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メンバー選び

 天界はラファエル曰く、天にそびえる島であり、そこで天使の生活は完結しているらしい。


 天使は食事を必要とせず、天使は睡眠も必要としない。


 しかし、元が人間という事もあり、割と人間らしい生活をしているのが現状である。


 天使の中にも“戦いに特化した天使”や“物作りに特化した天使”等、色々と種類があるようで、天界に築かれた社会というのは人間とほぼ変わらなかった。


 そんな天界に攻め込む俺達は、メンバーをしっかりと選ばないといけない。


 空を飛べる魔物達は全員連れていくつもりではあるが、中には天使共あまり相性の良くない厄災もいるのだ。


 「竜種は問題ないが、あの吸血鬼夫婦を連れていくのは辞めておいた方がいいな。あ奴らも空を飛べるには飛べるが、正直空中戦はそこまで強くないんだ」

 「そうなのか?わりと戦える気もするけどな」

 「下手な竜種よりは強いが、天使よりは空中戦が弱いという事よ。とくにストリゴイは空を飛ぶと弱くなる」

 「へぇ、そうなんだ」


 俺達は昔、ストリゴイ取スンダルに鍛えられた過去がある為か、吸血鬼夫婦がかなり強いというイメージが焼き付いてしまっている。


 実際、かなり強いのだが、“空中”に限っては天使達に軍配が上がるのだろう。


 ファフニールがそういうのであれば、間違いないはずである。


 となると、吸血鬼夫婦はお留守番か。


 天使達がこの拠点を襲ってきた時に戦える人数が増えるのは、それはそれでアリなので問題ない。


 あの二人もかなり大人だから、今回の戦争のメンバーから外されても特に文句は言わないだろうしな。


 「となると、俺と花音、黒百合さんとラファ、ファフニールにウロボロス、リンドブルムにフェンリルの8名で天界に攻め込むことになるか?」

 「あと、不死王ですね。かれもかなりの戦力を集めているはずですし、彼一人で死者の軍団が出来上がります」

 「質のある数が味方に着くわけか。これはやりやすいな」


 不死王は、死者を操る厄災だ。


 その身に纏う瘴気からも感じられる“死”の圧と、不死者達の行進。


 それなりに数がいる天使達を皆殺しにするには、持ってこいの戦力だろう。


 しかも、ニーズヘッグから聞いた話では、質もかなりしっかりとしているそうだ。


 アンデッドと化した竜や、魔物が生前よりも強化されているとなれば相当な戦力が見込める。


 俺達が用意するのは質だけで、数を不死王に任せよう。


 「ゴルゥ........」


 選出メンバーの話をしていると、マーナガルムが寂しそうに喉を鳴らす。


 マーナガルムは空を飛べないので、今回はお留守番である。


 それが寂しいのだろう。


 尻尾が俺の身体に巻きついているし、表情を見ずともその悲しさが伝わってくる。


 俺は少し可愛いなと思いながらも、マーナガルムの頭を優しく撫でてやった。


 「ごめんな。空を飛べないとなると、流石に連れて行けないんだ。ファフニールの背中に乗るとか方法はあるけど、自力で飛べないと機動力が落ちるからな。その代わり、俺達が帰ってくるまでここを守っていてくれ。拠点には三姉妹や獣人組のように、弱い奴らもいるからお前が守ってやるんだ。頼むぞ」

 「ゴルゥ」


 少し寂しそうにはしつつも、目を細めて返事をするマーナガルム。


 ほんと、昔の気高き狼はどこへ行ったんだ?


 これだと、ただただ可愛い愛玩動物である。


 「フハハハハ!!あのマーナガルムがここまで懐くとは、団長殿も相変わらず魔物垂らしだな!!我も人のことは言えぬが、厄災級魔物がここまで懐くなんて有り得ぬ話しだぞ」

 「そりゃ、そもそも出会う機会が無いし、出会っても生き残れる方が珍しいからな。俺達は運が良かった。出会いがあの島じゃなければ、殺しあってたかもしれん」

 「団長さんと殺し合いですか........それは怖いですね。主に副団長が」

 「え?なんでそこで私が出てくるの?」

 「そういうところですよ」


 多分、俺を殺そうとすると花音がブチギレるからだろうな。


 恐れを知らぬ厄災級魔物達が恐れる花音のブチギレ。過去にその片鱗が何度か出てきてはいるのか、厄災級魔物達は花音を怒らせることを異様に怖かっている。


 実際にキレられたマーナガルムなんかは、かなり花音に萎縮しているし、ファフニールやニーズヘッグもできる限り花音の地雷を踏み抜かないように気をつけていた。


 俺も、花音がキレた所を1度見た事があるが、正直“怖い”よりも“かっこいい”が勝ってた気がするな。


 俺が喧嘩をして怪我をして帰ってきた後に、花音がキレて喧嘩相手をフルボッコにしたのだ。


 小学生の喧嘩とはいえ、性別の違う相手を叩きのめせる花音のその背中はとてもカッコよかったな。


 ちなみに、木刀を持ち出して相手をしばいていたので下手をすれば相手を殺していた可能性があったと気づいたのは、高校に入ってからである。


 やっぱり花音は怒ると怖いわ。


 浮気とかした日には(する気なんてないけど)、浮気相手諸共殺される未来が待っているかもしれない。


 「して、メンバーは決まったが作戦はどうする?何かいい案があるのか?」

 「特にない。から、不死王も提案が無ければ正面から全部なぎ倒すつもりだ」

 「まあ、それが無難でしょうね。私達に細かい作戦なんて遂行できる能力はありませんし」

 「フハハハハ!!作戦を遂行する前に全てを壊すからな!!ちまちまとしたものは出来ん!!」


 でしょうね。


 だから俺も作戦は考えてないんだよ。


 ちょっとその気になれば国を滅ぼせる厄災達に、あーだこーだ言っても無駄だと言うのはわかっている。


 昔、吸血鬼の王国を滅ぼした事もあったが、作戦らしき作戦を立てた覚えはなかった。


 精々、吸血鬼夫婦のお膳立てをした程度である。


 天使共を誰一人として逃がさない為に、逃げ出す天使を殺すという作戦(?)ぐらいだな。


 そんなことを思っていると、花音が近づいてきて耳元で囁く。


 「初手でリンドブルムに特大隕石落としてもらったら全て終わるんじゃない?」

 「天才か?でも、それで終わるとファフニール達が満足しないぞ。適度に暴れさせないとまたなにかやらかす」

 「........うん。すごい想像できる光景だね。確かにそれは不味いかも。最近は落ち着いてきてるけど、偶にはストレス発散さしてあげないとダメか」

 「リンドブルムも少し隕石を降らせたら満足してくれるだろ。厄災の中では割と温厚だしな。ウロボロスが絡まなければ」

 「ウロボロスはアレだね。アスピにしっかりと言い聞かせてもらおうか。あの子の言うことならウロボロスも聞くだろうし」


 ウロボロス、アスピドケロンには物凄く弱いんだよなぁ。


 嫌われたくないのか、アスピドケロンに言われた事は絶対に守っている。


 ウロボロスを動かしたい時は、アスピドケロンに頼ればいいのだ。


 惚れた弱みなのか、過去に後ろめたい何かがあったのか。


 真相は定かでは無いが、これだけは言える。


 ウロボロス、チョロい。

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