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厄災にも色々ある

 不死王と、天使達の戦争についてのミーティングも終わり、大まかにどのような戦い方をするのかが決まった。


 不死王は六番大天使(サリエル)を殺したがっているので、それ以外の大天使は俺達が相手をすることとなる。


 大天使を相手するのは俺の役目であり、割とすぐに終わると思われるので問題なし。


 教師の仕事とをしている間にも修行してきたお陰か、ファフニールからは“たった一人で天使共を殲滅できる”とまで言われた程である。


 ファフニールはこういう時、本当のことしか言わないので俺一人で天使全てを相手しても何とかなるのだろう。


 花音も黒百合さんも己を鍛え上げたので、余程イレギュラーが発生しない限りは俺たちの勝ちは揺るがない。


 「ファフニール、天使達は問題なく殺せるのか?」


 不死王とのミーティングを終えた俺は、拠点に帰って今回のメンバーを招集していた。


 花音や黒百合さんは教師の仕事があるので流石に呼べないが、それ以外の人(魔物)は全員集まっている。


 面子としては、ファフニール、ウロボロス、リンドブルム、フェンリルの四体だ。


 俺な質問を聞いたファフニールは、首を傾げる。


 俺の質問の意図が分かってないのだろう。


 「どういう事だ?我が弱すぎるってことか?」

 「違う違う。ファフニールはなんか“契約”?してるんだろ?それに引っかからないかって話だ。前に戦争をした時に、契約がどうたらこうたらで、戦い方を変えてただろ?」

 「フハハハハ!!なんだその事か!!てっきり、団長殿に“お前天使倒せる実力あんの?ん?”と煽られているのかと思ったぞ!!」


 俺の質問の意図を理解したファフニールは、愉快そうに笑う。


 ファフニールの冗談がちょっと面白かったのか、つられてリンドブルムも笑っていた。


 「アハハハハ!!ファフニールが天使如きに殺られるとか、面白い冗談を言うな!!そんなに老いぼれたんなら、天使に殺される前にアタシが殺してるさ!!」

 「これに関しては小娘に同意だな。ファフニールが天使に殺されるよりも先に、儂らの手で殺してるよ」

 「フハハハハ!!味方にも敵が居るぞ!!これは楽しそうだ!!」


 いや、味方同士で殺し合わないでね?


 冗談で言っているのは分かるが、コイツらならばやりかねない不安がある。


 “おら!!死ねジジィ!!”とか言って、ファフニールに攻撃を仕掛けるリンドブルムの姿がありありと目に浮かんだ。


 うーん、不安だ。


 「で、結局のところどうなんだ?」

 「問題ない。我はこの世界の秩序を汚す事が出来ぬだけだからな。生命を殺すことに関しては、相手が誰であろうが問題ないぞ」

 「まぁ、襲われてんのに相手を殺せないなんて事態が起こったら困るもんな。アタシも契約のことはよく知らんけど、流石にそれは無いだろ」

 「そういう事だ、リンドブルムよ。我とて、抵抗する権利はあるのだよ」


 ファフニールはそう言うと、笑い疲れたのか翼を折り畳んで地面に伏せる。


 唯一の懸念点である“ファフニールが天使を殺せない”と言う問題は解決したな。


 俺もファフニールの契約内容を知らないので、しっかりとこういうところは確認しなくてはならない。


 ファフニールは過去に“契約の事を忘れてた!!”と言って、自然を破壊しないやり方で国を滅ぼしていたしな。


 ファフニールの契約確認は、しっかりとしておくのが大切だ。


 急に“無理”とか言われたら堪らん。


 「さて、唯一の懸念事項も解決した事だし、簡単な作戦を伝えよう。とは言っても、大体が臨機応変にだから、軽く頭に入れておくだけでいいぞ」


 そう言って俺は作戦を伝える。


 作戦は簡単。


 ウロボロスが、天使達を逃がさないように結界を貼り、初手にリンドブルムが軽く隕石を降らせる。


 その後は、俺達が天使たちに向かって突撃。六番大天使だけは不死王に渡し、残りは各々で殲滅すると言うシンプルのものだ。


 作戦を静かに聞き終えた厄災達は、作戦に反対することなく頷く。


 「ガチガチに作戦を立てると、それが失敗した時が困るからな。そのぐらい緩い方がいい。我らの方が圧倒的に強いし」

 「適当でいいんだよ。適当で。ちなみに団長、初手で降らせる隕石は本気でいいのかい?」

 「ダメだ。あくまでも軽く降らせる程度にしてくれ。でないと、リンドブルム一人で天使を滅する事になる」

 「獲物は残しておけという事だ。儂の分もな」


 闘志が漲るウロボロスは、今にも天使達を殺しに行きそうなほどやる気になっている。


 作戦は2週間後なのだが、それまでの間ちゃんと我慢できるかが心配だ。


 「はいはい。分かってるよ。お爺ちゃんの分はしっかり残しておくから、好きにやるといいさ」

 「........珍しく噛みつかいのか」

 「ぶち殺すぞジジィ。アタシだって成長はするんだよ。それに、爺さんと天使との間に何があったのかも知ってるしな」


 少し悲しそうな表情でそう言うリンドブルムは、何かを思い出すかのような仕草をした後その場に寝そべる。


 ウロボロスの過去を知らない俺が首をかしげていると、それに気づいたウロボロスが話しかけてきた。


 「団長殿は知らなかったか」

 「無理に話さなくていいぞ。一つや二つぐらい隠し事があろうとも、今更だしな」

 「フハハハハ........人間にこうして気を使われる日が()()来ようとは、人生何があるか分からんものだ。だが、心配は要らぬよ。過去は過去なのでな」


 ウロボロスはそう言うと、ポツポツと語り始めた。


 「その昔、儂がまだ幼き頃に世話になった人間が居てな。人間の寿命で言えば、かなり年が行っていただろう。シワシワの顔をした奴だった」

 「........」

 「出会いは........まぁ省くとしよう。簡単に言えば、バカをやらかして怪我をしたところを助けて貰ったのだ。それ以降、なんやかんやその人間とは仲良くしていたのだが、ある日天使達が降りてきてな。その人間を殺した」


 急展開すぎる。


 今どきの、な〇うでももう少し補足があるって。


 俺はそうツッコミたかったが、我慢した。


 「理由は分からん。だが、天使の剣が人間の身体を貫いていたのは事実。それ以降、儂は天使を見つけるために色々とやったものだ」


 それ以上語る必要は無いと感じたのか、ウロボロスはここで口を閉じる。


 ちょっと端折りすぎて詳しいことは分からないが、要は気に入っていた人間が天使に殺された復讐をしたいということなのだろう。


 人ならず、魔物にも色々な事情があるんだな。


 俺はそう思うと、昔を追い出して浸るウロボロスに何か声をかけることも無く解散するのだった。


 ウロボロスには沢山天使を殺させてやろう。それがその人間の弔いになるのであれば。

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