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決勝エレノラvsブデ①

 武道大会本線決勝。遂にこの時が訪れた。


 ブデとライジンの試合が30分程続いてしまい、ブデの回復時間も考えて30分程の休憩があった為日は既に落ちてしまい闘技場は魔術の光によって照らされている。


 しかし、その闇を取り払うかの如く湧き上がる観客達の熱気は凄かった。


 最高潮の熱気は、どの試合よりも熱く煩い。


 ブデとエレノアが入って来るまでの間、俺達ものんびりと話をしていた。


 「日が落ちてもやるんだねぇ。戦いが長引いたら深夜になっちゃうよ」

 「昔、何度かそういうことがあって明日に勝負を持ち越しになったことがあったらしいな。トラブルの連発で、上手く試合が進まなかったらしい」

 「へぇ、でも、学園長としては今日の内に全て終わらせて欲しいよね。明日ぐらいはゆっくり休みたいだろうし」

 「あれだけの異能を連発してるんだから、体はとんでもないほど疲れてるだろうな。さっき魔力回復薬をがぶ飲みしてる学園長を見たが、顔が死んでたぞ」


 試合が始まるまでの間、少しお腹が減ったので買い物に行った時にまたまた学園長を見かけたのだが、今日1日中異能を使っていた学園長は今にも死にそうだった。


 俺の異能もかなり魔力を消費するが、学園長の異能も同じくらい魔力を消費しているはずである。


 幾ら魔力に関して優れているエルフ種であろうと、生き物である以上限界があるのは仕方がない事だ。


 学園長、明日生きてるのかな........


 「いやーそれにしても楽しいね!!こうして皆で何かを見て応援するとか、私初めてだし」

 「そうだねー。私の長い事生きてきてるけど、こういうイベントはあまり見ないね。ところで、シュナちゃん?お酒はダメって言ったよね?」


 俺たちの後ろでワイワイと楽しそうに会話をする黒百合さんとラファ。


 僅かに鼻につくアルコールの匂いさえ除けば、黒百合さんの話に感動できたんだけどなぁ。


 後ろを見れば、両手に酒の瓶を持った黒百合さんが若干顔を赤らめながら、酒をラッパ飲みしている姿が写る。


 俺も花音も黒百合さんのアル中具合に軽く頭を抱え、1度真面目に禁酒させた方がいいのでは?と思うのだった。


 「朱那ちゃん、どんどん酒に溺れていくねぇ........」

 「他人に迷惑をかけてないからあまり強く注意できないってのがまたヤラシイな。ラファには迷惑をかけてるだろうが、ラファはそれを楽しんでる節があるし」

 「ラファの朱那ちゃん好きも困ったもんだよ。もう少し強く怒って欲しいね」

 「ラファも甘いからなぁ」


 注意する気すら失せ始めている俺たちは、露天で買ってきた果実水を飲みながら串焼きを食べる。


 ちなみに、補習科の生徒達には全員分買ってきてあげたので、皆決勝戦中にお腹が空くことは無いだろう。


 サラサ先生も同じ考えだったらしく、大量の食品を買ってきていたので寧ろお腹が一杯過ぎて辛いかもしれん。


 「楽しみだね!!早く始まらないかな」

 「サラサ先生はずっとそれしか言ってないね。もう少しで始まるだろうから、待てだよ」

 「分かってるけど、待てないよ!!だって補習科の生徒達がベスト4に入ってるんだよ!!しかも、独占!!ビビット君は残念だったけど、それでもベスト8に入っているんだし!!」

 「明日から、補習科を見る目が変わるだろうな。成績を落としてでも補習科に来たい!!って生徒が増えるかもしれん」

 「もしかしたら、サラサ先生を応用科とかに移動させるかもねぇ。まぁ、あの学園長ならしないだろうけど」

 「それは絶対に嫌だね。ストライキを起こしてでも私は補習科の子たちの面倒を見るよ。動けなくなるまでね」


 サラサ先生かっけぇ。


 ドヤ顔で決めゼリフを吐くのではなく、それが当然と言わんばかりの態度で言うセリフ。


 よっぽど、この補習科に思い入れがあるんだろうな。


 子供達に調べさせた感じ、サラサ先生は補習科でありながら最後の大会で本戦にまで出場した猛者だということは分かっている。


 今のエレノアやブデ達には遠く及ばないが、ベスト8には入っていたそうだ。


 当時を知らないからなんとも言えないが、恐らくかなり盛り上がっただろうな。圧倒的な実力で全てねじ伏せてきた、今の補習科ですらここまで盛り上がるのだから。


 「ジン先生、来年もこうなるといいね」

 「安心しろ。サラサ先生がいる限り、毎年補習科は本戦の常連になるさ。そのノートに書かれた教え方を実行出来ればな」


 サラサ先生は、俺達の教え方を全てノートに記録して保管してある。


 大抵の生徒は、そのノートを見れば強くなれるだろう。


 基礎を極めるだけでも、この学園の頂点に立つだけの力が手に入るのだから。


 ちなみに、サラサ先生も強くなっている。


 “生徒に教えるなら、自分がやってみて知らないと!!”と言う、クソ真面目な考えをしているサラサ先生は毎日魔力のトレーニングやら体力トレーニングを積んでいる。


 元々強いというのもあって、かなりの実力者となった事だろう。本当に真面目な人だ。


 「その内、サラサ先生がこの国最強になりそう 」

 「俺達を除いての話になるけどな」

 「それはそうだけどね。厄災級に敵う程の力を手に入れようと思ったら、異能とかの運も居るし」


 逆に言えば、厄災級魔物以外にはほぼ勝てるだろうがな。


 最上級魔物程度ならば、あと一年もあればサラサ先生は勝てるようになるだろう。


 補習科4年生の生徒たちも、このまま実力をつけ続ければ行けるはずだ。


 既に倒せるであろうエレノラは知らん。


 エレノラの戦い方は特殊過ぎて全く参考にならんし、爆弾の開発さえ出来れば厄災級魔物相手でも勝ててしまうだろう。


 やっぱり爆弾って可笑しいよ。核爆弾とか冗談抜きでその内作りそうで怖い。


 あの子、暫く俺に教えを乞うらしが、一体どこまで強くなる気なのだろうか。


 肉体さえ何とか出来れば、俺を超える可能性だって有り得る人材である。


 「花音はどっちが勝つと思う?」

 「んー、ブデには申し訳ないけどエレノラかな。エレノラが強すぎるんだよね。仁は?」

 「俺もだな。ブデも強いんだが........エレノラの強さと比べるとな。爆弾の種類の数だけ攻撃手段があって対応策がある。そして、本人も普通に肉弾戦が得意でその中に織り交ぜられる爆弾は死ぬ程厄介だ。多分、獣人組の何人かには勝てるぞ」

 「だ........エルフ組は?」


 今、“ダークエルフ組”って言おうとしたね。ダメだよ?この世界ではダークエルフは魔物扱いなんだから。


 「エルフ組には勝てないだろうな。シルフォードにはそもそも有効打がないし、ほか二人とも潜ってきた修羅場が違いすぎる。何より、鍛えてきた年数が違うからな。1年ぽっきりで獣人組に追いついている時点でヤベーんだけど」

 「それはそうだねぇ」


 俺は改めてエレノラのおかしさに首を傾げつつも、そろそろ始まるであろう決勝戦を待つのだった。

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