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天堕天界戦争:天が見た終焉

 

 天界が滅ぼされ始めているとはつゆ知らず、四番大天使の確保を命令されていた天使達は揺レ動ク者(グングニル)の拠点をめざして空を飛んでいた。


 彼らの任務は四番大天使確保と陣営への勧誘。


 四番大天使が異界からの転移者である事は既に分かっており、天使達も出会ったことの無いタイプの天使であるので少し緊張している。


 「どんなお方なんだろうな。四番大天使様は」

 「少なくとも俺達とは違った価値観をお持ちだろう。この世界で生まれ育ってないお方だしな。なんだっけ?異世界?とやらから来たお方だし」

 「正直、急にこちらの世界に呼び出されて大天使の責を負わされるのは、少し可哀想ではあるけどね。女神様のご意志とは言え、四番大天使様には元々の生活があったんだろう?」

 「........確かにそうだな。女神様に選ばれし者と言うだけで俺達は喜ぶが、四番大天使様からすればいい迷惑か。だが、間違っても天界でそんな事言うなよ?異端として始末される」

 「分かってるさ。信仰心だけで言えば俺は大天使様にも負けてないよ」


 女神とは、この世界に生きる人々にとって絶対的な存在だ。


 特に天使ともなれば、間違った思想があれど女神に対しての信仰心は重くなる。


 四番大天使を哀れんだ天使も、口ではそう言っているが同情はしなかった。


 「お、見えてきたな。あのデカイ山の麓に四番大天使さまが居られるらしい」

 「ここから見る限り、何も無いように見えるがな」


 “浮島”アスピドケロンを視界に捉えた天使達は、周囲の警戒をすることも無く無防備に近づいて行く。


 しかし、その羽ばたきは途中で止められることとなった。


 「いやはや、今回は私の出番はないと思っていたのですけどね。運がいい。少し遊んであげましょう」

 「........!!」


 天使たちが飛ぶよりも更に上。


 突如として現れた終焉の厄災は、嬉々として天使達の前に舞い降りる。


 “終焉を知る者”ニーズヘッグ。


 かつて一つの大陸を海へと沈めた厄災が、天使達の前に立ちはだかった。


 「何者だ?」

 「貴方達が探しているであろう四番大天使の仲間ですよ。申し訳ありませんが、彼女はここにはいないので、死んでくださると助かりますね」

 「ほざけ!!魔物風情が!!」


 それ以上会話することは無いと言わんばかりに、天使の1人がニーズヘッグに攻撃を仕掛ける。


 天使の名に相応しい、眩い光を持った魔法がニーズヘッグを襲うが、ニーズヘッグはこれを避けることなく受け止めた。


 ドン!!と大きな音が鳴り、天使は多少なりともダメージを与えたと確信する。


 だが、終焉の厄災がこの程度で傷を負うなど有り得ない事だった。


 「やはり、天使如きの攻撃は痛くも痒くもないですね。目覚ましにはちょうどいいかもしれませんが」

 「避けられなかったくせによく言う」

 「避けられなかった?いえ、()()()()()()()()()()のですよ」


 ニーズヘッグはそう言うと、ゆっくりと天使たちに向かって行く。


 あまり時間をかけすぎると、拠点で暇をしている吸血鬼夫婦が来てしまう。


 もう少し遊びたい気持ちもあったが、自分の獲物を横取りされるよりはさっさと始末してしまった方がいいとの判断だ。


 「くっ!!喰らえ!!」

 「天よ!!かの者に裁きを!!」

 「吹き飛べぇ!!」


 天使達はゆっくりと近づいて来るニーズヘッグに攻撃を仕掛ける。


 しかし、今度の攻撃はニーズヘッグに当たることは無かった。


 「弱いですね。まだあの三姉妹の方がマトモな攻撃を仕掛けてきますよ」


 ピタリ、とニーズヘッグに向かってきていた攻撃が全て止まる。


 何が起きたのか分からない天使達は、恐れつつも必死に攻撃を繰り出し続けた。


 「........学習能力がないんですか?」


 が、その攻撃全てがニーズヘッグにあたる前に止められる。


 そして、天使たちの目の前に来たニーズヘッグは、その攻撃全てを束ねて一つの光線に変えた。


 「お返しですよ」


 ゴゥ!!と、唸りを上げて天使たちに返ってくる光線。


 二人の天使は何とか避けることに成功したが、1人の天使はこの光線を避けることが出来ずに死に絶えた。


 「........クソッ!!」

 「逃げるのですか?寂しいですねぇ」


 “勝てない”と判断した天使だが、その判断を下すのがあまりにも遅い。


 ニーズヘッグに出会った時点で、彼らの“死”は決定的なものになっているのだ。


 ニーズヘッグに背を向けて逃げ始める天使。だが、その羽ばたきは止められることとなる。


 ニーズヘッグの異能“終焉戦争(ラグナロク)”。


 かつて神々が戦争をした終焉の地に残る神の欠片を、制限こそあれど使うことの出来る異能。


 仁や花音はこの異能を理解できなかったが、簡単に言えば“なんでもあり”の異能である。


 「体が........動........かない........!!」

 「どうです?神の力は。天使如きが私に勝てるわけもないのに、随分と無謀でしたね」


 ニーズヘッグはそう言うと、1人の天使を噛み殺す。


 残ったもう1人の天使に見せつけるかのように、ゆっくりとじっくりと噛み殺して飲み込んだ。


 「天使は味は微妙ですね。まだ団長さんが焼いてくれた肉の方が美味しいですよ」

 「あ........あ........」


 次は自分が食われる。


 そう確信した天使は、恐怖のあまり股の下から涙を流す。


 しかし、彼を笑うことは出来ない。


 目の前に自らを食い殺す竜が殺気を向けているのだから。


 「何か言い残すことはありますか?私は優しいので、話だけは聞いてあげましょう」

 「やめて........食べないで........」

 「そうですか。()()()()聞いたので、さようなら」


 天使の命乞いも虚しく、ニーズヘッグの口の中で噛み殺される天使。


 彼が最後に見たのは、地獄の入口となるニーズヘッグの巨大な牙とその先に潜む闇であった。


 「んー、昔はこれでも満足出来たのですが、舌が肥えましたね。調理されてないと美味しくない」


 ニーズヘッグは自分もあの自由な変人のせいで変わってしまったなと思いつつ、昔のことを思い出して“今更か”と思い直す。


 「さて、帰りますか。口直しに、大きめの肉を焼いてもらいましょう」


 ニーズヘッグはそう言うと、今の居場所に戻るのだった。




 能力解説

終焉戦争(ラグナロク)

 特殊系特殊型の異能。

 かつて神々が戦争をした終焉の地に転がる神々の欠片を自由に使える異能。

 制限こそあるものの、基本はなんでも出来る為かなり強い。

 が、欠片を引き継いでいる訳では無いので本来の火力を出すことは不可能。言うなれば、器用貧乏な異能である。

 また、魔力消費がかなり激しく、長期戦には向いていない。

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