天堕天界戦争:罪人堕天
花音が天使相手に実験をし、ファフニールがその光景に軽く引いている頃。
罪人となった大天使と流星を降らせる厄災は天界の地に降り立った。
戦える天使達が厄災と罪人の上陸をさせまいと動いたが、天を憎みし龍ウロボロスに全てを阻まれる。
それにより、2人と一体は比較的安全に地に降り立つことが出来たのだ。
「これが厄災。昔何度か見たことはあったけど、凄いねー」
「流星が落ちたところの殆どは更地になっているね。これが本気じゃないって言うんだから驚きだよ」
「アハハハハ!!これでもかなり加減した方さ。その気になれば一撃でこの島を叩き落とせるんだからね。今回は混乱を生むことが仕事で、ウロボロスの爺さんも“やってよし”と言ってたから少し派手にやったけど」
「これが手加減した一撃だって。厄災級魔物は格が違うよ」
「全くだねー」
流星が落ちた地に降り立った黒百合とラファエルは、流星が落ちた事によりまだ暑い空気を感じながらのんびりと天界を歩く。
戦争にやってきたと言うのに、その足取りは観光しているようだった。
滅びゆく天界が無くなる前に、一目見ておこうと言う気分である。
「何も知らない天使ばかりだっただろうに、不運なことだね。まぁ、今までやってきた事を考えれば妥当だけど」
「ただ平和に暮らしていただけの天使からすればいい迷惑だし、理不尽極まりないと思うよ。でも、戦争ってそういうもんだから」
「シュナちゃんもこっちの世界に染まってきてるね」
平和で争いの無い国で生きてきた黒百合だが、7年近くもこの世界にいれば考えも変わる。
戦争も経験し、生き物を人を殺す経験をした彼女は最早地球にいた頃とは別人なのだ。
罪なき人が死にゆくとしても、“それが戦争”で片付けられてしまう。
黒百合は自分の中で何かが変わっていくのを感じながらも、“これはこれでいいか”と思い天界を歩く。
そこに、かつて高嶺の花と呼ばれた少女の姿は残っていない。
あるのは、この世界の色に染まった地獄の花だ。
安易に触れば地獄の業火に焼かれて消える。
「お、団長さんも張り切ってるね。見てよ。城が面白いように吹っ飛んでるぞ」
「うわぁ、一体何をやったらあぁなるんだろうね。あの城結構硬い素材でできてると思ったんだけど」
「仁くんは相変わらず滅茶苦茶だなぁ」
天界を観光していると、突如として城が崩れ始める。
仁がただ高速で移動した余波が城を壊しいてるのだが、彼女たちがそれを知る由もない。
“すごい大きな攻撃をしたかも”と、勘違いしていた。
「ジン団長も張り切ってるね。私達も少しはお手伝いした方がいいかな?」
「ウロボロスさんが殺るんじゃ無いの?」
「元気な天使はウロボロスさんに任せるよ。でも、死にかけの奴らは私達で始末してもいいんじゃない?」
「おー、アタシの流星を運良く良けれた奴だけ始末するか。今回の主役はウロボロスだから、アタシ達はゴミ掃除と行こう」
リンドブルムはそう言うと、瓦礫の下で身を潜める1人の天使を引きずり出す。
彼女は運良く流星の余波を免れ、運良く瓦礫の隙間に入り込んだ天使だった。
しかし、その運もここまで。リンドブルムに見つかった時点で、彼女の運は尽きたのである。
「ヒィ!!」
「おいおい、そんな顔しないでくれよ。アタシが悪者みたいじゃないか」
「向こうから見たら悪者でしょ。特に何も知らない天使からすれば、急に襲ってきた蛮族だよー」
「アハハハハ!!それは言えてるな!!だが、上のツケは下も払うもんだ。恨むんならお前達の上司でも恨むんだな」
天使は何も言えずただ地面で震えるのみ。
殺気立つ厄災の前で漏らさなかっただけ、彼女はまだ根性があったのかもしれない。
「さて、大好きな女神様のお膝元にでも行くんだな。どうやって死にたい?」
「ら、三番大天使様........」
リンドブルムの問いかけを無視して、ラファエルを見つめる天使。
彼女は比較的新しめの天使ではあったが、ラファエルのことを知っていた。
天界から出ていき、人の世を渡り歩いていたラファエルの顔を知っているものは少ないが、知っているものは知っている。
ラファエルは少し驚きつつも、自分のことを知っているからと言って生かしてやろうとは欠片も思わない。
ここで生かせば、第二の自分が生まれることとなる。
恨みだけを抱え、復讐だけのために生きるぐらいならば死んだ方がまだ幸せな人生だと言えるだろう。
厄災に睨まれている時点で“幸せな人生”と言うには程遠いが。
「運が悪かったね。貴方は楽に殺してあげる」
「へ?」
ラファエルは攻めて痛みなく殺してあげようと、天使に向かって治療を始める。
最初こそ何が起きたのか分からなかった天使だが、徐々に眠たくなっていくのを感じて自らの死を悟った。
「おやすみ」
安楽死。
痛みも感じず安らかに死ねる殺し方。
ラファエルは自身の能力を応用し、擬似的な安楽死を天使に授けた。
「随分と優しいな」
「仮にも同胞だからね。これが男だったら普通に殺してた」
「えぇ........男には厳しいんだな」
「正確には“男の天使”に厳しいよ。あの糞共はどうしようもなくゴミだから、浄化してあげた方が世のためだよ」
「........団長さんは?」
「あの人は糞とかゴミとかじゃなくて、自由すぎるかな。見ている分には楽しいけど、巻き込まれたくはないかも」
「今回は巻き込んだ側だけどねラファちゃん」
「それを言われると弱いねー」
そう言って笑い合う3人の女の子。
この笑顔だけを見ていれば微笑ましい一面であるが、その周りは死屍累々の阿鼻叫喚。
運良く生き残った天使達が血塗れで倒れ、死にゆくのを待つだけのものである。
今や、彼女達の笑い声も死神の足音に聞こえるだろう。
「それじゃ、巻き込んじゃったんだから少しは働かないとね。仁くんも仕事を終わらせたみたいだし」
「え?もう大天使達を殺したの?早過ぎない?」
「アハハハハ!!ウチの団長さんを舐めるなよ。アタシ達相手に戦えるような奴さ。大天使如き、一捻りで終わらせられるってもんよ!!」
「一応、私達も大天使なんだけどね」
「おっと、ちょいと失言だったか?」
そんなことを話しながらも、生命を混じる場所に炎を撃ち込む黒百合。
数少ない生き残りの天使は、この炎に焼かれて死に絶えるしか無かった。
「後は六番大天使と有象無象だけだね。ウロボロスさんはともかく、不死王さんは大丈夫かな?」
「まぁ、何かあればジン団長が動くよ。ほら、観戦してるし」
なら大丈夫か。
黒百合はそう思うと、観光ついでに天使達を処刑していくのだった。




