表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

609/760

準備期間

 教師の仕事をしながら、エレノラの面倒を見たり世界情勢を監視したりする日々が続く中、俺達は久々に本拠点であるバルサル近郊の森に帰ってきていた。


 なるべく週一で帰ろうとはしているものの、予定が入って帰れない時もある。


 今月は特に酷く、3週間は拠点に帰れなかったのだ。


 「あら、帰ってきたのね」

 「ただいまアンスール。久しぶりだな」

 「ジンが教員になってからは会う機会が減ったものね。少し寂しいわよ?」

 「悪いな。なるべく帰ろうとは思ってるんだが........」

 「ふふっ、いいよの。昔と違って今は暇をすることもないしね。三姉妹や獣人組が色々な物を買ってきてくれるから、楽しいわよ」

 「そう言ってくれると助かるよ。イスが卒業するまで後2年半は我慢してくれ」

 「そうするわ。ジン達の仕事が終わったら、どこか連れて行ってちょうだい」


 聖母のような微笑みを向けるアンスールはそういうと、トテトテとやってきたイスを抱き抱える。


 「おかえりイス。お菓子を作ってあるわよ」

 「食べるの!!」


 アンスールも生まれた頃からイスを知っているので、イスには滅茶苦茶甘い。


 多分、この傭兵団の中で1番イスを甘やかしているのはアンスールである。


 俺達があの島で修行を積んでいた頃に親代わりをしてもらっていただけあって、イスもアンスールには甘えるしいい関係が築けていると言えるだろう。


 偶に甘やかしすぎて困るが。


 俺も花音も命を助けてもらった恩があるのでアンスールには強く言えないし、黒百合さん達はそもそもそこまで関わりがないので踏み込めない。


 厄災級魔物達はイスを可愛がることはするが、教育に関しては放置しているので口は挟まない。


 あれ?アンスールって実は傭兵打の中で1番立場が高いんじゃね?


 「おかえり団長」

 「お、ただいまシルフォード。調子はどうだ?」


 そんなことを思っていると、シルフォード達が姿を現す。


 毎日己を磨いてるだけあって、シルフォード達は3週間前とは見違えるほど強くなっているのがわかる。


 それでも俺達には敵わないが、着実に強くなっていく様はこの傭兵団に相応しいものだと言えるだろう。


 調子を聞かれたシルフォードは、普段通りの表情で答える。


 「普通だよ。特に変わったことは無い」

 「そりゃ良かった。なんやかんや言っても、普通が1番だからな」

 「おかえりー!!団長さん」

 「トリスも元気そうだな」

 「私はいつも元気だよ。あ、マーナガルムとフェルリルが会いたそうにしてたから、行ってあげたら?ケルちゃんがちょっと2人の心配をしてたし」

 「そうするよ。行くぞ花音」

 「はいはーい」


 イスはアンスールに任せ、黒百合さん達もここで別れる。


 黒百合さんはあの吸血鬼夫婦に逢いに行くだろうな。1番仲のいい魔物はあの二人だし。


 帰る前に大量に酒を買い込んでいたので、今晩はずっと酒を飲んでいるだろうな。


 個人的には少しは自重して欲しいとは思うが、もう黒百合さんにそれを願うのは無駄だとわかっている。


 2人で宮殿を出ると、尻尾をブンブンと振ったマーナガルムとフェンリルが待っていた。


 直ぐさま飛びつくのではなく、2匹とも俺達に近寄って頭を体に擦り付ける。


 「ゴルゥ。ゴルッ、ゴルゥ!!」

 「あはは。ただいまマーナガルム。寂しかったか?」

 「フェン、顔を舐めないでよー」

 「ガルゥゥ」


 かつての威厳はどこへやら、完全に犬となった伝説の魔物の頭を優しく撫でる。


 この子達、本当に最初にあった時とは違っているな。昔は気高き狼だったのに、今では3週間会わないと寂しくて機嫌が悪くなるただのワンコロである。


 フェンリルは割と最初から犬だったからともかく、マーナガルム、お前はどうしてこうなった?


 機嫌良さそうに目を細めながら顔をスリスリしてくるマーナガルムは、満足したのか俺を尻尾で包んで背中に載せる。


 どうやら俺を背負って散歩がしたいようだ。


 「ファフニールは居るよな?」

 「気配がするから多分いるねぇ。そろそろ準備を始めるのかな?」

 「そのつもりだ。ラファに言われた2年が近づいてきているし、俺達もかなり強くなれたしな」

 「切り札を使っての戦闘はかなり上手になったよねぇ。私ですら仁の行動にやられたんだし」


 教師の仕事で忙しかったが、そろそろ本格的に天使達との戦争に向けて動き出さなければならない。


 ラファと黒百合さんも準備を進めているらしいし、傭兵団として動き出す時期である。


 機嫌よく散歩するマーナガルムに連れられて、俺達がファフニールがお気に入りの場所としてよく寝ている開けた森に辿り着く。


 竜の身体を丸めながら目を閉じるファフニールは神聖に見えるが、中身を知っていると特に何か思うところは無い。


 むしろ、普段のアホさ加減から残念さまで伺えた。


 人は見た目ではなく中身だと言う話もあるが、これは魔物にも言えることなんだな。


 ファフニールがとても残念な奴に見えるよ俺は。


 「ふむ。おかえりと言うべきかな?」

 「ただいまファフニール。寝てたのに起こして悪いな」

 「フハハハハ!!我は寝ようが寝まいが変わらんのでな。特に気にすることでは無い。それで?そらそろ動くのか?」


 こんな奴だが、ファフニールは馬鹿ではない。


 俺がここに来た理由をしっかりと分かっていた。


 「天界に攻め込むメンバーと不死王との打ち合わせだな。先に計画を立てておいて、その後に不死王と合わせようかと思って」

 「彼奴の瘴気はこの森を穢すからな。この森に呼び込む必要は無い。いい判断だ。して、メンバーは決まっているのか?」

 「空を飛べる奴らは総動員しようかと思ってる。結界を張れるニーズヘッグはお留守番だけどな」

 「それは残念ですね。私も行きたかったですが........」


 どこからともなく聞こえ声。


 振り返れば、いつの間にかニーズヘッグな後ろで飛んでいた。


 つい数秒前まで気配がしなかったと言うのに、どうやってここに来たのやら。相変わらずニーズヘッグは滅茶苦茶である。


 ........いや、ニーズヘッグに限らず厄災級魔物は全員滅茶苦茶か。


 「悪いな。ウロボロスが珍しく駄々を捏ねたんだ。そっちを優先してやってくれ」

 「分かってますよ。少し言ってみただけです。私は、結界をこの拠点付近に張って守っていればいいのですね?」

 「そうだ。基本的にそれが仕事になる。天使たちが来たら、ぶっ殺せ」

 「了解です。来てくれますかねー。天使のクズ共は。来てくれたら噛み殺せるのになー」


 普段温厚なニーズヘッグがこんなことを言うとか、天使は一体何をやらかしたんだよ。


 すごく気になるが、厄災級魔物の過去は本人が話したがらない限りは聞かないの決めている俺はニーズヘッグに質問することは無い。


 でも、気になるな。


 俺は悶々としながらも、しっかりと我慢するのだった。


 偉いぞ俺。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ