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天堕天界戦争:不死たる憎悪

 「殺す!!」


 さっきを剥き出しにして襲いかかってくる天使の1人だが、その動きはあまりにも遅すぎる。


 感じる気配的に大天使で間違いないのだが、ファフニールから言われていた大天使ほどの強さがあるとは到底思えなかった。


 大天使も世代交代とかしてるだろうから、強さに違いが出るのは仕方がない。とはいえ、さすがにこれは弱すぎである。


 俺は迫ってくる大天使を殺そうかと一瞬思ったが、これが六番大天使(サリエル)だった場合不死王に怒られるので辞めておく。


 俺は拳を振り上げた大天使の懐に入ると、軽く蹴りを入れて大天使を吹き飛ばした。


 「っぐ!!」

 「........オーケー死んでないね。さて、六番大天使(サリエル)ってやつを探してんだけど、どいつがそうかな?」


 壁に背中を打ち付けた天使が苦しそうな声を上げるのを見ながら、俺は傍観していた天使達に質問をなげかける。


 特徴はラファエルから聞いてはいたが、正直分からなかったので聞いた方が早いと言う判断だ。


 「「「........」」」


 無言の天使達。誰が六番大天使か言う気は無いのだろう。


 だが、先程俺に殴りかかってきた天使の意識が1人の天使に向いている。


 その天使を見れば、ラファエルに教えてもらった特徴に似ていた。


 「お前だな?」

 「........っ!!速っ」


 俺は素早く六番大天使に近づくと、相手が何らかのアクションを起こす前に首根っこを掴む。


 えーと、不死王の気配はこっちか。


 「歯ァ食いしばれよ」

 「うぇ?うわぁぁぁぁぁぁぁぁ?!」


 情けない返事を聴きながら、俺は六番大天使を思いっきり投げ飛ばす。


 普通の人間ならば壁に当たった瞬間にシミとなるが、相手は大天使。それなりに肉体も頑丈なので、壁に向かって思いっきり投げ飛ばしても問題は無い。


 威厳ある大天使とは思えない悲鳴を鳴らしながら、壁を突っ切っていく六番大天使を見送った後、俺は残された大天使たちと向かい合う。


 「さて、俺の仕事も終わったし、あとはお前らを始末するだけだ。今日は監視の目がないから最初から全力で行かせてもらうぞ」

 「舐めるなよ人間。天使はそう簡単に負けない」

 「そういうなら掛かって来いよ。一瞬で女神の元に送ってやるさ」

 「ほざけ。人間風情が」


 こうして、俺vs大天使4人の戦いが始まるのだった。


 ━━━━━━━━━━━━━━━


 仁に投げ飛ばされた六番大天使は、城の壁を突き破り天界の外まで出てきていた。


 自身を限界まで強化した仁の投擲はあまりにも強烈で、空を飛ぶことが得意な天使と言えど勢いが収まるまで制御が効かない程である。


 幾つもの壁をぶち抜き、空気抵抗によってようやく自身を制御することが出来た六番大天使は、空に羽ばたいて空中に止まることに成功した。


 「なんて人間だ。この俺を投げ飛ばすとはとんでもないやつだな」

 「全クダ。ドノヨウナ方法デ、私ノ元ニコノ愚カ者ヲ持ッテ来ルカト思ッタラ、マサカ、投ゲテ来ルトハ思ワナカッタ」


 背後からする声に振り向くと、そこには瘴気と憎悪を纏った不死王が六番大天使を睨みつけている。


 先程の人間ほどでは無いが、不死王からも圧倒的強者の気配が漂っていた。


 「何者だ貴様」

 「覚エテ居ナイカ。流石ハ天使ダナ。1万ト数千年前ニ人間ヲ虐殺シタクセニ」

 「そんな昔の事など覚えているわけないだろ。女神様に選ばれなかった人間如きのことなど、覚えている訳もない」


 六番大天使はかつて、自分の目的の為に人間を大量虐殺している。


 しかし、その理由も既に覚えてなければ、そのようなことがあった事も今の今まで忘れていた。


 なんなら、不死王に言われても尚あまりハッキリとは思い出せていない。


 六番大天使にとって、人間とはその程度の存在なのだ。


 かつても自分は人間だったにもかかわらず。


 「運良ク天使ニナレタダケノ存在ガ、ヨクモマァ、ソンナ大口ヲ叩ケル物ダ。ダカラコソ、アノ方ハ天使ヲ憎ンダノダロウナ」


 不死王は覚えている。


 女神の敬虔な信徒であった彼が人間だった頃に見せられた、あの惨劇を。


 ラファエルに連れられ、とある村にやってきた時に見た天使の虐殺を。


 理由こそ分からないが、人間を守り人の為に存在ていると思ってきていた天使が人間を虐殺するその光景を忘れられる訳もない。


 なんの罪もない村人が天使の剣に突き刺され、殺されていくその光景は今も尚昨日のことのように思い出せる。


 聖職者であった彼が、魔に落ちてまで成し遂げようとした天使達の抹殺。その現況とも言える出来事。


 それを引き起こしたのが、当時大天使になって間もない六番大天使だった。


 「運良く選ばれた?違うね。必然的な事さ。俺は女神様に見初められ、大天使としての生を授かったんだ。女神様の目に止まった特別な存在が、女神に見捨てられたゴミ共の事をどの様に扱おうが勝手だろ?」

 「選民思想モ過ギレバ毒ダナ。貴様ニ女神様ヲ語ル資格ハナイ」

 「魔物風情が生意気な口を効く。天使として、始末してやろう」

 「コノ現状ヲ理解出来ナイ時点デ、貴様ノ負ケダ。天界ヲ見テミロ。今ヤ天使ハ狩ラレル側ダゾ?」


 軽く顎をしゃくる不死王の動きにつられて天界を見てみれば、厄災級魔物達によって虐殺され始めている天使達が目に入る。


 天使は確かに強いが、天使の異能を授かった時から天界という平和な世界に閉じ込められてきた彼らは“殺される”事に慣れてない。


 ただ逃げ惑うだけであり、立ち向かおうとする天使は極々少数だった。


 六番大天使はそん惨状を見てもなお、特に感じることは無い。


 所詮は駒。自分さえ生きていれば、どうとでもなると本気で思っている。


 「はん。大天使でもないただの天使なんざいくら死のうがどうでもいいさ。俺さえ生きていれば、問題ない」

 「天使云々ノ前ニ、人トシテ終ワッテイルナ。ヤハリ貴様ダケハ殺スベキダ」

 「やってみろよ。魔物ごときが天使様に敵うとでも思っているのか?舐められたもんだな」

 「ヤッテミレバ分カル事ダ。貴様ニ明日ハナイ」


 憎悪渦巻く不死王はそう言うと、背後で待機していた不死の軍を動かし始める。


 一万年以上もかけて作り上げ不死の軍団が、遂にその役目を果たすときが来たのだ。


 圧倒的物量と質で大天使を噛み殺し、天使たちを虐殺する。


 その為だけに生きていた不死王の、今生最大の戦いである。


 「今マデノ生ヲ悔イテ死ネ」

 「やってみろよ不浄な魔物風情が!!俺が全てを消し去ってやる」


 こうして、不死王と六番大天使の戦いの火蓋は切って落とされるのだった。

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