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天堕天界戦争:開戦

 ラファエルに案内されながら空を漂う事2時間。長い空の旅は終わり、遂に天使たちが住まう大陸“天界”が見えてきた。


 物理法則など知ったことかと言わんばかりに空に浮かぶ天使達の根城は、今まで見てきたこの世界の中で1番ファンタジーしていると言っても過言では無い。


 手から炎が出たり、音速を超える動き後できるようになったりもしたが、それよりもこの島のインパクトは大きかった。


 「スゲェ、本当に空に浮いてるんだな。どうやって浮いてるんだ?あれ」

 「さぁ?分からないけど、中々にファンタジーだねぇ。この世界に来て驚くことはもう無いかなと思ってたけど、これはびっくりだよ」

 「ラ〇ュタはあったんだな........」

 「呪文1つで墜落しそう」


 試しにバルスと唱えてみるか?


 そんなアホなことを考えながらも、俺達は警戒を怠らない。


 こちらが天界を視界に捉えたという事は、向こうもこちらの存在を見ることが出来る。


 何時、天使達がこちらに攻撃を仕掛けて来てもおかしくないのだ。


 「懐かしいなぁ........金曜日によく見たよ」

 「黒百合さんも流石に見た事はあるんだな」

 「有名だもん。個人的には千と〇尋の神隠しの方が好きだったけどね」

 「俺、あの話がイマイチ理解できなくて詰まらなかったな」

 「仁は分かりやすい話の方が好きだもんね。ちなみに、仁は紅〇豚をよく見てたよ。昔、私も死ぬほど付き合わされた」


 話しが難しいんだよな。千と千尋〇神隠し。


 中学の時にも見たが、やはり話が少し複雑で分かりづらかった。


 俺は、花音の言った通り分かり易い話しか、見ていて楽しい話が好きである。


 “飛ばない豚は、ただの豚”あの名言がある動ける豚の話もちょっと難しいが、それでもカッコイイから好きだった。


 昔過ぎてあまり記憶が無いのだが、どうも小さい頃に毎日のように花音と一緒に見ていたらしい。


 花音はあまりにも豚を見るのを付き合わされたせいで、途中から豚では無く俺を見ていたのだとか。


 ほんと、いつも迷惑ばかりかけてすいません。


 今はもう見ることの出来ないジ〇リの名作達の話をしながらも、天界に徐々に近づいていく。


 今はまだ天使達の姿が見えないが、もう少し近づけば現れるだろう。


 「さて、今日中に終わらせて明日は1日休暇だ。2日分しか有給を取ってないから、その間には帰らないとな」

 「天使達もまさか有給取ってここに攻め込んできてるとは思わないだろうねぇ。というか、天使に有給の概念ってあるのかな?」

 「どうなんだろうな。俺は学園に有給の概念があったことにも驚いているぞ」

 「それはそう」


 一応、学園長には“もしかしたら1週間ほど帰ってこないかもしれない”とは言ってあるが、できる限り今日中に終わらせたい。


 偶には何も考えず、丸1日休みたいのだ。


 それは花音や黒百合さんも同じなようで、2人とも今日中に天使を片付けようと意気込んでいる。


 「む、団長殿。天使達が出てきたぞ」

 「本当だ。武装した天使達だな。ただ、敵意を感じない」

 「フハハハハ。呑気なものだ。どうする?1発かましておくか?」

 「まだ開戦するには早いよ。あの天使達と少し話してからでも遅くないし、宣戦布告はちゃんとしないとな」


 天界から姿を現した天使達。武装をしているのを見るに、恐らく天界を守る天使達なのだろう。


 俺は皆に攻撃をしないように命じつつ、ファフニールの頭に乗ってゆっくりと近づいていく。


 天使達もこちらを警戒しつつゆっくりと近づいてきた。


 「止まれ。魔物を引連れし人間よ。貴様がこの群れの長と見た」


 槍をかまえ、堂々とこちらを睨みつける天使。


 彼がこの守備隊の隊長なのだろう。


 ほかの天使達は、彼よりも後ろの場所で武器を構えながら待機している。


 強さは........あまり強くなさそうだな。黒百合さんやラファエル程の強さを感じないから、こいつは大天使ですらない。


 「どうも初めまして。“女神の使徒を騙る者(天使様)”。なんの御用で?」

 「それはこちらのセリフだ。この天界に何の用だ」

 「いやー、ウチの傭兵団に所属する大天使様をお宅が狙っているって聞いてね。四番大天使(ウリエル)って言うんだけど、知ってる?」


 俺が黒百合さんの名前を出すと、隊長天使は少し驚きつつも眉を顰める。


 彼も天界が黒百合さんを探しているのは分かっているのだろう。


 「貴様が大天使様を誑かす輩か。もし、通行するだけなら見逃してやろうとも思っていたが、ここで貴様を殺す理由ができてしまったな」

 「おぉ、それは怖い。仮にも“女神の使徒”様が人間を殺すのか?」

 「それが女神様のご意志だ。首を差し出せ。さすれば、楽に殺してやろう」


 おいおい。女神の声を聞けない奴が“女神のご意志”とか笑わせてくれるね。


 槍を前に突き出し俺たちを睨みつける天使だが、彼はここにいる魔物達が厄災として恐れられているのを知らないのだろうか。


 いや、知らなかったとしても、この溢れ出る強者の風格から只者ではないと気づけないのか?


 ラファエルが天使は平和ボケしていると聞いたが、この状況を理解できないとは相当だな。


 まだ子供の方が危機感があるだろう。


 俺は完全に舐め腐った態度で、ニヤニヤ笑うと天使に向かって挑発する。


 「おぉ、怖いねぇ。天使様も暴力的になったもんだ。女神の使徒を自称する厚顔無恥とはよく言ったもんだな。女神のご意志?笑わせんな。お前らの都合だろ?」

 「貴様ァ!!」


 安い挑発にまんまと載せられた隊長天使は、怒りのままに槍を突き出す。


 神突と呼ばれたミスリル冒険者のデイズよりも遅いその一撃を俺は指先で摘むと、槍の矛先をへし折った。


 「........なっ!!」

 「この程度で俺を殺そうなんざ、1万年速ぇよ。精々、あの世で鍛錬をする事だな」


 俺はそう言うと、右腕を横凪に振り抜く。


 魔力で強化し、異能を使って剣のような鋭さを得た右腕は天使の首を綺麗に切り裂いた。


 吹き出る血飛沫。


 力無く地に落ちる天使。


 彼が蘇ることは無い。あるとするならば、輪廻の中で蘇るか不死の王に情けをこうかだ。


 何が起こったのか理解できず、目の前で起こったことに困惑して動けない天使たち共に向かって俺は大声で叫ぶ。


 「我ら“揺レ動ク者(グングニル)”は、これより天界に向けて宣戦布告する!!」


 ハッキリ言ってこんな事しても意味は無い。だが、体裁というのは重要である。


 何が何だか理解してない天使共に、目の覚める一撃を食らわせてやろう。


 空から舞い落ちる流星という名の天罰を下せば、幾ら鈍い天使たちでも気づくはずだ。


 「やっちまえリンドブルム」

 「待ってたぜ団長!!堕ちろ!!蚊トンボどもが!!」


 この日、神聖なる天界にさらなる天からの罰が下された。

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