。


 初戦は負けてしまったが、相手を殺してしまえばそんなことは関係ない。


 六番大天使はかつてないほどの殺意を纏って不死王の首を取らんとし、その異能を顕現させた。


 「“六番大天使(サリエル):神の処刑”」


 その手に現るは神聖なる鎌。光り輝く白き死神の鎌は、不浄な命を刈り取りに相応しい装飾が施されており、正しく神の処刑を執行するに相応しい。


 堕天した天使達の処刑という本来の責務を背負っていた歴代六番大天使なが代々引き継いできた鎌は、堕落した元聖職者の首を切り裂かんと大きく振るわれる。


 「堕ちた天使には勿体無い輝きだな」

 「ほざけ!!不浄なる魔物を処刑するには持ってこいだ」

 「そんな大振りの鎌に当たるほど、私は弱くない」


 不死王は冷静に六番大天使の攻撃を避けると、配下のドラゴンに命令を下す。


 「放て」


 黒き閃光が六番大天使を襲う。


 ドラゴンが最強の種族と言われる理由であり、ドラゴンがドラゴンたる所以。それは、強大なブレスを放つ事が出来るという事だ。


 膨大な魔力を圧縮して放たれるドラゴンブレスは、時として国を滅ぼし人々に恐怖をもたらす。


 その威力は最上級魔物である黒龍が放っただけでも、街1つ程度ならば容易く吹き飛ばした。


 黒き閃光は空を駆け、六番大天使を包み込む。


 鎌を振り終えた六番大天使も、まともに喰らえばタダでは済まないと確信し、その神聖なる鎌でブレスを受け止める。


 「くっ........!!重い........!!」

 「ほら、次だ」


 ドラゴンブレスに耐える六番大天使に、不死王は無慈悲にも追撃の手を加える。


 天界に戦争を仕掛けるにあたって用意した軍勢は黒龍一体だけでは無い。


 一万と数千年かけて作り上げた不死の軍勢。最強種であるドラゴンも数百体と揃えてあるのだ。


 次々に放たれるドラゴンブレス。


 六番大天使を正確に撃ち抜くドラゴンブレスは、六番大天使を殺す勢いで全てを薙ぎ払う。


 「ぐぅぅぅぅぅぅぅ!!」


 それでも、六番大天使は己を守りきった。


 全てのドラゴンブレスを受け止めるのは不可能と判断し、必要最低限の動きでできる限りのドラゴンブレスを回避。


 避けきれないドラゴンブレスは神聖なる鎌で軌道を逸らし、更には翼を使って強引に自分を守る。


 生まれてこの方、まともな戦闘をした事が無かったにしては頑張った方だろう。


 数百体近くのドラゴンから、身を守ったその姿は天使の長として素晴らしい輝きを放っている。


 しかし、六番大天使も無敵ではない。


 避けきれずに何度か食らった攻撃によってあちこちから血を流していた。


 「おぉ、これを耐えるとは流石は大天使と呼ばれるだけはあるな。普通の天使ならば骨も残らず死に絶えただろうに」

 「舐めんじゃねぇぞ。魔物ごときがこの俺を殺そうなんて、1億年は早い」

 「そういう割には満身創痍に見えるがな。強がりはよした方がいいぞ?」

 「ほざけ!!」


 六番大天使は痛む体に鞭を打って、強引に不死王との間合いを詰めに行く。


 しかし、不死王もそれは予測済み。


 最初の一撃の時のように近づかせはしない。


 「攻撃。私を守れ」


 ドラゴンやハーピーなどの魔物達が、六番大天使に向かって攻撃を仕掛けていく。


 万単位の軍勢は、六番大天使に不死王を近づけさせまいとし、六番大天使は不死王に近づこうと不死の軍勢を処刑していく。


 聖なる輝きを持った鎌が不死を切り裂き、この世に縛られた瘴気を解放していく。


 聖なる鎌によって切り裂かれる不死の軍勢は着実に数を減らしていくが、あまりにも数が多すぎた。


 「どうした?動きが鈍いぞ?」

 「クッソ、ガァ!!」


 フードを深く被っている為不死王の表情は見えないが、六番大天使は不死王がそのフードの下でニヤニヤとこちらを見ていると確信する。


 今まで頂点として立ってきた六番大天使にとって、“魔物にコケにされる”というのはプライドを大きく傷つけられた。


 戦いにおいて、怒りというのは普段以上の力を出せるものの動きが単調になり視界を狭まる。


 戦い慣れしている猛者に限って言えば怒りは強い“バフ”となるが、ほとんどの場合が“デバフ”となり、六番大天使の場合も例外ではない。


 狭まった視界は、不死の軍勢にとって好機以外の何物でもなかった。


 「弱いな」

 「........?!」


 死角から放たれたドラゴンブレス。


 味方の不死の軍勢までも巻き込んだ一撃は、六番大天使にモロに入る。


 先程は何とかガードした為軽傷で済んだが、意識外から、それもなんの対応もできていない状態での一撃は六番大天使にとって大きなダメージを受ける事となる。


 黒き閃光に飲み込まれ、瘴気の纏った一撃は聖なる身体を蝕み、次第に全身が黒く染まり始める。


 悲鳴を挙げなかったのは、大天使としての見栄か、襲いかかる激痛を死ぬ気で耐える六番大天使だが、死ぬ気で耐えようとしても耐えられるものでは無い。


 「フハハハハ。まるで堕天使だな。綺麗だぞ?その姿は」

 「........ゴホッ」


 黒き閃光の後に残された六番大天使の姿は、片翼が削がれ残る片翼も瘴気に侵され黒く染る。


 身体中に黒い斑点模様が浮かび上がり、全身血塗れ。その手に持った神聖なる鎌だけが天使らしさを保っていた。


 「天使全てを1人で相手取ればどうなるか分からなかったが、大天使1人程度ならば余裕だったな。団長さんには感謝しかない。出来れば、私の手で全てを終わらせたかった気持ちもあるが、確実性を取るならこちらの方がいいな」

 「クソ........が」


 弱々しくつぶやく六番大天使。


 彼には圧倒的に経験が足りなかった。


 何万年と長い時を生きてきた経験の中に、戦闘の経験はほとんどない。


 自分よりも圧倒的に弱いものしか倒してこなかった六番大天使にとって、同格以上との戦いは厳しいものがある。

 

 一方的の不死王は常に戦ってきた。


 天界を滅ぼすという明確な目的を持ち、その目的に向かってがむしゃらに走ってきた不死王に勝利の女神は微笑んだのである。


 「最後に言いたいことはあるか?」

 「きさ──────────」


 最後の言葉を聞いておきながら、その言葉を聞き終える前に六番大天使に再び黒き閃光が舞い降りる。


 不死王も別に六番大天使の言葉を聞きたい訳では無いので、言ってみただけであって聞いてやるつもりは欠片もなかった。


 「新たな大天使は生まれるだろうが、天界に帰ることは無い。天に滅された罪なき人々よ。女神イージスの元で安らかに眠るといい」


 不死王はそう言うと、残った不死王の軍勢を天界へと向けて進軍させる。


 既にほとんど終わっているが、まだ生き残りはいる。


 罪なき天使もいるだろうが、不死王にとって天使は悪だった。


 こうして、長きに渡る天界の歴史は幕を閉じる。しかし、この真実を知る者、天界と言う存在が消えた事を知る者はほとんど居ない。

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